鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

福禄寿図鐔 寿秀 toshihide tsuba

2019-12-12 | 鍔の歴史
福禄寿図鐔 寿秀


福禄寿図鐔 寿秀

 福禄寿は、その音や文字に擬え、蝙蝠、鹿、霊芝などを添えて描くことがある。ここでは鹿が寄り添う図とされている。先に紹介した鐔と同様、月を背景にしているのは、天を巡る存在として意識されていたからであろう。福禄寿と寿老人は、混同されている、あるいは同一神との見方もあるが、良くわからない。日本において道教は育たなかったともいわれるが、かなり古くから都の設定場所や建築などで道教の思想を採り入れている。神仙の意識も、自然神の恵みとして普通に意識に入り込んでいる。

福禄寿図鐔 宝珠斎政景 masakage tsuba

2019-12-11 | 鍔の歴史
福禄寿図鐔 宝珠斎政景


福禄寿図鐔 宝珠斎政景

七福神の一人に数えられている福禄寿は、人間の寿命を管理しているといわれている。南極星(全天の中心)の象徴ともいわれる。七福神信仰の背景には、古くに伝わり来た神仙、道教の思想がある。神仙の思想は、天然の産物を体内に取り込むことによって長寿、健康を得るという現実世界での利益を求めたもの。薬種の開発につながっている。七福神信仰も、死後の観念世界の幸福を求めるのではなく、現世利益と言われるように今生きている我々が幸福でありたいと願ったもの。
鐔の福禄寿は、月を背景に描かれることが多い。この鐔では月を透かして、陰影として寿老人を浮かび上がらせている。政景は東龍斎清壽の門人。

布袋図目貫 國親 kunichika menuki

2019-12-10 | 鍔の歴史
布袋図目貫 國親


布袋図目貫 國親

布袋が手にしている軍配扇には星が描かれている。星座信仰に関わりがあるのだろうか。数ある星座の中でも北斗七星は、良く題に採られる。北斗信仰といえば、妙見信仰。同様に天を周回する中心の南極星と言えば、七福神のひとりでもある福禄寿が思い浮かぶ。國親は水戸金工で安親門の流れの江戸時代末期の金工。先の桃山頃の目貫と比較してみると、図柄は同じでも、細かなところに江戸時代の現世利益の意識がより強く窺いとれて面白い。

布袋図目貫 後藤 Goto Menuki

2019-12-09 | 鍔の歴史
布袋図目貫 後藤


布袋図目貫 後藤

 金無垢地を打ち出し強く立体的に彫り描いた目貫。桃山頃の後藤家の貫禄ある出来。だが、布袋和尚は優しげな表情を崩すことがない。
下の目貫は別工だが、袋を掛け物とし眠る布袋の顔つきは、子供のようだ。


布袋図鐔 埋忠 umetada tsuba

2019-12-06 | 鍔の歴史
布袋図鐔 埋忠


布袋図鐔 埋忠

袋のみを描いて、布袋留守模様。洒落た構成だ。宝袋風にしており、いかようにも感じ取れる工夫をしている。もちろん布袋の携えていた大きな袋は、布袋の生活に必要なものだが、同時にそれは宝ものでもあった。子供が大事にしている、大人からすれば不要なものが入れられたおもちゃ箱のように。さらに、福徳をもたらす袋という考えでは七福神の思想になる。布袋和尚をそんな風に考えればまた視野が広がって楽しい。

布袋図鐔 長陽正高 Masataka Tsuba

2019-12-05 | 鍔の歴史
布袋図鐔 長陽正高


布袋図鐔 長陽正高

 長陽、即ち長門国、長州鐔工。自らが持つ大きな袋に入って顔をだしている布袋和尚。素敵な、遊び心のある図柄でもあり、楽しい。


布袋図鐔 川治友周

 布袋の袋を鐔の造形としている。長州鐔工にはどういう理由か、布袋図を遺している。布袋和尚は、七福神信仰においては弥勒菩薩が姿を現したものと言われている。即ち、人々を見守り、仏への道へと導く存在。もちろん現世利益の上では幸福をもたらす存在。七福神の中で最も多く描かれているのが布袋和尚である。


友信


布袋唐子図鐔 古川常珍 tsunetaka tsuba

2019-12-04 | 鍔の歴史
布袋唐子図鐔 古川常珍


布袋唐子図鐔 古川常珍

 朧銀地に強弱変化のある片切彫を駆使して彫り描いた、布袋の表情。子供たちを見つめる様子が、やはり穏やかな視線で映し出されている。群れて遊ぶ子供たちが主題のようにも見える。布袋和尚はただそれを見守るだけ。でも存在感があるのが要。

布袋和尚図目貫 Menuki

2019-12-03 | 鍔の歴史
布袋和尚図目貫


布袋和尚図目貫 

 後藤の作であろうか、先に紹介した程乗の小柄と同じ構図の表目貫に、杖を頼りに大きな袋を担いで歩く姿を裏に描いている。穏やかな顔つき。世の中をそっと見守っているかのような、穏やかな表情。多くの人に好まれた理由も想像できよう。

布袋和尚図小柄 後藤程乗

2019-12-02 | 鍔の歴史
布袋和尚図小柄 後藤程乗


布袋和尚図小柄 後藤程乗

 大きな袋を枕にして天を仰いでいる布袋。天上には月があるのだろう。時に月を指さしている図とされることもあり、拾得指月図と同じ意味で、禅画の好題とされている。布袋和尚は、今でいうと乞食坊主。大きな袋に生きるための物を入れて定まった家を持たず放浪していたようだ。何ものからも解き放たれた自由とは、そのような生き方なんだろう。憧れでもあるが、今の生活に慣れてしまった我々では苦しい。でも、布袋和尚図は好まれて殊の外多いのである。この小柄は、程乗の繊細な彫技が示された、後藤家らしい貫禄のある作であると同時に、裏板に金の削継などを施すなどして、加賀に仕えた金工らしい華やかさを求めた出来となっている。