酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

語りたくて語れなかったあのお酒

2008-11-03 11:53:45 | スコッチウィスキーの話
スコッチウィスキーの定義。
いろいろなお酒を話しておりますたび、少しづつ話しては参りました。改定に改定を重ねまして、現在使われておりますのは1990年に制定されました
「The Scotch Whisky Order 1990」→「スコッチウイスキー政定第3条」に定義されるものです。(最近の事なのでした)
ここには、こうあります。
①蒸留所がスコットランド地方に存在する事。
②大麦麦芽と水を原料とする事。ただし、全粒麦芽だったら他の雑穀を加えても良い。
③その蒸留所でのみ麦芽をマッシュされ、細胞基質は同化作用の産物である酵素系に限られ、酵母はイースト菌のみである事。
④蒸留直後のアルコール度数は94.8%未満であり(第4条では)その下限を40%以上とする事。
⑤スコットランド内の消費税保管庫(意味がよく解らないのですが)で3年以上熟成させている事。
⑥樽は700L以下のオーク樽を使用している事。
⑦原料の香・色・風味を保っている事。
⑧添加としては、水または色付けの為のカラメルのみである事。

上記の条件を満たした蒸留酒のみを「スコッチ」と語っていいとされております。

これは、意外に厳しいのですが、⑧の項目をご覧下さい。「添加物にカラメル」とあります。これが厄介事となるわけです。

先に申し上げておきます。「モルトの中のロールスロイス」と呼ばれております「ザ・マッカラン」でございますが、このお酒のおいしそうな色に疑問を持つわけでございます。酔漢の推察・主観の中ではございますが。
では、少しばかり「マッカラン」を語りたいと思います。

マッカランは同一蒸留所で同じ銘柄のまま熟成年数が違うものをボトルに詰めております。10年・12年・15年・18年・25年・30年・50年となります。値段もそれぞれ年数に比例して高くなります。よく「酔漢さんウィスキーって年数が経つと値段が高くなりますが、どうして?」と聞かれます。「そりゃ、量が少なくなるからだっちゃ」と決まって答えるのですが。例の「天使の分け前」が年数が経つにつれて増える訳でして、それだけモルトの量が減るわけです。=希少価値が高くなるわけです。マッカランの50年なんて樽の底に半分以下になっているんじゃないかなと想像するわけです。
蒸留所はクライゲラヒの対岸にございます。スペイ川を挟みまして、「矢切の渡し」と同様渡し船がありました関係上、人々の往来が激しい場所でもありました。
創業は1924年からと正式にはなっておりますが、農家の副業で酒作りが行われていたことから、それ以前から存在していたとの記録がございます。
1892年にエルギンの酒商「ロディック・ケンプ」さんがマッカランを買収し、それ以来ケンプ家がマッカランの酒作りを任されているのでした。面白いのは前オーナー「アラン・シュイアック」さん。この人ハリウッドに拠点を置きました脚本家でもございました。この人ですが・・・。
お酒作りよりは本業の力を生かしまして「広告のセンス」は持っていたのでした。
キャッチコピーはもちろんデザインまで、この人の力でもって「マッカラン」は、大きく販売数を伸ばすのでした。

酔漢、「マッカラン」は、先にお話いたしました「元伊藤ハム」の当時役員さんから紹介されて呑んだの最初でしたが、名前は先々から知っておりました。ブレンディッドの「バランタイン」そしてシングルモルトの「マッカラン」は憧れのお酒でしたので、呑む以前から緊張しておりました。そして呑んだ感想です。
呑みましたのは「ザ・マッカラン15年43度」です。
「どうですか、酔漢さん。ベーコンにあうでしょ」
「この甘さが嫌味でねぇっちゃ。逆にカリカリベーコンの塩辛さを旨くけしてけっさ。この酒」
そうなんです、上品なほのかな甘みがこのお酒の特徴です。本当に甘みが鼻から入ってくる感じですが、それが、他の風味と合間って、複雑な風味を醸し出しているのでした。シングルモルトなのですが、奇妙に複雑なブレンディッドを呑んでいるような錯覚さえ覚えます。
熟成樽がこの酒の特徴なのでした(そしてこの事実が、酔漢が疑問に思うこととなったのですが)熟成樽にシェリー酒樽を使用することは、以前お話しましたが、マッカラン蒸留所が最初だったのです。
もう少し、詳しくお話しましょう。
マッカランのシェリー酒樽はもともと材料を乾燥されたオロロソ樽。1976年にスペインに進出してスペイン製オーク樽を自らが製造しシェリー酒醸造会社に無償で貸し出します。3年熟成させた樽をスコットランドへ運ばせてそれを使用。
この樽のこだわりはマッカラン蒸留所の伝統でもある訳です。
「本当に呑みやすくて、香のいいウィスキーだすぺ。この酒、すきなのすか」
「いやぁ、私に取りましても、特別な酒です。ウィスキーは好きなのですが、いつもは、こいつを一人で飲んでます」
と指を指しましたのは「ニッカ竹鶴」でした。

