阪堺電車177号の追憶 山本巧次 著 早川文庫
第6回大阪ほんまもん大賞受賞作。図書館で借りて電車の中で読み終えた本でした。大阪で唯一残っている路面電車、阪堺電車の中でも現役最古のモ161形177号がモデルの連作小説集。モ161形177号は昭和8年から現在までまだ現役で走り続けている路面電車ですが、この小説の中では、最後に引退することになります。177号自らが一人称の大阪弁丸出しのしゃべり口調でどんな時もこの路線を走り続けてきて、その目で見たり感じてきたことを交えながら沿線住民のそれぞれの時代を生きてきた人々の悲喜交々の人生やちょっとした事件を描いた小説でした。それぞれの章は独立した話になっていました。登場している人々がそれぞれの章で年を重ねながら世代をまたいで繋がっていました。その人々の繋がりをも177号はずっと見守りながら長年走り続けてきたのでした。最後のエピローグの章で全部廃車にならずに済んだ177号が自ら本根を語っている箇所がありました。それを読むと大阪ならではの表現だったので笑ってしまいました。エピローグの最後の文章、177号自身が笑っているように小さな子供に見えていたことや177号を通じて繋がっていた人々が時を超えてどこかで繋がり続けてきて、皆が177号とともににっこり笑っているというシーンを想像する文章が一番印象に残りました。177号を通じて全く知らない同志だった人々があることがきっかけで心を通じ合わせて行ったという経緯をこの最後の章で思い出し、ほのぼのとした温かさという余韻を感じさせる終わり方でした。177号の人生を人の人生に準えると人の一生も多くの人々が最後にはにっこりと笑ってしめくくれるような穏やかな終わり方になるといいのになあと思いました。この世に存在する人間以外のすべてのものが一人称で人間とは違った目線で語ってみたら人間だけが一番なのではなくて、絶えず人間が作りだしてきたものも人間と同じように大切なものの一員であるという真実に今よりもっと多くの人々が気づくようになるのかもしれないなあと思いながら読んだ本になりました。路面電車のある風景を眺めていると人々の心にも潤いや心の穏やかさをもたらされるようになるのではとも思った本でした。今までに路面電車がまだ通っている日本の街や世界の街を何箇所か訪れてみたことがありました。路面電車が人々の生活の一端に溶け込んでいる街の情景を思い出すと活気がある街が多かったように思いました。阪堺電車はいつまでも残っていて欲しい路面電車です。
第6回大阪ほんまもん大賞受賞作。図書館で借りて電車の中で読み終えた本でした。大阪で唯一残っている路面電車、阪堺電車の中でも現役最古のモ161形177号がモデルの連作小説集。モ161形177号は昭和8年から現在までまだ現役で走り続けている路面電車ですが、この小説の中では、最後に引退することになります。177号自らが一人称の大阪弁丸出しのしゃべり口調でどんな時もこの路線を走り続けてきて、その目で見たり感じてきたことを交えながら沿線住民のそれぞれの時代を生きてきた人々の悲喜交々の人生やちょっとした事件を描いた小説でした。それぞれの章は独立した話になっていました。登場している人々がそれぞれの章で年を重ねながら世代をまたいで繋がっていました。その人々の繋がりをも177号はずっと見守りながら長年走り続けてきたのでした。最後のエピローグの章で全部廃車にならずに済んだ177号が自ら本根を語っている箇所がありました。それを読むと大阪ならではの表現だったので笑ってしまいました。エピローグの最後の文章、177号自身が笑っているように小さな子供に見えていたことや177号を通じて繋がっていた人々が時を超えてどこかで繋がり続けてきて、皆が177号とともににっこり笑っているというシーンを想像する文章が一番印象に残りました。177号を通じて全く知らない同志だった人々があることがきっかけで心を通じ合わせて行ったという経緯をこの最後の章で思い出し、ほのぼのとした温かさという余韻を感じさせる終わり方でした。177号の人生を人の人生に準えると人の一生も多くの人々が最後にはにっこりと笑ってしめくくれるような穏やかな終わり方になるといいのになあと思いました。この世に存在する人間以外のすべてのものが一人称で人間とは違った目線で語ってみたら人間だけが一番なのではなくて、絶えず人間が作りだしてきたものも人間と同じように大切なものの一員であるという真実に今よりもっと多くの人々が気づくようになるのかもしれないなあと思いながら読んだ本になりました。路面電車のある風景を眺めていると人々の心にも潤いや心の穏やかさをもたらされるようになるのではとも思った本でした。今までに路面電車がまだ通っている日本の街や世界の街を何箇所か訪れてみたことがありました。路面電車が人々の生活の一端に溶け込んでいる街の情景を思い出すと活気がある街が多かったように思いました。阪堺電車はいつまでも残っていて欲しい路面電車です。