群蝶図鐔 加賀



群蝶図鐔 無銘加賀
渦巻くように群れる蝶をご覧になったことはあるだろうか。筆者はこの鐔ほどの密度ではないが、長野は木曽の山中で水溜りに集まっている蝶の群れに遭遇し、三十匹以上はいたであろうかこの一せいに飛び立つ場面を目撃したことがある。その程度でも、まさにキラキラという感じで蝶が舞う中に立ち、眩暈に似た感覚を味わった。
この鐔の蝶は、もちろん写実ではない。文様表現されたもので、強弱変化のある繊細な線描と金銀朧銀素銅など様々な色金の組み合わせになる平面構成。それは蝶だけではない、草いきれを感じさせる秋草もまた文様表現であり、金工における琳派の美観の一例と言える作。しかも、加賀の平象嵌の手では最高傑作と言い得る一点である。
このブログの秋草シリーズで同趣の鐔を以前に紹介したことがあるのだが、記憶されているであろうか。それとは、ほぼ同じ構成と仕上がりになる。即ち、同趣の作例が他にもあるわけで、筆者は、幸運にも両方の作品を手にして鑑賞する機会を得たというわけだ。
一般的に平象嵌の作品は、平面だけでは画面が平坦になる。そこで、毛彫や片切彫を加えることによって画面に変化を与えている。ここでは金の線描に負けないほどに繊細で、しかも動きのある線が加えられている。色も金の中に朧銀や銀や赤銅を入れたり、羽の筋を片切彫で表わすことにより、光の加減でそれが際立って見えるように、巧みな描法を採っている。



群蝶図鐔 無銘加賀
渦巻くように群れる蝶をご覧になったことはあるだろうか。筆者はこの鐔ほどの密度ではないが、長野は木曽の山中で水溜りに集まっている蝶の群れに遭遇し、三十匹以上はいたであろうかこの一せいに飛び立つ場面を目撃したことがある。その程度でも、まさにキラキラという感じで蝶が舞う中に立ち、眩暈に似た感覚を味わった。
この鐔の蝶は、もちろん写実ではない。文様表現されたもので、強弱変化のある繊細な線描と金銀朧銀素銅など様々な色金の組み合わせになる平面構成。それは蝶だけではない、草いきれを感じさせる秋草もまた文様表現であり、金工における琳派の美観の一例と言える作。しかも、加賀の平象嵌の手では最高傑作と言い得る一点である。
このブログの秋草シリーズで同趣の鐔を以前に紹介したことがあるのだが、記憶されているであろうか。それとは、ほぼ同じ構成と仕上がりになる。即ち、同趣の作例が他にもあるわけで、筆者は、幸運にも両方の作品を手にして鑑賞する機会を得たというわけだ。
一般的に平象嵌の作品は、平面だけでは画面が平坦になる。そこで、毛彫や片切彫を加えることによって画面に変化を与えている。ここでは金の線描に負けないほどに繊細で、しかも動きのある線が加えられている。色も金の中に朧銀や銀や赤銅を入れたり、羽の筋を片切彫で表わすことにより、光の加減でそれが際立って見えるように、巧みな描法を採っている。