鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

桜に鈴図小柄 Kozuka

2014-03-12 | 小柄
桜に鈴図小柄


桜に鈴図小柄


 何度か紹介しているが、何度見ても面白い構成である。このように、桜に鈴を飾る意味はどこにあるのであろうか、ずっと考えているが、答えが出ない。どなたかご存知の方がおられたら教えてほしい。赤銅魚子地高彫金銀色絵。

木蓮図小柄 侶久 Tomohisa Kozuka

2014-03-11 | 小柄
木蓮図小柄 侶久


木蓮図小柄 銘侶久(花押)

木蓮
 侶久は江戸時代後期の加賀金工の一人。巧みな画面構成で束ねられた木蓮の小枝を表現している。普通は画面に収めてしまうことが多い枝付きの植物図で、横長の画面を活かしているのだが、天と地を敢えて切り去り、大きく描くと同時に画面から外れた空間への意識の広がりを求めている。なんとなくほんわかとした、暖か味が感じられるのも面白い。彫刻と色絵が丁寧で、もちろん細部まで描写は正確。

春蘭図鐔 荒井成利 Naritoshi Tsuba

2014-03-10 | 
春蘭図鐔 荒井成利


春蘭図鐔 銘荒井成利(花押)

春蘭
 この鐔のように、枝葉を描かずに花のみを構成した作もままみられる。春蘭などは蝶のようにも見えることから、その繊細さが好まれたのであろう。葉をなくすことによって、美観が際立つ例でもある。赤銅魚子地高彫金色絵。

春蘭図目貫 久則 Hisanori Menuki

2014-03-08 | 目貫
春蘭図目貫 久則



春蘭図目貫 銘久則(花押)

春蘭
 鳥など小動物を題材にした作品が多く遺されている久則の目貫。久則は丸彫りと呼ばれるような、裏側の一部をも高彫表現するを特徴としている。目貫の裏は、柄に巻き込まれてしまうと高彫表現しても見えないことから、製作しても意味がないのである。ところが、鶏や雉子の頭部の裏側までリアルに彫刻しているのである。総体の彫刻と色絵象嵌も手が込んでおり、華やかさにおいては屈指の金工である。その手法が、この目貫でもみられる。蕾の一部が裏面でも表現されているのである。

春蘭図鐔 政富

2014-03-07 | 
春蘭図鐔 政富


春蘭図鐔 銘長州住政富作

春蘭
 春を代表する花の一つ。理由は不明だが装剣小道具には比較的多く見られる。早春の山を歩くと、可憐なこの花を見つけることがあるのだが、画題ほどにはあまり目立たないのが現実。憧れが強く影響しているのであろう。文様として捉えると美しい。この鐔は鉄地を肉彫として春蘭の様子を写実描写したもの。長州鐔工らしい、特徴が良く捉えられた精巧な作となっている。

若松に鶯図小柄 廉乗 Renjo Kozuka

2014-03-06 | 小柄
若松に鶯図小柄 廉乗



若松に鶯図小柄 紋廉乗光晃(花押)

若松に土筆と蕨
 漠然と春。だが、鶯が添え描かれており主題は正月の若松であろうか。子供の頃、田舎の神社に初もうでをすると、「初音」と言って竹細工の笛をもらった。それで鶯の鳴きまねをするもので、さほど上手くもないのだが、至るところで鶯の笛音が聞こえたものだ。そんな頃の風物に違いないのだが、正月と言えば新春、即ちもう待ち遠しい春はそこまで来ているのである。土筆などは、東京近郊でも日当りの良い環境では二月の末にはみられると思う。蕨が萌え出るのはまだ先のことだろう。後藤家らしい赤銅魚子地高彫色絵表現。

ひな祭り図鐔 吉岡因幡介 Inabanosuke 

2014-03-05 | 
 ふと気づいたらもう三月。今年は殊に雪が多く、いつもに比べて春の到来が待ち遠しい。一足はやく、春を感じさせる植物をいくつか・・・。



ひな祭り図鐔 銘吉岡因幡介



 暦が異なることから、この時期に桃の花はないが、ひな祭りというと桃の花。以前にも紹介したが、春と言えば桃の花。古くは生命の源とも捉えられ、この実は邪気を祓うと考えられていた。イザナギが小鬼に追われ黄泉国から逃れようとした際、桃を投げつけて鬼の足を留めようとしている。雛人形を川に流すのも、穢れを人形に託して禊する意味がある。長い冬が去って春、緑の増す中で桃が一せいに開花する様は、まさに生命のありようを感じさせよう。

蓑亀図鐔 松寿軒矩随 Noriyuki Tsuba

2014-03-03 | 
蓑亀図鐔 松寿軒矩随


蓑亀図鐔 銘松寿軒矩随(花押)

 空間を活かした静かな空気感の漂う作品。赤銅魚子地高彫据紋金色絵。水の流れなどは琳派の影響を受けて頗る絵画的描法。


蓑亀図小柄 銘佐野直好

 これも簡潔な作。矩随に比して古典的な描法。顔つきなどは、先に紹介した京金工の作に似て恐ろしげでもある。

群亀図縁頭 藪常代 Tsuneyo Fuchigashira

2014-03-01 | 縁頭
群亀図縁頭 藪常代


群亀図縁頭 銘松風軒藪常代(花押)

 これも水辺に生きる亀を描いたもの。大小揃い。朧銀地高彫に色絵。さらに自然味があり、池を覗き見たような、上からの視線のありようも良く分る。古典的な蓑亀といった作意はないようだが、鄙びた景色として捉えた作者の意識が伝わりくる。

群亀図縁頭 春明法眼 Haruaki Fuchigashira

2014-03-01 | 縁頭
群亀図縁頭 春明法眼


群亀図縁頭 銘春明法眼(花押)

 金無垢地高彫に様々な色金を用いて肉高く表現した蓑亀。長命を願い、あるいは得られた長寿に対して感謝の気持ちを表現したもの。金無垢地高彫に色金は置金の手法であり、贅沢感に極まっている。細部まで正確に彫り表わされた亀は、活きいきとして、という表現など陳腐に思えるほどに精巧。