猿八座 渡部八太夫

古説経・古浄瑠璃の世界

説教源氏節との初交流③

2011年09月21日 14時58分45秒 | 調査・研究・紀行

甚目寺があるのは、現在「あま市」である。道すがら「晴明塚」という道標を目にしたので、松田さんに尋ねてみると、やはり、安倍晴明の塚であるという。さっそく尋ねてみた。謂われは、「晴明が祈祷して繁茂していた雑草を取り払い農民を助けた。」という話である。

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また、座員の話のうちに、篠田小学校で「葛の葉」を演じたという話があり、おや?と思って調べて見ると、甚目寺の隣に篠田という町があり、なんと、「葛の葉稲荷社」が祀られていることが分かった。和泉の信太から勧請されたとの伝承がある。残念ながら、台風15号が接近しており、ここを尋ねることはできなかったが、説経が伝承されたこの土地はなるほど、説経にふさわしい土地であるということがよく分かった。


説教源氏節との初交流②

2011年09月21日 14時34分31秒 | 調査・研究・紀行

甚目寺の源氏説経節もくもく座が甚目寺小学校で公演するというので、あつかましくも観劇させていただく。演目は「小栗判官照手姫 貞女鑑実道記 本陣入り小萩説話の段」、薩摩派の「小栗判官一代記 二度対面の段」の冒頭部分、萬屋長右衛門のチャリ場といわれる部分を約30分に拡大して1段を構成しているといった風情である。小萩(照手)と長右衛門の細かい遣り取りが分かり易く、かつ面白く作られている。(大人の笑い)語りは大変繊細で柔らかく情感を込めている。三味線は、二上がりなので、どことなく薩摩と似たような指遣いも感じるが、成る程「新内」らしい手が使われている。人形自体は全体で60㎝ほどと小さいが、基本的にはこれを三人で遣い、非常に細かい所作を実現しており、都会的に洗練された動きがあるように思われた。驚いたのは、三人遣いにこだわらす、場面の必要に応じて、一人で遣ったり、また、いきなり手がにゅうっと出てきて複数で操ったりと、さまざまな工夫を凝らして演出している点である。また、蹴込みの幕2間は、台に取り付けられているので、その上に、演出上の小道具を並べることができ、人形を座らせておくこともできるようになっている。つまり、源氏の人形は、置き去りから3人遣いまで、めまぐるしく操りを変化させて、様々な演出を凝らすことができるようになっている。さらに、奥の御殿は回転襖と幕になっており、回すことや引き抜くことでスピーディーな場面展開を実現していた。感心したことは、もくもく座のだれでもが操り、だれでもが語り、だれでもが三味線を弾くことができるという話である。この貴重な人形操りも、一度は途絶え、20年ほど前に代表の松田さんたちの手によって再興させたというから、薩摩派の歴史とも似通っており、心から応援したいものだと思った。

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説教源氏節との初交流①

2011年09月21日 13時59分31秒 | 調査・研究・紀行

甚目寺に伝承された「源氏節」とはどんな説経なのか、名古屋に来たついでに、甚目寺を訪ねた。あま市甚目寺歴史民俗資料館では、源氏説経節の古い正本や残された頭を閲覧させていただいた。演目としては、小栗、三荘太夫をはじめ薩摩と共通する演目が多いが、知らないものもあった。源氏説教の太夫は「岡本某」を名乗るが、大変興味深かったことは、「説教」ではなくて、どれも「説経」とあり、しかも、「説経祭文」と書かれていることである。よくよく聞いてみると、創始者の岡本美根太夫は江戸生まれで、新内を使って説経祭文を語ったのが始まりというから、薩摩派の創始とかなり似通っていることを始めて知った。源氏節は関西系の古い説経を残しているのかと思いこんでいたが、間違いであった。また、源氏を名乗ったのは、名古屋で人気のあった平家琵琶に対抗してのことであるというから、どこぞの薩摩と若松を思い起こさせ、思わず失笑してしまった。写真はもくもく座の代表松田史子さん。

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豊田市市制60周年記念 農村舞台アートプロジェクト公演

2011年09月21日 11時52分20秒 | 公演記録

8月18日(日)愛知県豊田市中金にある岩倉神社農村舞台にて、越佐猿八座による「信太妻第三子別れ」が演じられました。演じた内容は、サハリンと同様ですが、操りは4人という最小部隊、太夫の私と、三味線の惹と合計6名で参加しました。この日は天気に恵まれましたが、大変に蒸し暑く、蚊の大群に悩まされました。人形を一体忘れるというアクシデントもありましたが、あり合わせの材料で、たちまち人形を作ってしまうという八郎兵衛師匠の神業も発揮され、さすがは、歴史ある農村舞台です。ホールでやるのとは違って、語りにも降りてくるものがありました。久しぶりに憑いた語りが小気味よかったです。お世話になった八木議員様はじめ、舞台監督の岡田様、豊田市文化財団に皆様には深く感謝申しあげます。

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