鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

八橋図鐔 明光 Akimitsu Tsuba

2013-07-29 | 
八橋図鐔 明光


八橋図鐔 銘 一心斎橘明光

 赤銅魚子地高彫金銀素銅色絵の手法で、杜若の精である人物を前にした歌人を描き、謡曲に仕立てられた一場面を写実風に表現している。扇を用いて杜若を指し示しているのが花の精、盃を手にしているのが歌人。京人が東国へ赴くことは、まさに外国への旅。外国とは鬼の住むところであり、どのような危険が待ち受けているやら、まったく不案内。だが、噂で伝わりくる東国の風景には、心惹かれるものがあり、歌人としては危険を冒しても自らの眼で確認したかったのであろう。東下りの路程の一つであれば、この歌人は、東京にも地名が遺されている在原業平(業平橋など)と考えてよさそうである。