酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

招かれざる客って誰 あ・え・い・う・・・・・

2011-10-28 09:18:58 | 大学演劇部の頃の話
大学時代、NHKのニュースを見ておりました。
土曜日朝。NHK仙台からのニュース。
ニュース原稿を読んでおりましたのが、おおばさん。
「相変わらず、原稿読むのはうめぇなや」と、酔漢は感心しきり。
彼女は、高校三年時の同級生。放送部に所属しておりました。
「発音」「抑揚」アクセント」
これは、朗読を行う時の大事な要素になります。
彼女の発声練習は、放課後の校庭に響いておりました。
「俺も、放送部で、練習。正しいしょうじゅんご?さぁおせぇてもらえばえがった・・」
後の祭り。でございました。

ジュリアン(ソファの下手を通って、スツールの上手端に、腰かけながら)
「そりゃまあ、リチャードと彼の銃とは、相当に迷惑なしろものだったからな。みんながあれには眉をひそめておった。そう、たとえばあの男だ_覚えているだろうローラ、庭師のグリフィスだよ。ほらあの_リチャードがくびにした・・・・・あの男が何度かわたしに言っていた。『見てなさいよ、いつかきっとあっしは銃を持って出かけてって、ウォリック氏を射殺しやるから』ってね。

「ハイ!止め!・・・酔漢・・発音他!・・メチャクチャだぁ!」
けんちゃんが、読み合わせの際、止めました。
「俺もそうだけど・(けんちゃんも塩竈人)やっぱりなぁ、みんな結構なまって・・そのままだったりすんだよなぁ」
「でもさぁ、意識してれば治るって!」と猫写真家君(彼も塩竈人)
演劇のキャリアは、彼が一番でした。
「せっちゃんさぁ。みずま君と酔漢の読み方編って言うのかなぁ・・・少し見てやってくれる?」
これは、おおた君からの提案。
「いいよ!だって、そのまま発音されたら、私笑い転げそうになるんだもん!」
横浜生まれは、はっきり言う。
そんなわけで、酔漢の特訓が始まりました。

「酔漢君、一つ質問なんだけど。落語してる時って、そんなになまってないよね。芝居になると・・どうして?」
くだまき聴取者の皆様へ。ここから先は「宮城語封印」で話をかたることといたします。
「落語は、耳から聞いて覚える部分が大半。江戸弁とはいうものの、何度か聞いているうちに、リズムや発音が身についていると思うんだ。だけども、更の音読は意識しないと・・難しい」
「じゃぁさ。これ言える?」
「何?」
「はしをもってはしのはしをわたる」
漢字で書きます。こうです。
箸を持って、橋の端を渡る。
酔漢、言ってみました。
「はしをもってはしのはしをわたる・・・・」
せっちゃん。笑いをこらえております。
「『はし』が全部一緒で・・・目を閉じると・・・笑えるぅぅ」
「そんなにおかしい・・か?」
「だってさぁ、酔漢君のはこうだよ『橋を持って箸の端を渡る』って・・・・」
「なしてっしゃ?」
「ダメじゃん。仙台弁禁止だからね!意識して!」
(彼女の「じゃん」は横浜なまりじゃないのかぁぁ!)
「じゃぁ、少し解説。『箸』は『は』にアクセント。『おはし』って言うと簡単に分かると思う。『橋』は全部同じ調子。『つりばし』って言えばちゃんと聞こえる。『端』は『し』にアクセントがあって、『きれはし』って言ってみて、こうすれば分かるよね・・」
「なるほど・・・なぁ・・・」
「じゃあ。もう一度言ってみて」
「はしをもってはしのはしをわたる」
「そうそう・・・」
「これが始まりだね」
と、いうわけで、せっちゃんからは、だいぶ鍛えられました。
これを台詞に置き換えて。
「台詞のポイントだけど・・『眉をひそめて』の『まゆ』はね、酔漢君の場合、『ま』にアクセントがあって、しかも『ひそめる』と一本調子が標準なのに『ひ』のアクセントが強いもんだから、関西弁みたいになるのよね。このあたりが落語の癖かもね。だから、この台詞が一番おかしいし、『迷惑なしろもの』の『しろもの』なんだけど、電気製品の『白物』と『代物』との違いみたいに聞こえるわけ。これも一本な調子で『しろもの』なんだ。そして最後に『いつかきっと』これはねぇ、解説のしようがないなぁ。根本的におかしい・・」
と言うように、結果、酔漢の日本語自体がかなり「おかしい」ことに気づいたわけです。
宮城語主体の連中です。役者をするのは、みずま君と一緒なのですが、僕の方がせっちゃんに直されました。
「酔漢、落語は見事だと・・・思うんだがなぁ・・あれはどうやって練習するんだ?」
また同じ質問。猫写真家君からでした。
「落語は話が出来上がるまで耳で覚える部分がかなり大きい。その差だと思う」
「そうなんだ、酔漢の落語見てて、一つ思ったことがあって・・」
「何?」
「役者は落語家を演じることが出来る。だけど、落語家は芝居をするのに苦労する」
この言葉は、酔漢にして「なるほど」と思うしかございませんでした。「なるほど」です。

