小生のヨーロッパとの付き合いは、英国からの技術導入に接した20代前半から始まった。
設計法を教えてもらい、我々の作った図面をチェックしてもらった。
その頃一番困ったのは、彼らのとんでもなく長い夏休みであった。
7月中頃から、たいてい1ヶ月くらいは、仕事をホッチラカサレルのであった。
(国内の大半の会社が、同じように困ったはずである)
早く図面を出せと工場から厳しく督促されるあまり、自分達で勝手に設計し、それを現場に流し、その後の彼らのチェックで手直しを要求されると、大目玉を喰うことになる。
なぜこんなに長い夏休みを取るのか、誰に聞いても、「そりゃー習慣じゃー」としか答えてくれなかった。
初めてヨーロッパの夏に訪れてみて、どうもこんなことが理由ではないかと思ったのである。
以下に書くことは、何の根拠も裏づけも無い、小生の当てずっぽうである。
この点を心してお読みいただきたい。
北海道より北に位置する北部ヨーロッパは、真夏の正午でも太陽は日本の3時頃の高度、気温は十度から二十度台である。
(大胆な例えで言うならば、日本の気候から6・7・8・9月を除いた5月と10月が、彼らの夏{7・8月}なのだと思う、反面冬は厳しいのであろう)
この気候は、この地方のあらゆる生命にとって最も活動的であり自己の生命を謳歌する季節である。
来るべき厳しい冬に備えて、生命の充電時期であろう。
それ故、仕事などはホッチラカシ、生きていることを全身で謳歌し行動しなくてはならない時期であると思えたのである。
即ち、この貴重な生命の充電時期をうまく過ごさないと、その種の滅亡に繋がるという、何物にも変えがたい貴重な季節だと思ったのである。
こう考えると、日光にあたり屋外で活発に行動し英気を養うという、北ヨーロッパ人の夏休みに対する行動形態が理解できるような気がするのである。
日本の南部では、夏は熱帯性気候である、時々熱帯地方を上回る厳しさに遭遇することすらある。
それ故、我々は、本来の夏休み(体の休養を中心とした生活)を過ごすべき環境にあるといえる。
我々に最も適した過ごしかたをすればよく、何もバカンスまで真似ることはないのだと思った。
一言に「夏休み」といっても、「ところ変われば・・・」である。