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JFK暗殺事件の真相――オズワルド単独犯行説の虚構を暴く 43 リンドン・B・ジョンソンの証言

2018-06-26 | JFK暗殺事件について
 このように、後方からの発砲に射撃位置の隠蔽処理が行われていたとすれば、これまで見てきたアルトジェンズの写真における奇妙な状況も、無理なく説明がつく。
 前に紹介したレーンの著作におけるF・プラウティの序文には、銃撃の瞬間を語ったジョンソンの言葉が、次のように記されている。


 暗殺が起きたダラスでのパレードでは、ジョンソン自身、ケネディからわずか三台後方の車に乗っていた。彼は弾丸が頭上をかすめるのを聞いたという。(レーン『大がかりな嘘』邦訳17ページ)


 残念ながらソースは不明だが、後年のジョンソンの言葉によるものに違いない。プラウティが根拠のない記述をするとは考えられない。「弾丸が頭上をかすめるのを聞いた」――これはアルトジェンズ写真をもとにした本稿の推理と一致する言葉である。

 ジョンソンは、ウォーレン委員会に対する公式の証言で、はっきりと「"explosions"(=破裂音)を聞いた」と述べた。つまり、現場で耳にしたのは発射ガス音という一般的な意味での「銃声」だったと明言している。
 しかし上記の言葉はそれと矛盾する。この言葉は発射ガス音としての「銃声」ではなく、頭上を擦過する銃弾の衝撃波ないし飛翔音だけを聞いたことを意味するからである。

 アルトジェンズの写真で、シークレットサービスの車両上において進行方向「右側」のステップに立つ人物が振り返っているのが、後ろの副大統領車で「右側」に座るジョンソンだけが頭を下げているのと、位置的に対応していることに注目したい。これはそれぞれの車両の右側を、音を立てて弾丸が瞬時に通過していったことを示している。
 さらにその先では、シークレットサービスらが彼から見て右を、白バイ警官が反対に左を振り返っており、銃弾が彼らの中間を通りすぎて大統領に向かったことが見てとれる。


※ジョンソン、シークレットサービスそして白バイ警官の反応

 繰り返すが、これは現場に鳴り渡った発射ガス音への反応では決してない。ダルテックスビルそして教科書倉庫ビル直下にいる観衆がすべて無反応なことは、それを物語っている(過去記事参照)。

 このように、ジョンソンや後方を振り返っている人々が、至近を通過する弾丸のソニック・ブームないし飛翔音に反応しているのは明白である。
 しかし、それはこの写真のずっと上方に位置する教科書倉庫ビル東南角(この写真に写っている角)6階からの銃弾によるものではあり得ない。それらの人物の誰一人として「発生源」とされる後上方を見上げていないからである。

 本稿では、この事件の第一の狙撃位置が背後のダルテックスビル2階だったと推測してきた。反応を示しているシークレットサービス、白バイ警官及び観衆らの視線が全てその辺りに集中しているのに加えて、狙撃位置から車上の大統領を狙った射線との距離が、彼らだけに現れた咄嗟の動作の理由を説明しているからである。
 これは推測と言うよりも、彼らの一見奇妙な反応の理由を唯一合理的に説明するには、そう考える以外にないというにすぎない。他にこの写真の状況の説明がつくならぜひご教示願いたい。


※上空から見た「第一の狙撃位置」からの射線

 そして車上のジョンソンもまた、ダルテックスビルと大統領を結んだ射線のすぐそばに位置している。たしかに車上右側に位置する彼は「弾丸が頭上をかすめるのを聞いた」ことだろう。
 彼がかがんで下を向いているのは、頭上を行く弾丸から発せられた音への反応だったのだ。つまり、ジョンソンが下を向き、それ以外のすべての反応が真後ろ振り返る動作なとなっているのは、射線との位置関係による違いだと考えられる。

 なお、この写真の場面はザプルーダー・フィルムでほぼ255コマ目と同定されている。大統領の上背部被弾はおおむね205コマ目前後と推定され(過去記事のとおり)、その間隔は50コマ。つまりこの写真は、彼らの反応を引き起こした音響の、少なくとも約2.7秒後の状況を写し取っていることになる。
 狙撃時点での車列の速度は時速18キロ程度と推測されているという。だとすれば、これらの人物の反応は、写真の位置よりも車列が13メートルほど後方にあった時点で開始していることなる。そのことに留意願いたい。

 また、この射線をそのまま延長すると、上述の観衆・テーグを傷つけた縁石の弾痕に行き着く。つまり、狙撃が大統領の頭部を上方にミスした場合、弾丸はリムジンのフロントガラス越しに、真っ直ぐそこに向かうことになる。ダルテックスビルからの発砲の事実は、この弾痕もまた裏付けている。
 そしてその弾痕の奇妙な浅さ・小ささは、それがライフル弾によるものではあり得ないことを示しているのであった。

 改めて、第一の狙撃位置がダルテックスビル2階であり、なおかつその銃撃には弾薬のエネルギーを限定する減音措置がとられたのだとすれば、全てのつじつまが合う。この事件の知られざる焦点は、明らかにダルテックスビルにある。

 そして、ジョンソンや振り返っているシークレットサービスらのすぐ近くにいる、車上の他の人々の奇妙な無反応ぶりは、弾丸の通過音(衝撃波ないし飛翔音)の聞こえる範囲が限られているのに加えて、走行中の雑音によって通過音がかき消されてしまうからだと推測される。

 車列の進行速度は上記のとおり時速18キロ程度。車上の人物に風切り音が聞こえる程度の速度であっただろう。
 あくまで推測であり、検証を要するものの、射線からわずかに離れただけで、ジョンソンに聞こえた音が夫人らに聞こえなかったのは、そう考えるとさほど不思議ではない。

 つまりジョンソンは、頭上を飛び去る第一の狙撃位置からの銃弾のソニックウェーブないし飛翔音を、周囲の人物の中で唯一感知し(前席のヤングブラッドは写っていないのでここでは省く)、とっさに頭をかがめたのである。
 射線近くにいた彼だけが、元軍人としての経験から素早く反応した――この銃撃に関してジョンソンが何も知らなかった場合、この写真の状況は、確かにそれ以外には説明が難しい。
(といっても彼は元海軍将校であり、軍歴の大部分は偵察機上の偵察員であったが)

 しかし、ジョンソンがもし暗殺を予期していたのなら、話は全く別である。
 仮にそうだとすれば、車上で彼だけが銃弾に反応していること、しかもこの写真のなかで唯一「銃弾を避ける反応」をしていることは、当然だったことになる。

 彼の反応が起こったと見られるのが、この写真の3秒弱前、カーブをいく車両がこの写真より13メートルほど後方にあった時点であったことに、改めて注意したい。
 左カーブ上にあった副大統領車は、ダルテックスビルから大統領への射線に対し、より遠い位置にあった。その時点では、ジョンソンと隣の夫人らとの間に、銃弾の通過音の聞こえにさほどの差異が生じるとは思えない。

 つまり、この写真によれば、彼は暗殺に関する事前情報を得ていた可能性が高い。そしてそれは、狙撃位置や射撃方法までも含む具体的な情報だったと考えられる。
 その可能性は後述したい。


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