愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

選択縁としての「地域」

2003年03月18日 | 民俗その他
NPO法人庚申倶楽部に入会することで、私が興味を持った点は、先に挙げた庚申信仰についてだけではない。NPOによる文化遺産の継承について考えさせられることが多い。私は博物館に勤務しながら、いかに歴史や文化に関する成果を地元に還元し、啓発できるかを模索しようと努めているつもりである。民俗学に興味があるので、若い頃は、地域づくりに携わる人達とできるだけ多く交流を持って、スムーズに地元の調査ができるようになれば・・・との思いだったのだが、「地域」の崩壊を目の当たりにするとともに、逆に「地域づくり」をしようとしている人達の熱意を見ていると、崩壊している「地域=地縁」とは違って、「地域=選択縁(自発縁)」の可能性を感じ、そこに21世紀の地域の在り方を考えさせられる。まさに「地域」は自明のものではなく、「つくる」ことをしないと存在しないものという考えである。
このような21世紀の地域の在り方を考える上で、NPOの運営による文化継承、地域づくりがヒントになると思う。他者的な言い草で申し訳ないが、県内では庚申庵倶楽部はNPOの先駆けであり、今後の運営がどのように推移していくのか見てみたいのである。
行政の立場としては、NPOに運営委託することは、財政面での支出を抑える一つの手段でもあるとも考える。NPOの立ち上げの際は協力的であっても、何年かすれば行政側の担当者も替わって、行政側が当初の理念を引き継げず、財政再建の名のもとに、NPOへの支出(委託料)も予算削減されてしまう時代が来るかもしれない。
NPO法人庚申庵倶楽部は、地域における文化遺産を、次世代に継承するための大いなる実践なので、それを観察してみたいという他者的欲求もあるし、同時に応援・参加したいとも思っている。

2003年03月18日

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