愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

今年で最後の和歌山県すさみ町の佐本川柱松

2011年08月15日 | 年中行事
紀伊民報によると、和歌山の投げ松明行事の佐本川柱松。こちらも継承の危機に直面していて、今年の柱松を最後に保存会が解散するとのこと。


http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=215248



柱松継承へ黄信号 保存会、今年で解散


 和歌山県すさみ町佐本地域で220年続く伝統の盆行事「佐本川柱松」の継承が危ぶまれている。担い手不足や材料確保の難しさが原因で、地元住民でつくる佐本川柱松保存会(浦愛一郎会長)が、今年の柱松を最後に解散することを決めた。ただ、大学生や町職員ら地域外の若者から協力の申し出もあり、地元住民は「できれば途絶えさせたくない。何とか続けられたら」と話している。


 「佐本川柱松」は高さ20メートル前後の丸太の先に、松の枝や稲わらで作った「巣」を付け、火が付いたたいまつを巣に投げ入れる行事。着火するまで続けられる。夏の夜空に火が弧を描く幻想的な行事を見ようと帰省客や見物人ら300~400人が訪れ、地域人口の2倍近くの人でにぎわう。

 江戸時代後期の1787(天明7)年から2年間、夏に疫病がはやり、多くの村人が死亡したことから、供養と無病息災の祈願のため始められたとされる。1970年代からしばらく途絶えたが、83年に「佐本親子クラブ」が復活させた。主催はいったん地元区長会に移り、90年代からは保存会が営んできた。

 保存会会員は出身者らを合わせて14人。全員40歳以上。60代と70代が8人で全体の半数以上を占めている。家族が初盆に当たる人は関われないため、年によってはさらに担い手が減る。当日朝に行われる柱松作りも人手や技術がいる。以前は参加者が持参していたたいまつも保存会が約250本作って用意している。

 また、欠かせない材料の松も松食い虫の影響で、年々確保が難しくなっている。
 そのため、昨年は取りやめになり、そのまま会の解散も検討された。昨夏から児童を引率し、旧佐本小校舎を拠点にキャンプに来ている摂南大学(大阪府寝屋川市)のクラブ「ボランティア・スタッフズ」から「柱松を楽しみにしていた子どものためにも実施してほしい」と保存会に働き掛けがあったため、保存会は6月の会員総会で、今年の柱松を最後に解散することにした。

 同クラブは、キャンプの日程に柱松を組み込み、児童に参加させる。学生は当日朝、柱松作りを手伝ったり、会場の河原の掃除をしたりする。町職員ら地域外の若者もボランティアで手伝う予定で、賛同者を呼び掛けている。

 松については一昨年から集めてきたものがあり、たいまつは保存会会員が7月に入ってから作り始めている。

 保存会の浦剛さん(68)は「昨年は地元の人も帰省する人も寂しがった。保存会の行事としては最後になるが、新たに続けていける仕組みを考えられれば」、会員最年長の白滝寛志さん(79)も「材料や人手不足など課題はあるが、伝統が消えていくのはもったいない。応援してもらえれば何とか続けていけるかもしれない」と期待している。

 摂南大卒業生で、柱松実施に向けて活動しているすさみ町のNPO「魅来(みらい)づくりわかやま」の武田真哉さん(30)は「地域の伝統文化が廃れると過疎が進む。今後も学生が協力を続けたり、地域出身者らに積極的に協力してもらえるような仕組みをつくったりし、応援していきたい」と話している。

 柱松は13日午後7時から古座川支流の平野渕である。学生は午後4時半から旧佐本小で「夏祭り」を開く。食べ物やゲームの屋台や子どもや学生らの音楽演奏がある。

 同時に摂南大学とすさみ町教育委員会が12~15日に旧佐本小校舎でキャンプを開く。学生50人、寝屋川市の小学生100人が来町予定。希望した町内の小学校4~6年生も13、14日の1泊2日で参加。柱松に参加するほか、夏休みの宿題をしたり、川遊びをしたり、肝試しをしたりする。


【たいまつを作り、柱松の準備を進める佐本川柱松保存会会員(和歌山県すさみ町佐本中で)】

(2011年08月04日更新)

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