猿八座 渡部八太夫

古説経・古浄瑠璃の世界

文弥人形 野浦双葉座 東京公演

2013年11月17日 11時26分48秒 | 調査・研究・紀行

佐渡の文弥人形は十座ほどはあるはずですが、それらを事細かく見て廻るのは大変
なことです。平成21年に、佐渡文弥人形大会が開かれて以来、人形座が一堂に会する機会は無いようですが、
この4年前の文弥人形大会では、

佐和田の松栄座(ひらかな盛衰記)
野浦の双葉座 (門出八島)
相川の文楽座 (一谷嫩軍記)
畑野の真明座 (山椒太夫)
大崎の大崎座 (天神記)
羽茂の大和座 (ひらかな盛衰記)
金井の常磐座 (出世景清)
説経人形廣栄座(小栗判官)

という、豪華な顔ぶれが揃って、それぞれの人形を駆使しました。改めて、ビデオを
見直してみると、どの座も素晴らしい遣い手と太夫が揃っているなあと感心します。
特に、その中でも、野浦双葉座の太夫、山本宋栄氏は、三味線が上手で、節回しがしっかりしています。

その双葉座が、東京に来るという情報を得たのは、つい2週間程前のことで、それも
ネットでうろうろしていてのことでした。

『第5回 よみがえれ!トキ 佐渡「文弥人形」上演会』

早速出掛けることにしました。演目は、文弥人形では珍しく、
「奥州安達ヶ原三段目」、いわゆる「袖萩祭文」でした。

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今回、宋栄太夫は、民謡出身であると伺って、その奏法の巧みさを納得しました。
毎週、稽古を欠かさないという双葉座の人形は、太夫の息とぴったりでした。
座員が全員、農家であり、年に一度の芝居の為に一年を掛けて稽古するという、
地芝居本来の形を持っている貴重な文弥人形です。

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双葉座の皆さん。中央が、座長の北野源栄氏。右から二人目が太夫の山本宋栄氏。


洛中洛外図(舟木本)の世界  国立博物館京都展

2013年11月17日 00時01分05秒 | 調査・研究・紀行

猿八座が、阿弥陀胸割(あみだのむねわり)を初演したのは、昨年、平成24年の話だが、
それが、本当に演じられていたのは四百年前の慶長年間のことである。ビデオも録音も
無い四百年前の説経が、どんな人形操りだったのかを、古活字本以外に知るすべは無い。
しかし、この「胸割」を、四百年前に、絵に描いた人がいたのだった。
岩佐又兵衛という方だ。
洛中洛外図は、e国宝で閲覧ができるので、以前、上越教育大学の川村先生に教えて戴いてから
デスクトップに愛用していたが、とうとう実物を見る機会が訪れたのだ。
今、上野の国立博物館で開催されている特別展京都。各種の洛中洛外図その外の襖絵が
展示されているが、舟木本はやはり圧巻であった。その躍動感は、他の絵では味わえない。
もう足は釘付けであった。幸い、双眼鏡を用意していたので、ややさがった位置から、
じっくりと俯瞰させていただいた。人波を掻き分けて、間近くで見るのもいいけれど、
そもそも鳥瞰図であるこの絵図は、遠目に観察するのも面白く、時間を忘れて、タイムスリップをした。
やはり実物は凄い。きっと、四百年前のこの世界に、自分は居たな。この中のどれかが
自分だなと、探し回った。むう、それらしい、変なおやじが居る居る。
こんなに夢中になれる絵が外にあるだろうか。とにかく面白い。

Photo

e国宝洛中洛外図(舟木本)右双5扇部分:人形浄瑠璃小屋の場面

左が、「むねわりあやつり」右が、「山中ときわあやつり」と書き込んである。
ここは四条河原の部分で、外に「かぶき」とあって、遊女歌舞伎の図があるが、
そこには、演目の記載が無い。つまりこの時代、ストリーを持った芝居は、まだ説経が
中心だったのだろうと窺える。