月のカケラと君の声

大好きな役者さん吉岡秀隆さんのこと、
日々の出来事などを綴っています。

吉岡刑事物語・その20

2009年04月22日 | 小説 吉岡刑事物語






「筒井・・・、」

前方の道を見据えながら、
萩原は助手席から筒井に呼びかけた。

「なんだ?」

ハンドルを操作しながら筒井は答える。

「道まちがってるぞ、また」

また、という部分を強調しながら言った萩原の目は、
半ば据わっている。

「どこが間違ってるんだ? ちゃんと走ってるじゃないか」

筒井の運転するボルボは、まったく人気のない山間の道を走っている。
それは百人中百人が、はて?、と首をかしげたすえ、
眉間に皺を寄せながら思わず天を仰いでしまう、
要するにそれは誰の目にも絶対的に明らかに、
迷い道であった。
萩原は前方に広がる果てしのない暗闇から運転席へと視線を移し、
あからさまな呆れ顔を筒井に向けた。
我が道を行く筒井は、全く動じる様子がない。
萩原はうんざりしながら言葉を続けた。

「アクセルを踏めば車は前に走るんだよ。そうじゃなくて、
ちゃんと目的地へ向かって走ってくれよ。っていうかいつも思うんだけどさ、
なんでお前のボルボにはナビが付いてないんだよ?」

「あんなもん信用できるか。俺は俺の直感を信じてるんだ」

「そのお前の直感で、何度も路頭に迷わされたのは
他でもない俺たちなんだぞ。なぁ、ヒデ?」

萩原は首を回して肩越しに後部座席を振り返った。
吉岡は運転席裏のシートにちょこんと座りながら、
可笑しそうに二人の会話を聞いている。

「腹減ったなぁ」

ハンドルを握り締めながら筒井は話題を替えた。

「道だけじゃなくて話もそらす気かよ、筒井? 見ろよ~周りを~。
真っ暗じゃないか。どこなんだよここ?」

「そんなこと俺に聞くなよ。ここはどこなんだ、ヒデ?」

「ヒデが知るわけないだろ?」

「うるせぇな、ハギ。だいたいお前は細かいんだよ」

「筒井が大雑把過ぎるんだろ。お前の運転のおかげで
何度窮地に立たされたことか。高校の卒業式の日だってそうだよ、
あの絶対に忘れられない不動の消えぬ思い出を作ってくれたのは、
何を隠すでもなくそれはずばり君だよ」

「今頃感謝なんてするなよ」

「誰が感謝するんだよ。あの日だって式のあと、
大磯の海に行こうって車を出発させたのに、
着いたら秩父の山奥だったじゃないか。
どこをどうやったら大磯と正反対の秩父に着くんだよ?」

「その秩父の山奥で鮎の塩焼きをうめぇって涙流しながら
16本も食った挙句に腹こわしたのは誰だよ? それにな、
お前だって助手席に乗ってたんだから、
あの時に道に迷ったのは何も俺だけのせいじゃないぞ」

「お前が絶対に横から口出しさせなかったから迷っちゃったんだろう。
ちなみに訂正しておくけどさ、あの時に、じゃなくて、あの時も、だろ。
いい加減その怒涛を極める方向音痴ぶりを認めろよ」

「誰が方向音痴なんだ?」

「お前がだよ。 知ってるんだぞ、この前、秀人から聞いたんだ。
パパの車でずっと行きたかったディズニーシーに行ったら、
そこは鴨川シーワールドだったって。泣かせるなよ、子供を」