落語をやってたか、そうでなかったか。実は、「早口ことば」は苦労しませんでした。
「寿限無」の練習が役だった?のかもしれません。

幕があがったとき、フランス窓はしまっているが、カーテンは窓の両側にひかれている。、窓の外には霧がうすまき、ブリストル海峡の霧笛が、一定の間隔をおいて自動的に陰気な音を響かせる。リチャード・ウォリックがフランス窓に向かって、中央奥の車椅子に坐っている。端正な容姿の中年の男。椅子に坐ったまま眠り込んでしまったかのような姿勢である。膝には膝掛がかかっている。ローラ・ウォリックが中央奥、アルコーヴの角に近く立っている。三十歳ぐらい、金髪の魅力的な女性で、カクテル・ドレスに対のジャケットをはおっている。しらく舞台は暗いまま。ややあって、車が近づいてくる音がして、そのヘッドライトの光が室内をよぎり、ローラの姿を照らしだすので、彼女はアルコーヴの奥の暗がりに後退する。車が止まり、ヘッドライトが消え、ドアがばたんとしまる。しばらくして、懐中電灯の光が窓の外の霧のなかを動いているのが見えてくる。スタークェッダーが手探りで現われ、外から手のひらでガラスを払って、なかをのぞきこむ。窓をノックし、さらにもう一度、強くノックする。それから、窓の取っ手を動かしてみる。窓は開き、彼は室内によろめきいる。

スタークェッダー
こんばんは。どなたかおいでになりませんか?
すみません何せこのひどい霧でね。ついそこで車が溝にはまっちまったんです。ここがどのあたりかも、さっぱり見当がつかない始末でして。あ、こりゃいけない、窓があけっぱなしだった。すみません。どこかで脇道に迷いこんじまったのに違いないんです。もう一時間以上も、このくねくね入り組んだ道を走り回っているんですがね。(リチャードの方へ向き直り)眠っておいでですか?(リチャードの顔を懐中電灯で照らすが、リチャードが、最前からまったく身動きしていないことに気が付いてはっとする)
なんてこった!
(下手に向けて、懐中電灯を照らし、下手ドアの手前のスイッチを見つける。歩み寄ってスイッチを入れる、デスクのスタンドに明かりがともる。懐中電灯をデスクに置き、リチャードを見つめながら、その向こう側を迂回する、それから、上手ドアのスイッチを見つけ、歩み寄ってそれを押し、アルコーヴのテーブルの上のスタンドを、上手ドア手前のテーブル上のスタンドを点灯する。リチャードのほうへ一歩歩き出しかけたとき、ローラに気がつく)

ローラは最前から動いていない、両手をまっすぐわきにたらした姿勢で立っている。
声もたてず、息すらすまいとしているかのような印象。両人見つめあい、しばらく沈黙がつづく。

あの人____死んでますよ!


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13 コメント

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あ・え・い・う・え・お・あ・お! (すず)
2011-10-29 14:36:25
 高校時代の三年間は、毎朝屋上で発声練習をしていました(川向こうの二高生の皆さん、煩くしてすみませんでした!)

