酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

カフェソコにて

2007-10-23 11:05:31 | ALWAYSな話
 時を追っかけてブログをしたためておりました。このお話はまだ先に書こうと考えておりました。ですが、悲しいことにこのお話を前倒しで書かなくてはなりません。そのわけは、この話の最後にしたいと存じます。まずはいつものように(しばらくご無沙汰でしたが)はじめたいと思います。
 子平町行きのバスは、日立ファミリーセンター(当時はありました。このホールのお話は、落語編を持って紹介いたします)の少し手前にあります。(今は仙台ホテルの前あたりかな?)いつものように仙台駅を降り、大学へと向う道すがら、今日の授業の事を考えました。
「なんだや今日は、たいした授業ねぇちゃなや。出席重視だし。大学行くのやんだなやあな」と思った瞬間、行き先が決まりました。
「あそこ(A・SCO)さぁ行けば誰かいっちゃ」
行き先は「カフェソコ」という喫茶店です。
名掛丁のアーケードを途中まで行き、本町の方へ向うように右へ折れますと、古いビルの2階にその喫茶店はありました。同じビルの地下には「無伴想」(この字だったと思うのですが、よろしかったでしょうか)というこれもまた、喫茶店があり、クラッシクの名曲が流れていることから、中での私語は厳禁。筆談のみ許可という喫茶店でした。でも、酔漢自身ジャズピアノが好きだったこともあり、カフェソコをよく利用いたしました。本当に毎日位(予備校から大学にかけて)通った喫茶店です
このブログの名前を頂戴いたしました丹治道彦氏(現東北工業大学准教授)とも何度となくこの喫茶店で話をいたしました。
カフェソコ到着。
まだ、誰も知った顔はおりません。
「今日のブレンド下さい」
カフェソコのブレンドは、メニュー上「ブレンドコーヒー」としか書いてありませんが、マスターが毎日ブレンドの中身を替えて出してくれます。
「今日のうまい」(どちらかと言えば、酸味のある方が好きなので)
プレイヤーに立てかけてあるジャケットは「キースジャレット」
しばし、コーヒーとショートホープを楽しみます。
「やっぱりいましたか」「いたいた酔漢先輩だ」
と、入り口を見ると、落語をやっていた教育大学の後輩とその面々。女の子も二人。「きーの」(仙台映画情報紙)を手にして僕の前に座りました。
「教育大学の落語研究会は出来そう?」
「メンバーもそこそこ集まりましたし、顧問もなんとかなりそうです」
「来月には旗揚げをホールでやろうかと」
「みんなで、練習しなくっちゃなんねぇなぁ」としばし、その話。
ふと、たかちゃんが、僕の右肩のあたり、壁に掛けてある油絵を見てこう言いました。
「この絵いいなぁ、青深いよね。セザンヌ意識してるのかなぁ。先輩いい色だと思いません?」
「絵だって?そう言えば、この前と掛けてあるのが違うよね」
「気づかなかったんですか」
「あまりじろじろとは見ないけど。。。えっつ!(洒落ではありません)」
「酔漢先輩どうしんですか。声上げて」
「叔父さんだっちゃ」
「叔父さんってだれっしゃ?」
「だからこの絵描いた本人」
「先輩の叔父さんだって。この名前?」
「叔父は学院の美術部さぁいたのっしゃ」
カフェソコの絵はその、叔父と仲のいいOBの人達の絵でした。
「絵だけでねぇのっしゃ。叔父さんは、船舶も一級もってすぺ。スキーも得意だしプロ野球連れて行ってくたりしたおん(プロ野球の話 ロッテオリオンズ編 にて)」
「素敵な叔父さんですね」
あとは、落語会の準備とか話しておりましたところ(ここまで話すと展開が見えますよね。噂をすればなんとやらです)
「こんにちわ」と入ってきたスーツ姿のサラリーマン数人。こんな時間に?と思った瞬間。
「あれっ!酔漢ちゃんなしてここさいんの?授業でねぇのか?」
「おんちゃんこそなして?」
「絵のアンケート見さぁきたのっしゃ」
「おんちゃん。親父さぁは内緒で・・」
「わかったっちゃ。そのかわり、ちゃんとアンケートびっしり書いていけよ。んで、酔漢ちゃん5人分でいいかや」
そう言ってコーヒーチケットをおいていってくれました。
そして数日後。
大学から家に帰ると叔父と父が晩酌をしておりました。
「おう酔漢ちゃんお帰り、一緒さぁ呑むべっちゃ」
僕は叔父があの時の話をしなければと思いましたが。
「この前はありがとうなや。絵ば見てけてな。だれ、喫茶店で俺の絵ば見てけたのっしゃ。酔漢ちゃん」
「何っしゃ。酔漢授業でねぇか」
まずい展開だぁ
「何、大学の授業なんて必要ねぇのは必要ねぇのっしゃ。それよりも大事な授業ば喫茶店でやってたんだすぺ」
叔父のその言葉で話しは終わり。助かりました。
「んでもみんなよく絵ば勉強してっちゃな。一人いた女の子(たかちゃんだ)なんか俺がゼザンヌ好きだって解られたおんなや」
「おんちゃん。カフェソコさぁよく行くのすか?」
「仕事の合間にちょくちょくな。酔漢ちゃんこそ行くのすか?」
「ちょこちょこどこでねぇのっしゃ。しょっちゅうだっちゃ」
「んでも、会わねかったなや」
話を聞くとほとんどニアミスの状態だと後でわかりました。

叔父とのエピソードを書きました。これだけではありませんが、酔漢の一番の思い出として書きました。

その叔父が先週急逝いたしました。
塩竈はことのほか寒く、冬のようでした。

10月に入り、仕事でもわたわたしてましたし、叔父の死も重なり、更新できずにおりました。

「酔漢ちゃん今度いつ帰ってくんのっしゃ。また呑むっちゃなや」
この夏最後に交わした言葉でした。
叔父は孫の写真を加工するためにパソコンを買いました。死の前々日届いたパソコンには手を付けることはありませんでした。そのパソコンの最初の仕事は、自分の告別式に参列してくださった方々の名簿作りでした。その仕事は私がやりました。
キーボードに何度も涙が落ちました。

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2 コメント

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Unknown (元・部下☆)
2007-10-25 10:53:00
ご無沙汰です。
叔父様がご逝去とのこと。心よりお悔やみ申上げます。
私も先週の週末に、岩手に帰っておりました。実母の見舞いです。本当に寒かったです。娘は岩手から風邪を土産に持って帰りましたよ。

まだお気持ちが落ち着かないとは思います。叔父さまの思い出を大切にして下さい。
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時がたてば、また変わるでしょう (takeda)
2009-01-06 08:09:38
Watching the stars till they're gone
Like an actor all alone
Who never knew the story he was in
Who never knew the story ends
Like the sky reflecting my heart
All the morning begins I'll read last line

In endless rain I've been walking
Like a poet feeling pain
Trying to find the answers
Trying to hide the tears
But it was just a circle that never ends
When the rain stopsI'll turn the page
The page of the first chapter

Am I wrong to be hurt
Am I wrong to feel pain
Am I wrong to be in the rain
Am I wrong to wish the night won't end
Am I wrong to cry
But I knowIt's not wrong to sing the last song
Cause forever fades


When the morning begins
I'll be in the next chapter
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