梅に月図小柄 河野春明
梅に月図小柄 河野春明
江戸好みの洒落た風景図を得意としたのが河野春明。過去にも幾つかの作品を紹介している。それらの多くが同時代の風習や風俗を潜ませており、時代を切り取った作家という点でも興味深い存在である。この小柄は、頗る簡潔に、闇が迫りつつある頃の梅を、まさに時間帯を暗示するかのように月を描いて作品化している。背景は赤銅魚子地。高彫金銀色絵で梅を彫り描き、三日月は金の平象嵌。月は三日月のころだが丸く描かれている。日蔭になっている部分は満ち欠けと呼ばれるように暗く見えないのが普通だが、三日月の頃には、地球からの照り返しが影響して陰の部分もうっすらと見えることがある。そんな時候を表現しているのだ。陰は朧銀地の平象嵌で、背景に溶け込ませるように魚子地を施している。裏まで絵を連続させているが、裏は明るい朧銀地に金の月、色の暗い朧銀地で陰部分を表わしている。
梅に月図小柄 河野春明
江戸好みの洒落た風景図を得意としたのが河野春明。過去にも幾つかの作品を紹介している。それらの多くが同時代の風習や風俗を潜ませており、時代を切り取った作家という点でも興味深い存在である。この小柄は、頗る簡潔に、闇が迫りつつある頃の梅を、まさに時間帯を暗示するかのように月を描いて作品化している。背景は赤銅魚子地。高彫金銀色絵で梅を彫り描き、三日月は金の平象嵌。月は三日月のころだが丸く描かれている。日蔭になっている部分は満ち欠けと呼ばれるように暗く見えないのが普通だが、三日月の頃には、地球からの照り返しが影響して陰の部分もうっすらと見えることがある。そんな時候を表現しているのだ。陰は朧銀地の平象嵌で、背景に溶け込ませるように魚子地を施している。裏まで絵を連続させているが、裏は明るい朧銀地に金の月、色の暗い朧銀地で陰部分を表わしている。