東北福祉大学演劇同好会は、現在も活動を続けているようでした。
「いるようでした」と結んだのは、僕らと一緒に活動した後輩以降、誰とも接点がなくて、今現在の活動状況が分からないからなのでした。
「東北福祉大学演劇部」と検索した結果、「くだまき」へたどり着く。
そんな履歴は残っておりますが。
「今なんじょしてんだべ?」
と、その履歴をたどりますれば。
東北福祉大学演劇同好会第33回定期公演
レンタルファミリー
・日時 12月 9日(土) 17:30から
10日(日) 13:30から 17:00から
*開場は各30分前です。
・場所 東北福祉大学内H-oneホール
(JR仙台駅24番バス停より、北山経由子平町循環/子平町経由北山循環 で福祉大前下車。)
・料金 前売り 300円 当日 400円
とございまして、きちんと公演を続けているようです。
オリジナル脚本?
僕らの頃はオリジナル脚本を書くような気の利いた奴なんておりませんでしたので、「これは凄い」と感心致しました。
尤も、「猫写真家君」であるとか「ある友人君」とか「おおた君」なぞは、「俺が書く!ゾ!」と言いそうではありましたが。
それと・・「そうか、キャンパス内で公演するんだ。ホームグランドがあるっていいよなぁ」です。
実は、これが一番うらやましいところでございます。
どんなメンバーが揃っているんだろうなぁ。
これも興味がありますが、出かけることが難しくて・・・。
後輩諸君、ご容赦。
辛口アンケートを記入するOBなんて、客席にいない方がいいのかもしれないけど・・・。
そんな事は決していたしません・・・とも!
写真の台本は、前回と同じものです。
この台詞の冒頭。
酔漢が「この一行」の相当苦しんだお話です。
実は、「大学演劇部の頃」という「くだまき」を語っております最中。「猫写真家君」と「ある友人君」とは連絡を取り合っております。
特に、「ある友人君」はPCでメールをくださいます。
そのやり取りです。
「酔漢。『あのはなし』は絶対に語れ・・よな!」
「『あのはなし』って何すか?」
「あっ!お前とぼけてるぅぅ」
「と急にいわれてもなぁ、わかんねぇっちゃ」
「あれだよ!あれ・・・・」
と言われまして、途端に思い出したたった一行の台詞。
「あっ!あれだすぺ!・・・・やっぱすぃ・・・語んのすか?」
「当たり前だ!あれを語らずして『くだまき』にするんじゃないぞ」
そうだよなぁぁ・・・・・・。
第二幕 場面 前幕と同じく、その日の午後遅く。
幕が上がると、ジュリアン・ファラーがいらいらと舞台下手寄り中央を行ったり来たりしている。テラスへの窓は開け放たれ、いましも日が西に沈もうとしている刻限。
ジュリアンはことのほかそわそわして、落ち着かない様子。テラスへ出て外を見渡したかと思うと、また室内に入り、時計を見る。下手中央寄りの肘掛椅子に向かって舞台を横切りかけたとき、肘かけ椅子のわきのテーブルに新聞がのっているのを認める。リチャードの死を報じた地方紙である。ジュリアン、それを取り上げ、上手ホールへのドアに背を向けて、肘かけ椅子の越しかけ、あわただしく目を通す。ややあって、上手ドア開く。
ジュリアン急いで立ち上がる。
ジュリアン ローラ!ぼくは・・・・おお。(落胆する)
エンジェル(てるよ)が入ってくる。
「すいかぁぁぁぁんんんん!ストォォォーーーープ!」
ある友人君(わしあし君)の声。
「あのねぇ、動物園の熊じゃないんだから。舞台を行ったり来たりするだけじゃダメなんだ!歩くリズム、どこへ向かうのか、その意図が伝わらなきゃ意味がないんダ!単に『落ち着かない』行動ではなくて、『何んで落ち着くことができないのか』を表現しなきゃ意味がないだろ!それと『いらいらしている』という事も意識して!これが最も大事なんだ!このジュリアンの行動は台詞は無くても、これから二幕がどういう展開になるのか、それを観客は考えるわけだ。だから酔漢の行動一つ一つが大事になってくる。導入部なんだからな!・・・・そ・れ・と!『ローラ・・ぼくは・・・おお』はもう一度!『おお』がそのぅ・・・・・チ・ガ・ウ・ン・ダ!」
