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僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

立原道造 晩秋

2008-11-14 21:51:21 | Weblog
晩秋

あはれな 僕の魂よ
おそい秋の午後には 行くがいい
建築と建築とが さびしい影を曳いている
人どほりのすくない 裏道を

雲鳥を高く飛ばせている
落葉をかなしく舞はせてゐる
あの郷愁の歌の心のままに 僕よ
おまへは 限りなくつつましくあるがいい

おまへが 友を呼ばうと 拒まうと
おまへは 永久孤独に 飢ゑているであらう
行くがいい けふの落日のときまで

すくなかったいくつもの風景たちが
おまへの歩みを ささへるであらう
おまへは そして 自分を護りながら泣くであらう



この詩の発想はリルケの「秋」に似ている。秋はすべてに落下があり、孤独へと落ちていく観念は終末論に近いものがある。
ただリルケは落下を優しく両手で支えるものを「神」に見出したのに対して、道造は無常観しか見ていないことである。
空ろな希望と諦念が、道造の体を覆いつくし、あるがままの情景に身を任せているように思える。そして
道造の孤独は永久的に孤独であり、生の意識を知覚する状態に等しいように思う。


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