南予地方の秋祭りには御車(おくるま)とか練り車(ねりぐるま)と呼ばれる人形屋台が各地で登場する。三崎、伊方、保内、明浜、吉田、御荘の秋祭りで今でも見られるし、かつては宇和島や八幡浜、宇和などでも出ていた。江戸時代後期の宇和島一宮祭礼で取り入れられて、それが起点となって各地に伝播したもので、旧宇和島藩、吉田藩領内にて見られる屋台の形である。ただ、地元では屋台とは呼ばない。山車(ダシ)ともいわない。だんじりともいわない。これをどのように総称するかは悩むところであるが、人形屋台と呼ぶのが適当だろう。南予の四つ太鼓を、太鼓台もしくは布団太鼓と呼ぶのと同じような括り表現である。他地域との比較をするためにはこれらの呼称を採用するのがいいのかもしれない。これは、今朝の10月22日付愛媛新聞コラム四季録で、胡光さんが「山車という方言」という明快な文章を掲載されたが、むやみやたらに「山車」を使うべきではないとの指摘で、自省させられる内容であった。南予の場合、御車は「人形屋台」、四つ太鼓は「太鼓台」という括り用語でとらえるのが適当だろうかと思ってみたが、地元では屋台とも太鼓台とも言っていない。語彙として地元にないものを採用する難しさはあるが、この括り用語をどのように決めていくのかというのは、日本各地の屋台行事の分布と地域差を明快にする事からはじまると思う。愛媛や南予だけの問題ではなく、全国の類似屋台の比較の上で結論を導かなければいけないという、壮大な問題。「山車」の用語の乱用を慎むことから祭礼研究の進展がはかられる。胡光さんの四季録の文章はいろんなことを教えていただき、考えさせられるものだ。毎週、お祭り関係の文章が載っているが、いろんな示唆を提示されていて、楽しみであり、タメになる。ちなみに写真は伊方の御車(練り車)の人形(加藤清正)。
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