僕の感性

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古い大工の落書き

2008-07-30 21:20:35 | 歴史
鹿児島県の北部、熊本県との県境に位置する大口市に、『郡山八幡神社』という神社があります。建立は建久4(1193)年と言われ、京都の金閣寺より古い歴史を持ち、室町および桃山形式の手法と琉球建築の情緒が見られる神社で、国の重要文化財に指定されています。現在の本殿建物は、昭和29(1954)年に国の手で復元修補されたものですが、復元修補の際に非常に珍しいものが発見されました。それは、本殿北東の柱貫の先端に久しく釘付けにされ塗り込められていた木片の裏に書かれた、「座主が一度も焼酎を飲ませてくれない。」という内容の落書きです。これが、わが国における『焼酎』という文字の初見であり、今から四百数十年前の室町時代に、すでにこの地に焼酎が普及し、庶民に飲まれていたことが伺えるのです。
発見された木片には、永禄二年と記され、1559年にかかれた物です。「こす」とは方言で「ケチ」という意味。「座主」とは寺務を統括する主席の僧職のことです。
「社殿を修復するとき座主がたいそうケチで一度も焼酎をのませてくれない。えらい迷惑なことだ!」と訴えています。南九州では、上棟式とかお花見とかの祝い事や神事の寸志には決まって焼酎が使われてきました。焼酎一杯がコミュニケーションの潤滑油としての役割をなしていました。
この木片には、棟梁のやるせない嗟嘆が切々と訴えられています。


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