食品の放射性セシウムの新基準についての記事を読むことが多くなった。
我々の地域でも平成23年産米は、「屋内退避区域」「緊急時避難準備区域」ということで作付を見送られた。
平成24年産米の作付はどうなるのだろうとみんな不安がっている。
国で示された放射性セシウムの新基準は、食品1.0kg当たり500ベクレルを超えるものは出荷停止や摂取を控えることになっていたが、それが100ベクレルに引き下げられた。消費者にとっては100ベクレルでも高いと思うだろう。現実に私が「100ベクレルの食品は食べるか?」と聞かれたら「食べない」と答えるだろう。
でも、農家にとっては深刻な問題になってくる。
これまで、500ベクレル以下の緩い基準で栽培されていたのが、100ベクレル以下に引き下げられることによって、放射性セシウムを取り込みやすい野菜やくだもの、加工品の生産が難しくなるからだ。
新聞に二本松市の農家男性が怒っている記事が出ていた。
男性は、「毎日食べるわけではない、あんぽ柿やブルーベリーなどの嗜好品まで100ベクレルとすべきではない。一律の厳格化により農家は生産できなくなり、特産品が消えてしまう。」と国が農家の窮状を反映せず基準値を厳しくしたことに怒り、見直しを求めていた。確かにそれもあると思うが、果たして現在高い数値を出しているものを生産し販売しようとしても売れるのだろうか?
「この食品の放射性物質の含有量は100ベクレルです」そんな食品は誰が買うだろうか?
これまで、私の地域でも500ベクレルを超える野菜や果物は確認されている。
豊作だった柿やゆず、キウイフルーツ、クリ、キノコなどは毒性の食物として放置されたままだ。今年もそういう状況が続くだろう。でもそれらを生産して生計を立ててきた方にとっては、本当に死活問題になってくる。
私の親も小遣い稼ぎでしいたけや山菜、タケノコ等を細々と販売してきたが、それができなくなった。農作業もやる気をなくし毎日テレビばかり見ていて老け込みが早くなってきた気がする。他の地域もそうだと思うが、我々の地域の農業を支えているのは60歳以上の高齢者だ。その方たちが意欲をなくしてしまっては、この地域の農業は壊滅してしまう。
我々の地域では昨年の米は作付を見送られたので、米に含まれるセシウムの濃度は不明である。
JA福島中央会は平成24年産米の作付について、平成23年産米で放射性セシウムが1.0kg当たり500ベクレルを超えた地域は作付を制限、100ベクレルを超し500ベクレル以下の地域は除染などの一定の条件を付け作付を進め、100ベクレル以下の地域は作付を認める方針を示した。
だが、昨年作付を見合わせたこの地域の作付はどう判断するんだろう?
水田の土壌は2000ベクレル程度だが、通常の水管理を続けた水田ではセシウム濃度が倍増したと聞く。我々が用水に使用している水は横川ダムから放流される水を使用している。川底の砂に含まれるセシウム量は高いところで60000ベクレルに達している。水には微量しか含まれていないが、雨等により川水が濁るとセシウムを多く含んだ水が水田の中に流れ込むことになる。
そういう条件で米を作付しても、米に含まれるセシウム量はゼロとは言えないだろう。
これまで苦労して土壌改良し低農薬や化学肥料を使用しないおいしい米作りをしてきたのが、原発事故で台無しにされてしまった。
私個人の考えでは、セシウムが含まれる米を販売することはできないが、現実は経費を差し引くといくらも残らない米の販売代金を当てにしてJAに販売してしまうだろう。
福島県内でも放射性物質に影響を受けていない地域の方にとっては、「基準がより厳しい方が安心して出荷できる。消費者にとってもいいことだ。」と簡単に言うだろう。だが、昨年、セシウムが微量でも検出された農家にとっては、風評被害にさらされて安心して米が作れない状況になっている。今年も不安を抱えながら「売れないかもしれない」米を作り続けなければならない辛さは大変なものだと思う。
これから春に向けて農作業の準備に取り掛からなければならない。
果たしてこの地域の農業は持続していくことができるのだろうか?
今年も国や東電にいじめられ、先行きの見えないつらい一年になりそうです。
福島県農林水産物モニタリング情報はこちらから確認することができます。
福島県産の農林水産物を安心して食べることができるように確認してみてください。