吉岡は堪えていた笑いを溜まらずに噴きだした。

「同じシーじゃないか。大して変わりないだろ、同じ千葉県内だし。
笑いすぎだぞ、ヒデ」

萩原は視線を車窓に戻し、後方に流れ飛んでいくうら寂しい景色を見て、
絶望的なため息を漏らした。

「筒井、やっぱり海じゃなくて山奥に行こうぜ。
そうすれば逆に海に辿り着けるかもしれない」

プッ、とその時オナラの出る音がした。

「うわっ、何だよ筒井っ、屁こくなよっ! くっせぇーな!」

萩原は急いで助手席のパワーウィンドーを下ろした。瞬間、
ビュ~っと凍てついた風が猛烈な勢いで車内に入り込んできて、
萩原は即効で窓を閉めた。

「確信犯だね、筒井くん?」

据わった目で筒井の横顔を睨んだ萩原の髪は爆発している。

「お前が理屈ばっかりこいているから、その上に屁を付け足してやったんだ。
男は言葉ではなく態度で示せと親父から常々言い聞かされている。
筒井家の家訓だ」

「窮地に立ったら屁をこけって? スカンク一族かよ、お前んちは」

筒井はヒーターの温度をぐいっと上げた。

「うわ、匂いが発酵するだろうっ、ふざけんなよ、筒井!」

萩原は出来るだけ体を助手席の窓に寄せて匂いから離れた。
吉岡は後部座席に横になって笑いころげている。

いつ聞いても心地良い笑い声だな・・・。

逆立った髪を手で直しながら萩原はふと思った。
人の気持ちにふっと羽をつけてしまうような笑い声を
ヒデは持っている。
草原の緑をやさしく吹いて揺らしていく
そよ風ような感覚にも似ている。
思わずもらい笑みを顔に浮かべながら、
萩原は車窓に目線を移した。
信号さえない暗い田舎道を、ボルボはひたすら突っ走っている。
不意にカーステレオから聴きなれた歌声が流れてきて、
自動的に伸びた萩原の手がステレオのスイッチを消した。

「やめてくれ、筒井。お前、いい加減、堀ちえみなんか卒業しろよ」

筒井は横目で萩原を睨んだ。

「ちえみちゃんをバカにするような言い方はよせ。女神なんだぞ、
ちえみちゃんは」

「へぇ~」

「なんだよ、へぇ~とは?」

萩原はCDをカーステレオから取り出して目の前にかざした。

「堀ちえみベストって・・・なんですか?」

「女神の最高傑作集じゃないか」

「ふざけるのは方向感覚だけにしてくれよ」

萩原は持っていたCDをポンとダッシュボードの上に投げ置いた。

「おいっ、傷がついたらどうするんだっ? 限定版なんだぞっ!」

吉岡は後部座席に横たわりながら、
二人のやりとりを黙って楽しそうに見つめている。
その眺めはいつものように、
吉岡の心をほぐすように和ませた。
約束をとりつけるでもなく、
誰かが集合の合図をかけるでもなく、
当たり前のように三人自然と集まって、
特別なことは何もせず、たださりげなく傍らにいる。
いつも三人はそうしてきた。
吉岡の母親が勝手に家を出たときも、
好きになった年上の女性がニューハーフだったと
放課後の教室で萩原が泣き崩れた時も、
可南子が結婚すると聞いて打ちひしがれた筒井が
居酒屋で酔っ払って障子を頭突きしてぶち壊した時も、
その壊した障子を直しに次の日その店に戻った時も、
萩原の妻が十歳も年下の男と突然駆け落ちした時も、
19歳の時から長年付き合って婚約した恋人と
吉岡が別れなければならなかった時も、
みんな自然とその場に一緒にいた。
三人の奏でる風景は、
昔と少しも変わらない。
変わらずに、
今この時も、
そこにいてくれる。
午後のやわらかな日差しに包まれていくような感覚に、
吉岡はそっと瞳を閉じた。
目の奥に、思い出の一風景が鮮明に浮かび上がってくる。