さて一昨年の話です。「ザ・マッカラン12年」を呑む機会がありました。
「久しぶりのマッカランだっちゃ。うめぇ酒だっちゃ」
といつもの通りニートで頂くことになりました。
最初に鼻につけます。
「香が飛んでこねぇっちゃ」
そして口に含みます。
甘さは相変らずなのですが、甘さばかりが際立ってあの複雑な風味が消えていることの気づくのでした。
「こんなはずねぇっちゃ」ともう一杯。
そこでふと、ショットグラスに注いだ「マッカランの色」の違いが解るのでした。
「こんなに濃い色してたっけかや?」
そうなんです、もともと濃い琥珀色だったマッカランですが、これほど濃い色だった印象はなかったのです。
「まるで30年ものスコッチのような色してっちゃ」です。
シェリー3年熟成オロロソ樽だけで、こんな色は付かないと思うわけです。
「カラメルを入れている」と言う噂を耳にした事はございますが、こんなに色の違いが出るものかとも思いました。
ハッキリしてはございませんし、「マッカラン」は否定しております。
万一入っていたとしても、「スコッチ政定」にハッキリ「カラメル使用」は認められております故、「ザ・マッカラン」は「ザ・マッカラン」なのです。
「カラメルは風味になんら関わりはございません」
確かに、そうなのですが。
このお話を耳にしましたとき、ある温泉地が、その温泉の色の評判を落としたくないために「入浴剤を入れていた」事を連想するのでした。
シェリー樽にこだわったオフィシャルに対しまして、ボトラーズ物では「バーボン樽熟成」があります。一度試した事がありますが、「麦の香り」がバーボンの方がでているのではとも思いました。

「私に取って特別な酒なんですよ」
これは本当の話です。そして酔漢に取りましても「マッカラン」は特別な酒であってもらいたいのです。
人気が出まして、またスペイサイドで最も小さなポットスティルを15基使用している、さして大きくない蒸留所です。
初めて飲んだ人が劇的に感動するような以前の「マッカラン」に戻ってもらいたいと思うのでした。

ですが「マッカラン」は「マッカラン」なのです。

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8 コメント

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ん~! (ぐずら)
2008-11-03 23:52:50
奥が深いぃ~!
マッカランは近頃コマーシャルでもよく
耳にしますし、以前から存じてはおりましたが、飲んだことはありませんでした・・・
んでも、その酒の味ばかりか、色の濃淡で製造過程を推察するなんて
いやぁ~、そんなこと、思いもしませんでしたよぉ~!
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昔のままに (クロンシュタット)
2008-11-04 06:12:40
久しぶりに会った初恋の人が、変に着飾って香水プンプン・・・ちょっと違いますかねー。

鉄道ファンも「昔のまま」の姿にあこがれる部分が多い人種です。
蒸気機関車の復活運転も、機関車の車体がやたらときれいだったり、客車が現代的(そのほうが一般客には良いのですが)だったりすると、愕然とします。

いろいろありますからね。

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定義 (ひー)
2008-11-04 08:08:57
スコッチの定義は為になりました。
マッカラン=興味津々ですね。
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比例してって・・・ (丹治)
2008-11-04 16:05:21
酔漢さんへ

年末を控えての御仕事、御疲れ様です。久々のブログ更新、嬉しく拝見しました。

ところで酔漢さん、高くなるって・・・等差級数的に高くなるんでしょうか。それとも等比級数的に高くなるんでしょうか(マルサスの人口論みたい)。

ほんのり甘い香りのするシングルモルトですか。アイラモルトが一方の極なら、マッカランはさしずめもう一方の極ですね。

飲んだみたくなりました。そのためには、そろそろ生ハムとベーコンを漬込まねばなりません。漬込んで、煙にかけて、熟成させて・・・食べられるようになる頃には、ボトルを一本買えるお金は貯まるでしょうか(そのためには普段の酒代も削らなくちゃいけませんね)。壱番安いヤツでいいんだけど・・・

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主観なのですが (酔漢です )
2008-11-06 09:50:36
ぐずら様へ
返信おくれました。ひー様バリに仕事しております!
そうなんです。どうも色が濃すぎる感が最近します。最初の印象・感動が強すぎたせいかもしれません。
でも、こんな事ってあるんですよね。
「ザ・マッカラン」は「ザ・マッカラン」
こう思っております。
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昔の印象 (酔漢です )
2008-11-06 09:52:44
クロンシュタット様へ
そうですよね。昔好きだった女の子が迫力あるご婦人になられている・・・・
こんな感じでしょうか。
いやはや、でも本質は変わらなかったり。
ですが、本質が変わってしまったと感じるとき、これを受け入れるのに時間がかかったりいたします。
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マッカランより (酔漢です )
2008-11-06 09:54:31
ひー様へ
そのマッカランやグラガンモアよりスペイサイドの魂を感じたお酒に出合えました。
灯台元暗しでしょうか。
つい先々週のことなのです。
まだまだ修行が足りません。
次回、語ります。
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あの生ハムの味! (酔漢です )
2008-11-06 09:58:18
丹治様へ
一言 絶品!
今度も是非。お手製のベーコンでもって「カリカリベーコン」もよろしかろうと存じますが。
「マッカラン」しばしお待ち!
ひー様へのコメントでも語りましたが、「ラフロイグ」が「アイラの魂」なら「・・・・・」は「スペイサイドの魂」そんなお酒を語ります
これは是非呑んで下さい。
酔漢自身が感動しました。
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