「入ってくると期待していたローラが入ってこなくて、メイドのエンジェルだったわけだから・・そこはがっくりくる・・・」
「分かってんだったら、そう表現してくれ!」
ところが、「おお」たったこれだけの台詞が難しいのなんの。
正直、落語なら同じ「おお」でもうまく表現できたんだと思います。
舞台は高座とは違う。
全てにおいて。当たり前のことなのですが、今さらこうも思ってしまいます。
マンツーマンの指導が入ります。(ある友人君と・・他大勢)
「酔漢、じゃあもう一度」
「ローラ、ぼくは・・・・おおお」
「『おおおお』が強すぎ!星飛雄馬がマウンドで絶叫してんじゃないんだから!」(俺は今モウーレツに感動しているぅぅ・・の乗り)
「ローラ!ぼくは・・・おぅぅぅ」
「表情でごまかすんじゃない!『おお』はちゃんとした台詞なんだから!」
「ローラ!僕は!おお!」
「落胆しているところをきちんと表現しないといけない。単に焦っているだけにしか聞こえない」
なんやかや、時間はすでに二時間は過ぎてます。
「ローラ!ぼくは・・・おお。」(落胆する)
なんとかかんとか、形にはなりました。
ジュリアン ローラ!ぼくは・・・おお。(落胆する)
エンジェルが入ってくる
エンジェル 奥様はまもなくお見えでございます。(ドアを閉める)おそれいります・・・少々失礼いたします。
ジュリアン (下手寄り中央へ来ながら、新聞に気をとられて)うん、うん、なんだね?
エンジェル (ソファのうしろを横切りながら)ちょっとお耳を拝借できないかと存じまして・・・
ジュリアン というと?
エンジェル このお屋敷での私の立場が少々不安でございますので、その件につきご相談いたしたいと思ったようなわけでございます。
ジュリアン なるほど。で、なにが問題なんだ?(自分自身の問題にとらわれているので、けっして本心から耳を傾けているわけではない)
エンジェル ウォリックさまがお亡くなりになりますと、私は仕事がなくなりますわけで。
ジュリアン うん。まぁそういうことになるだろうな。(デスクに歩み寄り、その上に新聞を置く)しかし、お前ならたやすく別の口が見つかるんじゃないのか?
エンジェル はあ、それなだといいのですが。
ジュリアン お前は資格を持っているんだろう?
エンジェル (ジュリアンの上手側に近づき)はい、そのとおりです。私は資格を持っておりますし、病院にでも個人のお屋敷にでも、捜せばいくらでも勤め口は見つかるはずです。それは解っておりますので。
ジュリアン だったら何が心配なんだね?
エンジェル こちらでの仕事を離れることになったその事情、それがどうも私には気に入りませんので、はい。
ジュリアン つまり、解りやすい言葉で言えば、殺人に巻き込まれて迷惑している、そう言うんだな?
エンジェル そう申してよろしゅうございます。
ジュリアン なるほど。しかし残念だが私をしては、何も力添えしてやるわけにはゆかんようだな。おそらくウォリック夫人が、お前の為に十分な紹介状を書いてくれるだろう。
エンジェル その点ではあんいも心配してはおりませんです、はい。奥様は大変ご親切なおかたですし・・・・口はばったいことを申すようですが、大変魅力的なご婦人で。
ジュリアン (おさえた口調で)それはどういう意味かね?
エンジェル 奥様にどんな意味でもご不自由おかけしたくないということで。
ジュリアン つまり。彼女への行為として、しばらくこの家にいるつもりだというのかね?
