鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

帰雁図鐔 一柳斎正光 Masamitsu Tsuba

2018-09-15 | 鍔の歴史
帰雁図鐔 一柳斎正光


帰雁図鐔 一柳斎正光

 江戸時代末期の会津正阿弥派の鐔工。金家も添景として採り入れたり、そのまま主題とした鐔もあるほどに、この雁の舞い降りる様子は我が国の人々に好まれた。鉄の肌合いは、この時代には、緻密で綺麗に過ぎるほどに詰んだ鉄肌は容易に作り出せたはずだが、微細な石目地状に仕上げ、さらに微妙な鋤き込みによって雲の様子を表現している。雁の連なる様子、鳴きかわす微妙な表情まで精巧。江戸時代には、鉄地も赤銅地も同じように視覚的鑑賞の対象。素手で触れてその微妙な肌合いを愉しむ意味合いは薄れていると考えてよいだろう。