■山陰線178D 豊岡行き各駅停車 餘部発15時28分■
さて、最終的に今日のお宿である姫路まで行く列車「はまかぜ6号」。
2駅隣の香住駅から16時49分発になります。
この列車に乗るには16時11分餘部発の列車に乗ればいいのですが
一本早い列車で餘部を発つ事にしました。
餘部の隣駅「鎧駅」は港を見下ろす景色の綺麗な駅で
ドラマや映画の舞台として有名です。
過去何度か通過した際に、一度は降りて見たいと思っていた場所でもあります。
今回、各駅停車で山陰を訪れたのも何かの縁、立ち寄ってみることにしたのです。
ちょっとその前に…。
山の上の餘部駅に向かう前に餘部橋梁下の慰霊碑に手を合わせます。
昭和61年、餘部橋梁上から風にあおられた列車が脱線転落、
鉄橋下にあった水産加工場を直撃し、6名死亡、6名が重傷を負うという
悲惨な事故があった場所がここなのです。
慰霊碑はこの事故での亡くなった方の御魂を慰める為に
建てられた物とのこと。
鉄橋は建て替えられますが、新しい橋になっても
安全運行の精神だけは守り続けていって欲しいと思います。
先ほど下った山道を登って行きます。
やっぱこりゃ大変ですよ。
新しい駅と橋にはきっといろいろ反映されることでしょう。
このあたりはお年寄り屋子供も多いだろうから、何とかしてあげて欲しいです。
さて、駅に着くと鉄橋の入り口のランプが点滅しています。
またまた嫌な予感…。
しばらくすると放送が入りました。
「餘部橋梁上の風速計が風速20mを計測した為、列車の運行を停止しております」
ありゃりゃ…。
確かに下にいた時から風が強かったので、嫌な予感はしていたのです。
駅員さんに聞いてみると、風が治まれば運行再開とのこと。
慌てて騒いでも仕方が無い、待つしかありません。
ついでなので新しい橋について駅員さんに聞いてみました。
新しい橋は下をしっかり覆う防風壁を設けるので風速25mまで運行できる、
新しい橋は今の橋の7m山側を通し、駅もその分山側へずれる、とのこと。
こういう場面に直面すると、新しい橋の意義もまた違って聞こえます。
我々外野はつい感情論を押し立てがちだけれど、この架け替えが地元の利用者にとって
意義あるものであることこそが重要なんだと思いますです。
「運行再開は15時26分です」との放送が続けてありました。
これなら何とかなりそうです。
ただしこの天気ではいつ再び運転中止となるか分かりません。
駅員さんに聞いてみました。
「実はこのあと鎧に寄ってみたいのですが、
香住を16時49分の特急に乗るなら止めといた方が無難ですか?」
「ああ、止めといた方がいいですね。この分だといつ止まるかわかりませんから」
残念、鎧駅は諦めるようです。
今回の旅の目的はこの餘部と、明日の「そうさく畑」です。
ここで足止めを食うわけにはいきません。
列車は定刻からいくらか遅れてやってきました。
次の列車が時間通りに走る保証はありません。
今が餘部にいられるリミットです。
周囲の景色を目に焼きつけ、列車に乗り込みます。
できるだけ窓辺へ近付いて、外が見えるように…。
列車はゆっくりと餘部を後にします。
鉄橋の上に飛び出すと、まるで空を飛んでいるようです。
思い出ある山陰、そこに行く時に何度も渡った餘部の橋です。
もしかしたらこれが最後かもしれません。
しっかり目に焼き付けました。
さよなら、餘部橋梁。
列車はトンネルをいくつか抜けながら隣の鎧駅を目指します。
トンネルの合間に見える景色は何度見てもすばらしく、
そこでのんびり見られたらといつも思います。
鎧駅のホームに着きました。
雲は急速に切れて、晴れ間が広がりつつあります。
小さな港を見下ろす場所にある鎧駅、
今回は降りられません。残念。
いつかかならず…。
列車は一気に勾配を駆け下り、香住の駅に滑り込みます。
降りる人はそんなに多くなく、列車が去って行った後はしずけさに包まれます。
先ほどまでの餘部の喧騒が嘘の様…。
次に乗る本日のラストランナー「はまかぜ6号」の発車までは約1時間…。
少しはのんびりしたい気分です。
少し駅から歩くといくつか喫茶店がありました。
そのうちの一軒に入ってコーヒーを注文。
値段がよく分からなかったけれど、コーヒー1杯で何千円もとりゃしないでしょう。
温かいコーヒーで一息つきます。
このお店、地元の人たちのたまり場になっているみたいでした。
そのうち一人は列車で浜坂方面に行こうとしているようで
列車が動かなきゃどうしようもないと言っていました。
ぼーっとテレビの高校野球の中継に目をやります。
そろそろ列車の時間。十分のんびりさせてもらって店を出ます。
値段も知らずに頼んだコーヒー、1杯350円でした。