その薬を服用した人たち(平均年齢61歳)を平均して4.6年間ほど追跡したところ、なんらかの原因で死亡した人の割合が3.1%でしたが、年齢、生活習慣、検査値などが同じで薬を飲まなかった人たちの死亡率2.8%に比べ、高い傾向が認められたのです。
この論文の中では、死亡原因についての分析はなされていませんでしたが、脳出血などの副作用がわずかながら増えていたと報告されており、死亡率を高めた要因の1つだったと考えられるようです。
EPAやDHAが体によい脂肪酸であるのは、疑いようのない事実です。ではなぜ、こんな結果が出てしまうのでしょう。これらの現象は、実は理論的に予測されていたことでもあり、特定の成分を必要以上に、かつ大量に口にすることの弊害が実証された形、とも言えるのです。
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岡田先生の著書『効く健康法、効かない健康法』も発売中
古来、人類は魚をまるごと食べる生活を続けて遺伝子を育んできました。魚の効能は、そこに含まれる(未知のものも含めた)さまざまな成分が総合的に作用してのものといえます。つまり、特定の栄養素だけを取り出して摂取しても、魚をまるごと食べることで得られる恩恵を享受できるとは限らず、それどころか、場合によっては健康被害さえ生じてしまうというわけです。
食べたものは、すべて胃腸の中で消化酵素によってバラバラに分解され吸収されます。たとえばご飯は、そのまま吸収されるわけではなく、主成分の炭水化物がぶどう糖にまで分解され、目に見えない分子となって血液中を流れていきます。
おコメには炭水化物だけでなく、食物繊維、ビタミン、ミネラルなども含まれていて、それらの成分が総合的に健康増進に役立っているのです。
EPAやDHAに限らず、ビタミンやミネラルなどサプリメントの多くについて、動物実験や試験管内で健康に良いことを示すデータが得られているのは事実。ただ人間の体は複雑ですから、試験管内の実験結果がそのまま当てはまるわけではありません。そのことを忘れないようにしてください。
「○○は健康にいい」と世間で言われていることの中には、根拠のない昔からの言い伝えや単なる思い込み、あるいは巧みなビジネス戦略で流行しただけのものが少なくありません。宣伝文句に振り回されることなく、いろいろな情報を吟味し、健康に役立てたいものですね。
不足したビタミン、ミネラルはサプリメントで摂るのがいい?→ ×
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青魚の栄養素であるEPAやDHA。サプリメントで摂取しても、意味がないかもしれません(写真:しまじろう / PIXTA)
いまやビタミン、ミネラルなどのサプリメントは健康補助食品としてすっかり定着し、「グルコサミン」「プラセンタ」などの大ヒット商品も登場。まさに百花繚乱の様相を呈しています。
「不足している栄養素はサプリで補っておけばOK!」と考え、実践している方も多いと思いますが、本当に「OK」と言えるのでしょうか。いくつかの論文を紐解きながら、検証してみたいと思います。
青魚などに含まれることで知られるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)も、サプリの定番となった栄養素のひとつ。これらは、多価不飽和脂肪酸、あるいはオメガ3脂肪酸とも呼ばれ、血液をサラサラにする(血栓症を予防する)作用や、老化や発がんの原因となる過酸化反応を抑える作用があります。
これらサプリメントの効能については、世界中で多くの学術調査が行われてきましたが、米国のある研究者が、その中から厳選した10編の論文について比較・分析をしたのものがあります(参考文献 :Clin Cardiol 2009;32:365-72.)。その論文というのは、いずれもボランティアを公平に2群に分け、一方にEPAやDHAが配合されたサプリメントを飲んでもらい、他方は飲まないという約束をした上で、1年以上追跡を行ったという内容でした。
その結果、10の調査のうち9つまでが、両群にまったく差がなかったと報じたものだったそうです。つまりEPAやDHAのサプリメントは、飲んでも飲まなくても、健康状態に変わりがない、ということです。
それどころか、外国の医学専門誌に発表された論文によると、EPAを医薬品として大量に摂取すると、死亡率が少し高くなることもわかりました(参考文献:Lancet 2007;369:1090-98.)。
