鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

富嶽図小柄 平田 Hirata Kozuka

2010-06-28 | 小柄
富嶽図小柄二題 平田


① 富嶽図小柄 無銘平田


②  富嶽図小柄 無銘平田

 桃山時代に、失われていた古典的七宝技術を再現した飾り職人が平田道仁(ひらたどうにん)。この技術が尊ばれて徳川家康に見出され、駿府に移住、おそらくこの頃以降であろう、盛んに富嶽図小柄を製作している。これにより、富嶽図は平田家の御家芸のように、平田道仁を代表する図となっており、平田後代もそれを踏襲して同趣の小柄を製作している。だが、七宝の開発は進み、時代が降るほどに素材は透明感のあるガラス質のものが多くなる。
 ①は代の上がる平田家の作。赤銅石目地に量感のある富嶽図を、青から白へとグラデーションを付けて象嵌している。その所々に金線で縁取りした茶、緑、黄で雲を表わしている。中景に当たる遠見の木々は量感のある金銀象嵌。
 ②は時代の下がる平田家の作。富嶽の量感は抑えているが、裾野の色調は華やか。透明な緑、青、灰緑と金線を境に色を違え、雲は茶、透明な黄、紫とこれも多彩。駿河の海原は赤銅地に毛彫で波を描き、帆掛け舟も七宝象嵌で描いている。