エンジェル役の「てるよ」は一ノ関の出身。やはり高校演劇の経験者でした。
彼女との二人芝居状態が続いております。
本番、特に、二回目の公演のときは、(酔漢自身が落ち着いていたというか・・開き直ったというか・・)彼女の間に乗せられて、芝居をしていたような気がしてなりません。
アガサ・クリスティーの脚本は男であるエンジェルです。これをそのままメイドにしました。
ですから、男のような台詞がところどころございますが、彼女は見事にそれを消化し表現しておりました。
エンジェル ただ今も申しました通り、ゆうべ私はよく眠れませんでした。横になって、例の霧笛が鳴り渡るのを聞いておりましたようなしだいで。いつも思うのですが、あれは実に気のめいる音でございますね、はい。そのうち、どこかで鎧戸がばたんと音を立てているような気がしてきました。私は起きだして、窓のそとからのぞいてみました。
ジュリアン で?
エンジェル ウォリック様が、またやっていなさる。最初はこう思っておりました。ですが、何故か少々胸騒ぎがいたしまして、しばらくそこに立っておりますうちに、窓の外に足音がしたのでございます。
ジュリアン 何?あの小道・・か?
エンジェル さようで。ふだんは滅多に使われることはなく、あなた様がここへお越しになるのに、お屋敷からの近道だというのでお通りになるだけです。
ジュリアン (冷やかに)続けたまえ。
エンジェル 今も申しました通り、私、こそ泥でもうろついているのではないかと。ですから、あなた様がお屋敷の方へ帰ってゆかれるのを見たときには、ほっといたしました。
ジュリアン 要点はなんなのかね?どうも解らん。
エンジェル あなた様が、ゆうべウォリック様を訪ねてここへおいでになられた事を警察にお話しになったかどうかと思いましたものですから。私が根掘り葉掘り聞かれることとなりますと・・どうも・・・。
ジュリアン 恐喝に対する罪が重い事は、お前もわかっているんだろうな!
エンジェル めっそうもございません。どちらに義理立てするか・・単なる疑問でございます。
ジュリアン でっち上げにもほどがある!警察は犯人については完全に満足しているんだ!あの霧じゃ誰が通ろうと見分けられたはずはないんだ!
ドアが開き、ローラ登場。エンジェルがいることに驚く。
ローラ ごめんなさい。お待たせして、ジュリアン。
エンジェル このことについては、また後程お話しいたしましょう。
エンジェル退場。
アガサ・クリスティーのサスペンスの真骨頂。
多くの登場人物の会話から事件があからさまになっていく過程と同時に進行する心理描写は、彼女独特の表現です。
思えば、コミック「名探偵コナン」を見ますと、この手の手法がいたるところで使われております。
登場人物の証言、過去の出来事、過去をあばく為の証言が時たま人を傷付け、そうして事件の真相に迫ってゆく。
会話会話の重みが大変重要になってきます。
舞台そで、観客の反応を確かめながら出番をまっている警部役のとしお君と、刑事役みずま君。舞台のおおた君、みつえちゃん。
客席からのある音に気づきました。
「なんか・・聞こえないか?」
「中程の客席からだけど・・・・どこ?」
「あっ。解った!あの客、寝てる!『いびき』?」
袖に帰った酔漢です。
話しの先を見ますれば・・・・・。
「あっつ!」
「何?酔漢君知り合い?」
「お前ら、俺の家に来たよな」
「先月、お寿司ごちそうになった・・・・」
「それじゃ、思いださねぇか?」
「思い出す・・・?」
「わかった!」
「としお君わかったの?」
「酔漢の親父だ!」
親父がお袋と客席にいる。
芝居がある事は知らせていたけど、まさか二人揃って来るなんてまったく想定しておりませんでした。
(何せ、落語も一度きり→この公演の後の酔漢の引退寄席のときだけ)
その親父がいびきかいているんですぅぅ・・・。
「酔漢の親父を起こそう!そんな芝居をしてやろうぜ!」
何か変なガッツがみんなの中に湧き上がったようでした。
普通ありえないだろ!
親父!頼むぜ!
