修理に出していた「黒い衣の眠り姫」ことミノルタ・ハイマチックEが
今日ナベハウスに戻ってまいりました。
長い長い眠りから目覚めた眠り姫。
そして随分傷つき動けなくなっていた眠り姫。
傷も癒え、その姿は磨き上げられて
当時のままの立派な姿で、そして完全に甦りました。
もう「眠り姫」ではありませんです。
以前の日記にも書きましたが、
このハイマチックEは知人からいただいたものです。
知人のそのまた知人のお父様がしまっていらしたカメラで
亡くなれた際の形見分けで、我が家に偶然やってまいりました。
いただいた時点で、失礼ながら不具合があるのは見た目にも明らかでして
鏡胴ががたつき斜めになってしまっていることの他に
動作も確認できない状態でした。
またかなり長いことしまって置かれたようでした。
電池室から出てきた干上がった電池には82-6の刻印がしてありました。
見立てが間違っていなければ、それは電池の使用期限です。
電池の使用期限はだいたい2年で書かれるとの事。
つまりは1980年頃に電池を入れられ、その前後までは間違いなく使われていたこと。
そして、しばらく後に何らかの不具合…。鏡胴が傾くか、動作不良を起こして
そのまま箱にしまわれ、眠りについたことになります。
間をとるならば…1981年6月です。
おそらくこの前後に眠りについたと見ることが出来ると思います。
今からちょうど30年前…私が小学2年生の時に、この「眠り姫」は
長い長い眠りについた訳です。
そこから30年。
他のカメラたちに囲まれ、下になり、埋もれて、
自分が生きたであろうその時代が過ぎ去るのを感じることもなく
ずっとずっと眠り続けてきた訳です。
そしてきっと元のご主人もいつかはこのカメラたちを使うつもり…
または手放すのに忍びなかったのでしょう。
だからこそ処分はせずに眠らせていたのだと思います。
そして悲しいことに元のご主人様は亡くなられてしまいましたが
きっと元のご主人の意思が働いて、しまわれていたカメラたちは
表に出されたのでしょう。
このまま朽ち果てさせることが本意ではなかった何よりの証拠かと思います。
そして偶然にも我が家で掘り出され、再び日の光の下に出てきた訳であります。
実は受け取った時点で、かなりの損傷がありました。
素人目にも鏡胴の傾きは深刻でしたし、レンズにも汚れがありましたし、
ファインダーにもカビが発生していました。
内部にまで埃が回り、そのままでは使用は難しかったと思います。
最初はその程度に諦めが入りまして、ただバラして遊ぶつもりでしたが、
見ていたら何やら直す気になってきました。
きっとこれも元のご主人のご意思、そしてこの眠り姫の意思なのでしょうね。
バラして遊ぶ…から、バラして直せるかどうか見てみよう…になり、
最期は素人でバラすより、プロに見てもらおう…になりました。
偶然にもミノルタ専門の修理業者さんに行き当たったこともあり、
「これはきっとコイツは”直してくれ”と言ってるのだなぁ」と考え直し、
プロの手に委ねることになりました。
プロの目で見た診断内容はさらに壮絶なものでして
レンズ前玉のくもりとカビは除去不能なレベルであったこと、
そして基盤が過去の電池液漏れによって腐食し、シャッターユニットまで含めて
再起不能になってしまっておりました。
その話を聞いた時に「うわー、再起不能か!!」と思ったのですが
何と部品があるとの事!
あろうことか前玉と基盤、シャッターユニットは新しい正常な部品を組んでいただき
見事復活できることになったのです!!
またファインダーを含めて各部は完全に清掃し、見事に磨き上げられて
1971年に誕生した時を思い出させる立派な姿で
今日我が家に戻ってまいりました。
レンズもファインダーもクリアです。ピントリングも感度セレクトダイアルも滑らかです。
独特の”じーっ”という音の後に落ちるというシャッターもばっちりだし
巻き上げレバーも小気味よく動きます。
そして何よりもピカピカに磨き上げられて輝いております(^^)
ただでもらったカメラに金をかけるのも傍目にはどうかと思いますが
何よりこのカメラが直してもらいたがっていたことと、
せっかくならばプロの目で、完全な状態に復元し、動作を確認して欲しかったのです。
これで安心して使えますし、何より”姫”も喜んでいると思います。
実はマイクロフォーサーズでアダプター遊びをして
京セラツァイスの写りに再度感激した時に、次に思ったのは
やっぱりミノルタに惹かれた者として"ロッコール"銘のレンズを使ってみたい…ということでした。
そして”ロッコール”を探していた私のところに"最高のロッコールレンズ"が
やってきてくれました。
いろいろおまけや回り道もありましたけど(笑)
このハイマチックEのロッコール40mmF1.7はCLE用のロッコール40mmF2、
ひいてはライカ・ズミクロン40mmF2の流れを汲むとか設計はほぼ同一だとか
MTFを測ってみたらCLE用を上回ったらしい…とか、いろいろな噂があるレンズですし、
何より噂以上に良いレンズという評価を持つ、誉れ高いものです。
ミノルタレンズに惹かれた私にとっては最高の”お姫様”です。
※なぜハイマチックEを”お姫様”とか”眠り姫”と呼ぶかと言いますと、
「"Hi"-"M"atic "E"」を縮めてHIME=姫だからです(^^;)
ここでネタばらしをしておきますです(笑)
1971年生まれ…ということで、私よりも年上のカメラなのですが
お姫様はお姫様です。
今日は試写は適いませんでしたが、天気が良い時にお姫様のご機嫌を伺いたく思います。
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