オズワルドによる射撃自体にも、同様以上に疑惑が満載である。
まず、ごく短時間での三連射の困難性という問題がある。この事件で散々取り上げられてきている問題だが、この記事でも簡単に触れておきたい。
ここでは、イタリア製の「カルカノM1891/38」という、原型は19世紀末にまで遡る古い軍用ボルトアクション(手動)のライフルを用いていること、しかも径の小さい日本製の安物のスコープで照準していることが重要である(当時はまだ日本製=粗悪品という認識が一般的だったようだ)。
映画「JFK」にて、ケビン・コスナー扮するギャリソン検事役とその部下が現場で再現していたとおり、発射するごとにボルトハンドル(槓桿)を操作して排莢・次弾装填を繰り返さなければならない。
自動小銃と異なり、一旦照準を定めても、射撃後はボルト操作のためその都度アイピースから目を離すこととなる。
※映画「JFK」より、教科書倉庫ビル6階からの射撃再現のシーン
実弾を装填せず再照準も度外視した、ボルト動作だけの映画での再現でも、時間的にオズワルド同様に連射することはまず不可能とされていたが、実際の射撃では反動を処理した上で、再度狭いスコープの視野に目標を捉え、エイミングをし直す必要があるのだ。
加えて、高圧の発射ガスにより膨張した薬莢の薬室への張り付きも生じる。
手抜きのない戦争映画では再現されているように、ボルトアクション・ライフルの操作では、ボルトハンドルの操作は必ずしもスムーズにはいかず、ときにガチャガチャと前後したり、下から叩くようにハンドルを起こしたりする必要がある。
下の動画でも見られるとおり、現代の実包を用いても、頻繁にボルト操作に引っかかりが生じるのがわかる。
※カルカノ・ライフル射撃動画(Youtube)
前述の発射ガス音の問題や、速射―再照準のための反動処理、さらにこのスムーズなボルト操作を考慮すれば、100メートル以内というライフルとしては比較的近距離の目標を狙うこの状況では、発射薬を減らした弱装弾を用いるのが有効だったと考えられる。
しかし、この公式説によればそうした事実が存在しないのは明らかだ。
オズワルドが用いたとされるカルカノM1891/38の弾倉は、連続射撃する場合には6発まとめて装弾子を用いて給弾しなければ作動しない古いタイプのものである。このため、彼が現場に残したライフル内には、3発の未使用実包が残っていたとされる。
政府公式調査であるウォーレン報告書は、残弾に発射薬の減量といった重要な事実があれば必ず漏らさず記載する。しかし同報告書はオズワルドの用いた実包について、単に一般的な銘柄のものだったと記しているのみである。
※カルカノ小銃で用いられている装弾子(クリップ)。この銃が一般的なライフルと異なり、6発を込めなければ連続射撃ができない特殊な構造となっていることがわかる。
オズワルドは通販で買った旧式のボルトアクション・ライフルと粗悪品とされるスコープ、そして通常の威力の実包という条件で、この難しい射撃を遂行する必要がある。
不可解なことに、彼は装填済みの銃で時間をかけて照準できる最も狙いやすい初弾を立木越しに撃ってミスしている。その問題はあとで見ていきたい。
そしてその後わずか数秒の内に、ボルト操作及び再照準を伴う困難な二発目・三発目で移動目標にヒット、特に最も難しいはずの三発目でヘッドショットを決めている。
この二発目・三発目に関してウォーレン委員会による調査でも再現が難しかったようだが、ソ連行きの前に海兵隊に所属していた事実から「決して不可能ではなかった」ということにされているようだ。
確かに一発ならともかく、二発を命中させたということは、それが単なる偶然ではなかったことを示している。
したがって公式説を真とするなら、オズワルドがトップクラスの技能を持った射撃手であることを前提としなければならない。しかしそうだとすると、矛盾する事柄が続出してくる。そのことをさらに見ていきたい。
この事件の「奇跡的確率」が「無音射撃」とこの「驚異的技量」だけなら、苦しくとも何とか誤魔化しがつくかもしれないが(現にこれまで五十数年間誤魔化されてきたが)、さらにありえない確率の現象がいくつも続く。
それがこの事件の興味が尽きないところであり、また数多の陰謀論を産み出している所以でもある。というよりも、公式説がこの粗雑さでは陰謀論が噴出するのがむしろ自然というものだ。
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