と、こう心の中で叫んでおりましたが・・・来てくれた事には感謝しておりました。
「いるようでした」と結んだのは、僕らと一緒に活動した後輩以降、誰とも接点がなくて、今現在の活動状況が分からないからなのでした。
「東北福祉大学演劇部」と検索した結果、「くだまき」へたどり着く。
そんな履歴は残っておりますが。
「今なんじょしてんだべ?」
と、その履歴をたどりますれば。
東北福祉大学演劇同好会第33回定期公演
レンタルファミリー
・日時 12月 9日(土) 17:30から
10日(日) 13:30から 17:00から
*開場は各30分前です。
・場所 東北福祉大学内H-oneホール
(JR仙台駅24番バス停より、北山経由子平町循環/子平町経由北山循環 で福祉大前下車。)
・料金 前売り 300円 当日 400円
とございまして、きちんと公演を続けているようです。
オリジナル脚本?
僕らの頃はオリジナル脚本を書くような気の利いた奴なんておりませんでしたので、「これは凄い」と感心致しました。
尤も、「猫写真家君」であるとか「ある友人君」とか「おおた君」なぞは、「俺が書く!ゾ!」と言いそうではありましたが。
それと・・「そうか、キャンパス内で公演するんだ。ホームグランドがあるっていいよなぁ」です。
実は、これが一番うらやましいところでございます。
どんなメンバーが揃っているんだろうなぁ。
これも興味がありますが、出かけることが難しくて・・・。
後輩諸君、ご容赦。
辛口アンケートを記入するOBなんて、客席にいない方がいいのかもしれないけど・・・。
そんな事は決していたしません・・・とも!
写真の台本は、前回と同じものです。
この台詞の冒頭。
酔漢が「この一行」の相当苦しんだお話です。
実は、「大学演劇部の頃」という「くだまき」を語っております最中。「猫写真家君」と「ある友人君」とは連絡を取り合っております。
特に、「ある友人君」はPCでメールをくださいます。
そのやり取りです。
「酔漢。『あのはなし』は絶対に語れ・・よな!」
「『あのはなし』って何すか?」
「あっ!お前とぼけてるぅぅ」
「と急にいわれてもなぁ、わかんねぇっちゃ」
「あれだよ!あれ・・・・」
と言われまして、途端に思い出したたった一行の台詞。
「あっ!あれだすぺ!・・・・やっぱすぃ・・・語んのすか?」
「当たり前だ!あれを語らずして『くだまき』にするんじゃないぞ」
そうだよなぁぁ・・・・・・。
第二幕 場面 前幕と同じく、その日の午後遅く。
幕が上がると、ジュリアン・ファラーがいらいらと舞台下手寄り中央を行ったり来たりしている。テラスへの窓は開け放たれ、いましも日が西に沈もうとしている刻限。
ジュリアンはことのほかそわそわして、落ち着かない様子。テラスへ出て外を見渡したかと思うと、また室内に入り、時計を見る。下手中央寄りの肘掛椅子に向かって舞台を横切りかけたとき、肘かけ椅子のわきのテーブルに新聞がのっているのを認める。リチャードの死を報じた地方紙である。ジュリアン、それを取り上げ、上手ホールへのドアに背を向けて、肘かけ椅子の越しかけ、あわただしく目を通す。ややあって、上手ドア開く。
ジュリアン急いで立ち上がる。
ジュリアン ローラ!ぼくは・・・・おお。(落胆する)
エンジェル(てるよ)が入ってくる。
「すいかぁぁぁぁんんんん!ストォォォーーーープ!」
ある友人君(わしあし君)の声。
「あのねぇ、動物園の熊じゃないんだから。舞台を行ったり来たりするだけじゃダメなんだ!歩くリズム、どこへ向かうのか、その意図が伝わらなきゃ意味がないんダ!単に『落ち着かない』行動ではなくて、『何んで落ち着くことができないのか』を表現しなきゃ意味がないだろ!それと『いらいらしている』という事も意識して!これが最も大事なんだ!このジュリアンの行動は台詞は無くても、これから二幕がどういう展開になるのか、それを観客は考えるわけだ。だから酔漢の行動一つ一つが大事になってくる。導入部なんだからな!・・・・そ・れ・と!『ローラ・・ぼくは・・・おお』はもう一度!『おお』がそのぅ・・・・・チ・ガ・ウ・ン・ダ!」