逃げ水の浮かんだ田舎道と、
パンクした筒井のポンコツ車。
道端に座り込んで三人で眺めた、
夏草の緑とぬけるような青空。

そうだ、あの時も、
道に迷っちゃったんだっけ・・。

「それにしても腹へったな」

目を閉じた吉岡の耳もとへと、
運転席から筒井の声が届いてきた。

「こんな田舎、コンビニだって探してもどこにもないぜ。
クマぐらいしか生息してないよ、こんなところ」

ため息をついて言った萩原の声がつづいて耳に入ってくる。

「クマが生きているのなら、人間にだって食うものはあるさ」

瞳をやわらかに閉じたまま、
吉岡は二人の会話にそっと微笑んだ。

「野生のおぼっちゃまと威名を馳せたお前ならクマ食だってなんだって
食えるだろうけどな、文明人の俺とヒデは心も胃腸も繊細なんだ。
そうだよなぁ、ヒデ?」

萩原は同意を求めるように後部座席に振り返って、そこで
地蔵のように固まった。

「寝てるよ・・」

キィーッとタイヤが路面に軋む音と共にボルボが急停止し、
筒井は後部座席に振り返った。
ころん、と子犬のようにシートに横たわって、
吉岡はすやすやと安らかな寝息をたてている。

「三秒前まで笑ってたよな、ヒデ・・」

萩原は半ば感心したように吉岡の寝顔に見入っている。

「子供みたいな顔して眠ってるよ・・」

「疲れているんだろ」

フロントガラスに顔を戻してそう言うと、
筒井は運転席のドアを開けて表に出た。
ハッチバックを開けて中から毛布を取り出し、
それから後部座席のドアを静かに開けて、
眠っている吉岡の体をそっと毛布でくるんだ。
コホコホ、と吉岡が軽く咳き込む。
筒井は毛布を掛けなおすふりをしながら、
さりげなく吉岡の首に手を当てて体温をチェックし、
そのほんの微かに赤みをおびている顔色を
確かめるように見つめた後、無言で運転席に戻り、
黙りこんだまま再び車を発進させた。

「昔からヒデの特技だったよな・・・」

シートに身を沈めながら萩原は口を開いた。

「気付くといつのまにか寝ちゃってるって」

「学生の頃はいつも夜遅くまでバイトしてたからな、ヒデは。
しんどかったんだろう、すごく。そんなこと絶対口には出さなかったけどさ。
今だって・・、」

と言った言葉を一旦切って、筒井はハンドルを握りなおした。

「いつもこうして眠れているわけじゃないんだろうけどさ・・・」

ボルボの放つベッドライドが、漆黒の夜道を前方に白く照らし出していく。
暫くの間、二人は互いに黙りこんでいた。

「どうしてヒデは刑事なんかになったんだろうな・・・」

しばらくして萩原が呟くようにポツリと言った。
筒井は黙って前方の道を見つめている。
萩原は遠くを見つめるような目を車窓へ向けた。

「どんなときだって、ヒデは人を一方的に裁量したことなんて
絶対になかったのに・・・。刑事になるなんて思いもしなかったよ・・。
変わってないけどさ、ヒデの無色透明な公正さは今も・・」

車窓の景色は、闇が何処までも真っ黒な墨を周囲に落とし、
前方へと続く道は、何処までいっても先が見えない。
萩原は視線をぼんやりと中空に漂わせた。

もし・・・・
もしヒデが別の道を進んでいたら・・・
もしヒデが刑事にさえなっていなかったら・・・
もしヒデが別の女性を愛していたら・・・
もし・・・

そこまで考えて、萩原はかぶりを振った。
そんなこと考えたって・・・仕方がない。
仕方がないくらいに、人生は、現実を曝け出す。
人生に、「もし」、なんて、ない。
そこにあるのは、
選ぶ人生と、
選ばない人生と、
選べない人生と、
選ばざるをえない人生だ。
ヒデは・・・