この論文の中では、死亡原因についての分析はなされていませんでしたが、脳出血などの副作用がわずかながら増えていたと報告されており、死亡率を高めた要因の1つだったと考えられるようです。
EPAやDHAが体によい脂肪酸であるのは、疑いようのない事実です。ではなぜ、こんな結果が出てしまうのでしょう。これらの現象は、実は理論的に予測されていたことでもあり、特定の成分を必要以上に、かつ大量に口にすることの弊害が実証された形、とも言えるのです。
「まるごと」食べることで得られる恩恵も
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岡田先生の著書『効く健康法、効かない健康法』も発売中
古来、人類は魚をまるごと食べる生活を続けて遺伝子を育んできました。魚の効能は、そこに含まれる(未知のものも含めた)さまざまな成分が総合的に作用してのものといえます。つまり、特定の栄養素だけを取り出して摂取しても、魚をまるごと食べることで得られる恩恵を享受できるとは限らず、それどころか、場合によっては健康被害さえ生じてしまうというわけです。
食べたものは、すべて胃腸の中で消化酵素によってバラバラに分解され吸収されます。たとえばご飯は、そのまま吸収されるわけではなく、主成分の炭水化物がぶどう糖にまで分解され、目に見えない分子となって血液中を流れていきます。
おコメには炭水化物だけでなく、食物繊維、ビタミン、ミネラルなども含まれていて、それらの成分が総合的に健康増進に役立っているのです。
EPAやDHAに限らず、ビタミンやミネラルなどサプリメントの多くについて、動物実験や試験管内で健康に良いことを示すデータが得られているのは事実。ただ人間の体は複雑ですから、試験管内の実験結果がそのまま当てはまるわけではありません。そのことを忘れないようにしてください。
「○○は健康にいい」と世間で言われていることの中には、根拠のない昔からの言い伝えや単なる思い込み、あるいは巧みなビジネス戦略で流行しただけのものが少なくありません。宣伝文句に振り回されることなく、いろいろな情報を吟味し、健康に役立てたいものですね。
不足したビタミン、ミネラルはサプリメントで摂るのがいい?→ ×
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青魚の栄養素であるEPAやDHA。サプリメントで摂取しても、意味がないかもしれません(写真:しまじろう / PIXTA)
いまやビタミン、ミネラルなどのサプリメントは健康補助食品としてすっかり定着し、「グルコサミン」「プラセンタ」などの大ヒット商品も登場。まさに百花繚乱の様相を呈しています。
「不足している栄養素はサプリで補っておけばOK!」と考え、実践している方も多いと思いますが、本当に「OK」と言えるのでしょうか。いくつかの論文を紐解きながら、検証してみたいと思います。
飲んでも飲まなくても「変化ナシ」の結果も多い
青魚などに含まれることで知られるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)も、サプリの定番となった栄養素のひとつ。これらは、多価不飽和脂肪酸、あるいはオメガ3脂肪酸とも呼ばれ、血液をサラサラにする(血栓症を予防する)作用や、老化や発がんの原因となる過酸化反応を抑える作用があります。
これらサプリメントの効能については、世界中で多くの学術調査が行われてきましたが、米国のある研究者が、その中から厳選した10編の論文について比較・分析をしたのものがあります(参考文献 :Clin Cardiol 2009;32:365-72.)。その論文というのは、いずれもボランティアを公平に2群に分け、一方にEPAやDHAが配合されたサプリメントを飲んでもらい、他方は飲まないという約束をした上で、1年以上追跡を行ったという内容でした。
その結果、10の調査のうち9つまでが、両群にまったく差がなかったと報じたものだったそうです。つまりEPAやDHAのサプリメントは、飲んでも飲まなくても、健康状態に変わりがない、ということです。
それどころか、外国の医学専門誌に発表された論文によると、EPAを医薬品として大量に摂取すると、死亡率が少し高くなることもわかりました(参考文献:Lancet 2007;369:1090-98.)。