「入ってくると期待していたローラが入ってこなくて、メイドのエンジェルだったわけだから・・そこはがっくりくる・・・」
「分かってんだったら、そう表現してくれ!」
ところが、「おお」たったこれだけの台詞が難しいのなんの。
正直、落語なら同じ「おお」でもうまく表現できたんだと思います。
舞台は高座とは違う。
全てにおいて。当たり前のことなのですが、今さらこうも思ってしまいます。
マンツーマンの指導が入ります。(ある友人君と・・他大勢)
「酔漢、じゃあもう一度」
「ローラ、ぼくは・・・・おおお」
「『おおおお』が強すぎ!星飛雄馬がマウンドで絶叫してんじゃないんだから!」(俺は今モウーレツに感動しているぅぅ・・の乗り)
「ローラ!ぼくは・・・おぅぅぅ」
「表情でごまかすんじゃない!『おお』はちゃんとした台詞なんだから!」
「ローラ!僕は!おお!」
「落胆しているところをきちんと表現しないといけない。単に焦っているだけにしか聞こえない」
なんやかや、時間はすでに二時間は過ぎてます。
「ローラ!ぼくは・・・おお。」(落胆する)
なんとかかんとか、形にはなりました。
ジュリアン ローラ!ぼくは・・・おお。(落胆する)
エンジェルが入ってくる
エンジェル 奥様はまもなくお見えでございます。(ドアを閉める)おそれいります・・・少々失礼いたします。
ジュリアン (下手寄り中央へ来ながら、新聞に気をとられて)うん、うん、なんだね?
エンジェル (ソファのうしろを横切りながら)ちょっとお耳を拝借できないかと存じまして・・・
ジュリアン というと?
エンジェル このお屋敷での私の立場が少々不安でございますので、その件につきご相談いたしたいと思ったようなわけでございます。
ジュリアン なるほど。で、なにが問題なんだ?(自分自身の問題にとらわれているので、けっして本心から耳を傾けているわけではない)
エンジェル ウォリックさまがお亡くなりになりますと、私は仕事がなくなりますわけで。
ジュリアン うん。まぁそういうことになるだろうな。(デスクに歩み寄り、その上に新聞を置く)しかし、お前ならたやすく別の口が見つかるんじゃないのか?
エンジェル はあ、それなだといいのですが。
ジュリアン お前は資格を持っているんだろう?
エンジェル (ジュリアンの上手側に近づき)はい、そのとおりです。私は資格を持っておりますし、病院にでも個人のお屋敷にでも、捜せばいくらでも勤め口は見つかるはずです。それは解っておりますので。
ジュリアン だったら何が心配なんだね?
エンジェル こちらでの仕事を離れることになったその事情、それがどうも私には気に入りませんので、はい。
ジュリアン つまり、解りやすい言葉で言えば、殺人に巻き込まれて迷惑している、そう言うんだな?
エンジェル そう申してよろしゅうございます。
ジュリアン なるほど。しかし残念だが私をしては、何も力添えしてやるわけにはゆかんようだな。おそらくウォリック夫人が、お前の為に十分な紹介状を書いてくれるだろう。
エンジェル その点ではあんいも心配してはおりませんです、はい。奥様は大変ご親切なおかたですし・・・・口はばったいことを申すようですが、大変魅力的なご婦人で。
ジュリアン (おさえた口調で)それはどういう意味かね?
エンジェル 奥様にどんな意味でもご不自由おかけしたくないということで。
ジュリアン つまり。彼女への行為として、しばらくこの家にいるつもりだというのかね?
