ここではすでにお亡くなりになられた、茨木(イバラギ)のり子さんの詩をとりあげる。たしか大阪出身で、わたしには童女という印象が強いのだがどうだろうか。彼女は、どうやら生涯、独身だったのか。今回は二編で、茨木さんが大東亜戦争の若い頃に作られたものか、ここでは時代背景を超越して少女というか、“乙女の青春”というものを見事に表現したとおもう。
乱暴な話だが、この書き込みは、一切、文献や経歴を資料にて参照したり博引傍証せずに、今まで味わってきた詩想そのものと、今現在のわたし自身の記憶のみで記していく。正確は期していないので、どうか、そのつもりでお読みいただいたり、鑑賞をお願いしたい。
「一人は賑やか」 (詩華集「おんなのことば」より)
一人でいるのは 賑やかだ
賑やかな賑やかな森だよ
夢がぱちぱち はぜてくる
よからぬ思いも 湧いてくる
エーデルワイスも 毒の茸も
一人でいるのは 賑やかだ
賑やかな賑やかな海だよ
水平線もかたむいて
荒れに荒れっちまう夜もある
なぎの日生まれる馬鹿貝もある
一人でいるのは賑やかだ
誓って負けおしみなんかじゃない
一人でいるとき寂しいやつが
二人寄ったら なお淋しい
おおぜい寄ったなら
だ だ だ だ だっと 堕落だな
恋人よ
まだどこにいるのかもわからない 君
一人でいるとき 一番賑やかなヤツで
あってくれ
「問い」
ゆっくり考えてみなければ
いったい何をしているのだろう わたくしは
ゆっくり考えてみなければ
働かざるもの食うべからず いぶかしいわ鳥みれば
ゆっくり考えてみなければ
いつのまにかすりかえられる責任と命の燦
ゆっくり考えてみなければ
みんなもひとしなみ何かに化かされているようで
いちどゆっくり考えてみなければ
思い思いし半世紀は過ぎ去り行き
青春の問いは昔日のまま
更に研ぎだされて 青く光る