腹式呼吸で声を出すって、相当な運動になりますよね。我が放送部の仲間は、外見は普通な子ばかりでしたが、そろいも揃って大喰らいでした(女子高なのに、まったく夢が無いお話しで失礼)おそらくカロリーを必要としていたんでしょうね、「朝食・二時間目の休みにお弁当・部活終わりに買い食い・夕食」という、運動部並みの大喰い生活でした(笑)

話しそれましたが、「落語の江戸弁は、東北人には難しく、いまでも落語家さんには東北出身者は少ない」という話を何年か前に聞きました。青森弁でシェイクスピアとか、気仙語で聖書というものもあります。東北弁で落語はだめかしら?
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すず様へ (酔漢です)
2011-11-01 12:17:11
そうでした!すず様は放送部でいらっしゃいましたね。
では、酔漢目に是非、ご指導を。
仙台弁での落語は試みましたぁ。
時そばを英語で、中国語で、そして仙台弁で。
「あんだ、こいず何んぼっしゃ?」
「こいず!こいずばぁ十六文だっちゃ」
「んで、手ばだしてけらいん」
ってな具合です。
「Time Nudole」
「時粒麺」
となりまして。
「時そばだっちゃ」という苦しい題名にいたしました。
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ありました! (すず)
2011-11-01 18:34:11
 こんばんは。

浅学でお恥ずかしい!ネットで調べたら「東北落語」という立派な団体がありました。今野 東さんという、地元で人気のアナウンサーさんが中心となって活躍されておいでです。お時間があるときに、以下リンク先をご覧になって見て下さい。

★「東北落語」HP( http://www.bb.soma.or.jp/~kanchan/index1.html
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すず様へ (酔漢です)
2011-11-02 07:43:39
お知らせありがとうございました。
「東北落語」この団体は、おそらく僕らの頃にはなかったかと思います。
いやぁ、内容を拝読して、笑ったぁぁ。
ですが、津軽弁で落語をやったら、僕ら理解できるか・・・。
それが、あるかも今後また見てみます。
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Unknown (ひー )
2011-11-02 20:42:12
日にちをまたいでしまいました。
疲れて記事を書くのも閲覧するのも億劫になってしまい。

いやいや、読みながら発音を試していましたよ。
しょうじゅんごは、難しいのであります。
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ひー様へ (酔漢です)
2011-11-04 10:34:15
お疲れ様です。
激務の後、御無理なさいませぬよう。ご自愛ください。
「しょううじゅんご・・」
何から何まで難しいと。実感いたしました。
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今更のコメント乞う御容赦 (クリス)
2011-11-07 12:42:56
関東に住んだところで、どうしても訛りが抜けきらない東北人の一人でございます。
まあ、本人が別に恥ずかしいとも思っていないものでして…。


ところで、文字では分からないので気になっていることがあります。

酔漢様は、『が』行の音をどう発音されますか?

東北では、行頭でなければほとんど鼻濁音が一般的かと思います。私自身そういう発音です。

中学時代の音楽の先生(声楽専攻・大分県出身)によれば、歌唱の場合はこれが理想的らしく、東北人が得意とするところだと言われたのですが、言われてみれば鼻にかかる発音だなぁと思ったことを思い出しました。


外国語を学習した時に痛感いたしましたが、『行頭でない時に鼻濁音にしない発音』が、よほど気を遣わないと、なかなかできないのです。


実は、数日前から社内研修のために、大阪に滞在しているのですが、周りの人々の発音を聞いていると、どうも鼻濁音は少ないように聞こえます。
これがまた、本当に耳に馴染まなくて、それこそ私には"いずい"の極みでして…。

以前同じ勤務先にいた名古屋人の先輩も、抑揚も含めて似たような発音に聞こえていたので、私は西日本寄りの方言と思っていたのですが、バリバリ関西人に言わせると、名古屋は東寄りの方言だとか…(全然違うよぉ~)



現在、彼氏が大阪在住(多分来年東京に戻れる…はず)なので、
「もう向こうで一緒に住んじゃいなよ~」
なんて冷やかされることも度々あるのですが、私はきっぱりと(?)、
「言語の問題がありますので無理です。気候も文化も違う、言語も違う土地に暮らすのは大変だと、関東に出て来て痛感しました」
と華麗にスルーしております。

それを聞いたずっと地元住まいの人は、
「言語って……(絶句)」
と呟いておりました。ちなみに、この人には以前雪が真横に降ることもよくある話をしていて、同じようなリアクションを頂いております(笑)