エンジェル役の「てるよ」は一ノ関の出身。やはり高校演劇の経験者でした。
彼女との二人芝居状態が続いております。
本番、特に、二回目の公演のときは、(酔漢自身が落ち着いていたというか・・開き直ったというか・・)彼女の間に乗せられて、芝居をしていたような気がしてなりません。
アガサ・クリスティーの脚本は男であるエンジェルです。これをそのままメイドにしました。
ですから、男のような台詞がところどころございますが、彼女は見事にそれを消化し表現しておりました。
エンジェル ただ今も申しました通り、ゆうべ私はよく眠れませんでした。横になって、例の霧笛が鳴り渡るのを聞いておりましたようなしだいで。いつも思うのですが、あれは実に気のめいる音でございますね、はい。そのうち、どこかで鎧戸がばたんと音を立てているような気がしてきました。私は起きだして、窓のそとからのぞいてみました。
ジュリアン で?
エンジェル ウォリック様が、またやっていなさる。最初はこう思っておりました。ですが、何故か少々胸騒ぎがいたしまして、しばらくそこに立っておりますうちに、窓の外に足音がしたのでございます。
ジュリアン 何?あの小道・・か?
エンジェル さようで。ふだんは滅多に使われることはなく、あなた様がここへお越しになるのに、お屋敷からの近道だというのでお通りになるだけです。
ジュリアン (冷やかに)続けたまえ。
エンジェル 今も申しました通り、私、こそ泥でもうろついているのではないかと。ですから、あなた様がお屋敷の方へ帰ってゆかれるのを見たときには、ほっといたしました。
ジュリアン 要点はなんなのかね?どうも解らん。
エンジェル あなた様が、ゆうべウォリック様を訪ねてここへおいでになられた事を警察にお話しになったかどうかと思いましたものですから。私が根掘り葉掘り聞かれることとなりますと・・どうも・・・。
ジュリアン 恐喝に対する罪が重い事は、お前もわかっているんだろうな!
エンジェル めっそうもございません。どちらに義理立てするか・・単なる疑問でございます。
ジュリアン でっち上げにもほどがある!警察は犯人については完全に満足しているんだ!あの霧じゃ誰が通ろうと見分けられたはずはないんだ!
ドアが開き、ローラ登場。エンジェルがいることに驚く。
ローラ ごめんなさい。お待たせして、ジュリアン。
エンジェル このことについては、また後程お話しいたしましょう。
エンジェル退場。
アガサ・クリスティーのサスペンスの真骨頂。
多くの登場人物の会話から事件があからさまになっていく過程と同時に進行する心理描写は、彼女独特の表現です。
思えば、コミック「名探偵コナン」を見ますと、この手の手法がいたるところで使われております。
登場人物の証言、過去の出来事、過去をあばく為の証言が時たま人を傷付け、そうして事件の真相に迫ってゆく。
会話会話の重みが大変重要になってきます。
舞台そで、観客の反応を確かめながら出番をまっている警部役のとしお君と、刑事役みずま君。舞台のおおた君、みつえちゃん。
客席からのある音に気づきました。
「なんか・・聞こえないか?」
「中程の客席からだけど・・・・どこ?」
「あっ。解った!あの客、寝てる!『いびき』?」
袖に帰った酔漢です。
話しの先を見ますれば・・・・・。
「あっつ!」
「何?酔漢君知り合い?」
「お前ら、俺の家に来たよな」
「先月、お寿司ごちそうになった・・・・」
「それじゃ、思いださねぇか?」
「思い出す・・・?」
「わかった!」
「としお君わかったの?」
「酔漢の親父だ!」
親父がお袋と客席にいる。
芝居がある事は知らせていたけど、まさか二人揃って来るなんてまったく想定しておりませんでした。
(何せ、落語も一度きり→この公演の後の酔漢の引退寄席のときだけ)
その親父がいびきかいているんですぅぅ・・・。
「酔漢の親父を起こそう!そんな芝居をしてやろうぜ!」
何か変なガッツがみんなの中に湧き上がったようでした。
普通ありえないだろ!
親父!頼むぜ!
と、こう心の中で叫んでおりましたが・・・来てくれた事には感謝しておりました。
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