鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

柳に燕図小柄・鐔 加賀

2010-06-09 | 
柳に燕図小柄・鐔 加賀



柳に燕図小柄 無銘加賀


柳に燕図鐔 無銘加賀

 燕もこの季節に訪れる鳥である。何のことはない水辺の風景だが、極めて日本的な風情である。構成は琳派の影響を強く受けていると思われる。加賀金工の平象嵌による表現は、風景にせよ風物にせよ、細かく刻んだ金属を象嵌処理するため、絵画的な描法を採る上で自ずと表現に制約が生ずる。それ故に文様的な表現をとらざるを得ないのであろうが、加賀象嵌の特色が強く示されることとなったようだ。
 小柄は柳と群れる燕を色の微妙に異なる金のみで平象嵌し、これに繊細な毛彫を加えている。下地は赤銅石目地。まさに風景の文様表現である。平素は見えない裏板を金と赤銅の色違いに削継し、華やかな構成を強めている。これも加賀に間々みられる手法。
 鐔は、蛇籠が設置された川辺、柳と裏の松樹が片切彫で、燕、蛇籠、川面、三日月、下草はいずれも平象嵌。樹木の片切彫は線描に強弱がつけられており、加賀の作風としては異なる風合いを採り入れている。下地は素銅石目地。