選んだんだ。

「変わらないさ、ヒデは」

筒井の声に萩原はふっと我に返った。

「常に自分に疑問を投げかけられるのがヒデじゃないか。
変わらないさ、ヒデの芯はこれから先もずっと」

遥か彼方に、人家らしい明かりが見え隠れし出した。
チラチラと星屑のように瞬いているその光を、
じっと見据えるように眺めながら筒井はそう言った。

「・・・ずっとって・・・ずっとなんだよな?」

隣でぽつりと萩原が問いかけてくる。

「・・・そうなんだよな、筒井?」

筒井の眉根が前方を睨むようにぐっと寄った。
道端にポツンと取り残されたように立っていた電灯が、
近づいてきたかと思うとまたすぐに後方に流れ去っていった。

「・・・そうだよ、これから先もずっとだ」

静まりきった車内に、筒井の声が錘のように沈んでいった。
後部座席に、二人のかけがえのない安らぎが
そっと静かに横たわっている。



助手席のシートの中で萩原は目を覚ますと、
辺りは濃い朝霧の中に包まれていた。
隣を見ると、両腕を胸の前に組んだ筒井が、
運転席の背にもたれて目を閉じている。
萩原は顔だけを動かして、そっと後部座席を見た。
いつの間に起きていたのか、シートに座って、
窓に頭をもたれかからせながら、吉岡はそっと静かに外の景色を眺めていた。
たらりとすべり落ちたように力なくシートの上に置かれた吉岡の掌には、
包装紙に包まれた小さな飴玉が一つ乗っている。
朝霧を見つめている吉岡の目は切ないくらいに儚げで、
声をかけたら簡単に砕けてしまいそうなガラス細工のようだった。
繊細なその姿は、手を伸ばせばすぐ近くの距離にいるのに、
しかし何故かとても遠く決して手の届かない場所にいるような感覚がして、
萩原は急に不安な気持ちに包まれた。

ヒデ、

呼びかけようとした気配に気付いた吉岡が、
すっと萩原に顔を向けた。
涼しげな目元に、やわらかな笑みがふわっと浮かぶ。

「おはよう」

穏やかなその声と一緒に、ふいに吉岡が近くに戻ってきたような気がして、
萩原は無意識のうちに安堵のため息をもらしていた。

「着いたぞ」

つづいて聞こえてきた筒井の声に、萩原は運転席を振り返った。

「よく寝たなぁ」

シートの中で大きく伸びをした筒井の目は、しかし真っ赤に充血している。
萩原は助手席のシートに体を戻して落ち着けながら、

「着いたんじゃなくて、行き止まりだったんだろう?」

と言いながら足元に置いてあるコンビニの袋の中から
缶コーヒーを一缶取り出して筒井に軽く投げた。
結局昨夜は、道中やっと一軒だけ見つけたコンビニで
大量に食べものを買い込んだ後、一晩中車を走らせた先に行きついた、
この閉鎖中のキャンプ場の駐車場で車中泊をした。
車のデジタル時計は今、朝の6時を表示している。
山の尾根から舞い降りてくる朝霧が、
周囲を白く染めながらゆっくりとした速度で谷間へと流れていった。

「寒そうだよな、外・・・」

フロントガラスの向こうに流れる霧を眺めながら萩原は言った。

「そりゃ寒かろうよ」

缶コーヒーを一気飲みした筒井が平然と答える。

「寒いと思うな」

さりげなく言う吉岡の言葉がそれにつづき、
三人三様の面持ちで車窓を見つめていた三人は、
一呼吸おいた後一斉に車外へ飛び出した。

「さびぃ~~~~~~~~」

その場で三人同時に縮みあがりながら、
しかし誰も車の中に戻ろうとはしない。

「さびぃ~な、ちきしょう!」

叫びながら筒井がコートの襟を立てる。
そんな筒井に笑いかけながら、吉岡はその肩越しにふと目を止めた。
目を凝らしながら、まるで何かの力に手引きされるように
吉岡はそのまま前方へと歩いていき、そして暫く進んでからふと足を止めた。
天を見上げる吉岡の前方に、霧のカーテンに見え隠れしながら、
峻険な岩壁が聳え立っている。
どっしりと構えたその姿は揺らぎなく、
まるで大きく無条件に懐を包み込んでくる
父性のよう威厳さを感じさせた。
畏敬の眼差しで、吉岡はその威容を暫く黙って仰ぎ見ていた。