結局、いずれ地元に帰ることが前提なので、
「生まっちゃどごさいんのが、いぢばんだぁ、はぁ~」
というところに帰結してしまうようです(笑)
もちろん、地元以外に住まなければ出ない言葉ですけれどね。

返信する
クリス様へ (酔漢です)
2011-11-08 18:50:22
標準語辞典では鼻音で発音。
これが、正しくて、東北特融ではないと思います。文語で表現する際は「ガ」と「が」で区別しますが、文頭では「ガ」と発音して、他は「が」と発音いたします。
「ガメラ」が「がめら」(鼻音で)では怪獣の感じはしませんよね。
関西弁でも、例えば古い落語を聞いておりますと、鼻音にちゃんとなってます。
関西というよりは、現代の発音なんでしょうね。日本語特融と言えばそうなんですが・・。
従弟のかみさんが、バリバリの関西人ですが、塩竈の文化と言葉にすっかりはまってまして、
「そこにあっちゃ」と話しているときは、笑いが込み上げてきました。
僕自身は・・クリスさんと一緒でス!
自信がありません。
返信する
私めも・・・ (丹治)
2011-11-09 17:08:58
すずさんへ

ケセン語訳の聖書ですが、一度読んで、そして聞いてみたいと思ってます。
翻訳した方は、盛のお医者さん。
学生時代から英独仏はおろか、ラテン語ギリシャ語からエスペラントまで、
恐ろしく語学ができる方だったそうです。

ある日、診察を受けに来たお婆さんが言ったそうですよ。
「先生のケセン語訳の聖書を読んで、キリスト教が自分たちの教えだと初めて実感できた」って。

訳者がローマ教皇にケセン語訳の聖書を贈ったとき、
日本のキリスト教界の偉いさんたちはあんまりいい顔をしなかったそうです。
ところが教皇は
「よくぞあなたがたの言葉に聖書を訳してくれた」
と言って喜んだという話を聞いたことがあります。

東北弁の落語、あったらいいですね。

何年か前、秋田県出身のシンガーソングライターが、
『大きな古時計』や日本のフォークソングを秋田弁で吹込んだCDを出しました。
盛岡に行けば、『岩手弁の世界』というシリーズもののCDを売っています。
『津軽弁の日』というCDも発売されています。

東北弁の落語があっても全然おかしくないですよ。
東北の言葉には、ほのぼのとした暖かさを感じます。


クリスさんへ

「か」は僕もやっぱり「が」ですね。
「分らない」は「わがんね」だし、
「ばか」は「ばが」です。
例としては適切でありませんが・・・

あと、どうしても抜けないのがイントネーションです。
こんなことがありました。
二度目にドイツに行ったとき、
ウィーンのユースホステルで日本人の女子大生とバッタリ。
「日本のかたでしょ?なつかしいね」と言った途端、
「あなた、東北の方ですね」。
「どうして分ったの?」
(「なスてわがった?」とまでは取乱さずに済みましたが)
「そのイントネーションを聞けば分ります」。

僕の日本語は訛ってます。
でも恥ずかしいとは思いません。
だって、自分が根を張って生きている土地があるという
何よりの証拠ですから。

語学教師をしていると、
「言葉はいくつ話せますか?」なんて話になることがあります。
その時はいつもこう言ってます。

私はポリグロットです。
母国語は塩竈弁。
仙台弁が第一外国語。
標準語が第二外国語。
(第一と第二は入替るかもしれません)。
英語が第三外国語で、
ドイツ語は第四外国語です。


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お話し、ありがとうございます! (すず)
2011-11-11 11:34:31
>丹治様へ

 お話しありがとうございます♪ローマ法王へ気仙語の聖書を献上されたいきさつは、地元紙で読みました。今の法王様は、東日本大震災の被災者へ向けて、ミサを行って下さったそうで、ありがたいです。

東北に伝わる民話や昔話を、標準語で聞いたり読んだりすると、どうも綺麗すぎて心に響かないんですよね(苦笑)ずーずー弁って言われますが、やっぱり相手に「んだ」って返事されると、気持ちがわかってもらえてるなぁと思います。
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