「山は戻ってくるために登るんだ、って誰かが言ってたよな」

いつの間にか隣に並んでいた筒井が静かに話しかけてきた。
聳え立つ岩肌の果てを見上げている吉岡の瞳に切なげな色が浮かんでいく。

「うん・・・」

「もっともな言葉だよな」

「・・・・そうだね」

二人はそのまま黙って、目の前に立ち聳える山の姿を眺め続けた。

「下山祝いしておこうぜ」

ふいに聞こえてきた声に二人は同時に振り返ると、
両手にコーラの缶を持った萩原が背後に立っていた。

「お前、登りもしないのに・・・」

と言いかけた言葉をふと筒井は止めて、

「こんなさみぃのにコーラかよ?」

と言い直した。ほがらかに笑う吉岡の笑い声が不意に咳へと変わっていく。
萩原は手に持ったコーラの缶を思いっきり振ったあと、ほら、と言いながら
吉岡に向かって一缶投げた。

「うわっ」

すぐに缶を開けた吉岡に向かってコーラが勢いよく噴きだし、

「なにやってんだよ、ヒデ!」

思わず横に逃げた筒井が大笑いした。
びっくりした~と言いながら、
右手に持った缶を体から遠ざけた吉岡の姿に萩原も大笑いしている。

「お前、今なにも考えずに缶の蓋あけただろ?」

「うん・・」

萩原の言葉にちょっと困ったような笑みを浮かべながら、
吉岡はコートの袖で顔を拭った。

「今さっき目の前でハギが、マラカス振るみたいに
缶を勢いよく振っていたの見てただろう?」

「ヒデ、髪。髪ぬれてるぞ」

え? と応えながら前髪を拭こうとして、
額に傾けた右手がコーラの缶を持っていることに気付いたときには、
滝のように流れ落ちたコーラが吉岡の靴をぬらしていた。

「あ、」

筒井は更に爆笑した。

「ばっかだな、お前。なにやってんだよ」

吉岡は更に困ったような顔をしながら、

「間違っちゃったよ」

と言って笑った。

「何度やってもひっかかるんだよな~。素直すぎるんだよ、ヒデ」

可笑しそうに笑いながら言った萩原の合い向かいで、
筒井がまだ大笑いしている。

「なにやってんだよ、ヒデ」

そう繰り返し言いながら笑い過ぎて笑いが止まらなくなった顔を、
筒井はつと横に逸らした。
萩原はふと真顔に戻って筒井の顔を見た。
笑っている筒井の瞳に、涙が滲んでいる。

「なにやってんだよ・・ヒデ・・・」

筒井は顔を見られないように、二人から顔を背けるようにして言った。

「ばかだな・・・」

「・・・・うん」

頷いて、ハーフコートに飛んだコーラの水滴を手で払いながら、
吉岡はそっと静かに筒井に答えた。

「そうなんだ・・・」

ヒデ・・・、

筒井はぎゅっと拳を固く握り締めた。

「何やってんだ・・・」

何をやっているんだよ、ヒデ・・・・。

「春になったら海に行こうぜ」

思いがけず落ち着いた萩原の声に、
筒井と吉岡は同時に顔を上げた。

「今度こそ海に行くんだ、三人で」

萩原は二人に向かってはっきりそう言うと、

「道に迷うなよ、筒井」

と言って、大きく振ったもう一本のコーラの缶を二人に向けて開け放った。

「うわっ、やめろよ、ハギ!」

缶からほどばしり出るコーラから逃げるように、
筒井と吉岡はボルボに向かって走っていった。
その後を萩原が追いかけていく。
山頂からひっそりと舞い降りてくる朝霧の隙間から、
金色の朝日が差し込んでいた。
霧と光が揺れ流れる中を、
三人の姿が真っ直ぐに駆けていく。






つづく


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4 コメント

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日だまり (noriko)
2009-04-24 01:03:21
3人のやり取りに日だまりのような温かさを感じて、心が解れました。
そして、ヒデのあの屈託のない笑い声を思い浮かべたら、こちらまで自然に笑顔になってしまう・・・。

そこにいるだけで人を安心させたり柔らかな気持ちにさせてくれる力を持ってますよね。物腰が柔らかい人や優しい人はたくさんいるけど、こんな気持ちにさせてくれる人は滅多にいません。

それは、人に対する深い思いやりだけじゃなく、絶対に裏切らないとか嘘はつかない、と信じられる強さと誠実さを感じるからかな。

後部座席で寝ているヒデも

3人のこの関係がいつまでもいつまでも続きますように、と願いながらやっぱり涙が溢れました。


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そこにあるもの (風子)
2009-04-24 11:35:43

私も吉岡君の笑い声、大大大っ好きです。
いいですよね~、あの笑い声・・・。

>物腰が柔らかい人や優しい人はたくさんいるけど、
>こんな気持ちにさせてくれる人は滅多にいません。

いかにも。
かつてロシアの文豪さんが、
「笑い方はその人なりを現す」
みたいなことをどこかの作品で書いてましたけど、
ほんとにそうですよね。
あんなに邪気のない、
まっさらな真綿みたいな笑い声を持っている人って
他には知らないどす。

「信じる」という、
やもすればとても不安定になりがち気持ちを、
こんなにも確かに受け止めてくれる人って、
なかなかいないですよね。
男らしいっす。べらほうに。。。。
最高だぁ・・・・・吉岡君・・・・・。きゅぃ


この三人、私も大好きです・・・。
もうどうにも止まらなくなってしまいました・・・・。
それと、
寝顔の吉岡君も大好きですっ。んはぁ~

今回、トーンを変えすぎちゃったので、
どうかなぁ~と不安に思っていたのですが、、
最後まで読んでもらえて良かったです♪
本当は最終章の前半から2話くらい戻ったところで
最終章後編へと話をもっていこうと思っていたのですが、
なんかもう終わりに向かえなくなってしまってぇ・・・・・
どないしよう・・・・・・・・・むふ


あさってから南部の方へと旅がらすとなりやすです。
2週間ほどの旅程なのですが、旅先から戻ってきたら、
また続きを書きたいと思っております。
その節には、また読んで頂けると嬉しいです。
どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
返信する
いいですねぇ! (まーしゃ)
2009-05-13 00:37:38
この3人の関係!
友情というより、友愛って感じですかねぇ。
ただの友情だけじゃなくて愛を感じます。
本当に、ずっとずっと変わらずにいてほしいです。

気になるのは、この後の展開ですね。
こんなに穏やかな時間を過ごした後
何が待っているのか・・・??
ちょっとコワイ。
嵐の前の静けさって感じがして。。
返信する
よかったぁ~~~~~ (風子)
2009-05-13 06:35:11

この三人、気に入って頂けて、
ほんとに嬉しいです~~~
えがった~、えがったよぉ~~~~。


>友情というより、友愛って感じですかねぇ。

おぉっ!
読ませて頂いて気付きました!
そうだぁ~、そうですよね、これは愛なのですね。
三人の間にあるのは友愛なんだぁ~。。。。
うぅ、なんかとても切なくなってしまいますたぁ~・・・・。


>こんなに穏やかな時間を過ごした後
>何が待っているのか・・・??



う~~ん・・・・・・・・・・・
う~~~~~ん・・・・・・・・
う~~~~~~~~わぁ~~~~んっ!
ほんとに、どうなっちゃうのかなぁ・・・・・。
返信する

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