映画『靖国 YASUKUNI』に関する声明
日本映画監督協会は、一般公開を直前に控えたドキュメンタリー映画『靖
国 YASUKUNI』(李纓監督作品)について、内容が「反日的」などを理由に
一部の国会議員が文化庁を通して特別に試写を要求した行為及びその後
の言動等に対し、強く抗議の意を表明する。
これらの行為は「表現の自由や上映を制限する意図はまったくない」として
いるが、今後行われる上映活動を萎縮させると共に、表現者たる映画監督
の自由な創作活動を精神的に圧迫している事は明らかである。
すでに一部の映画館で上映取りやめが決定し、更に拡大するおそれがあ
るなど、映画の表現の自由が侵されかねない事態も起きており、大きな危惧
を抱かざるをえない。
あらゆる映画は自由な発想と意志のもとに創られ、かつ自由に上映される
べきであり、われわれ映画監督は、「表現の自由」を侵害、あるいは、侵害す
るおそれのあるあらゆる行為に対し、ここに断固として反対の意を表明する
ものである。
2008年3月31日
協同組合日本映画監督協会
理事長 崔 洋 一
http://www.dgj.or.jp/
崔 洋一監督というお名前は存じていましたので、この御大層な声明を読んで、本当にがっかりしました。この映画は文化庁系独立行政法人から750万円助成金を出してもらっているわけで、その支出が適切かどうかということで国会議員が試写を要請したわけです。そのくらいあたりまえじゃないですか。そう簡単に大金をお役所がポンポン出していたらそれこそ問題です。大金を公費から出してもらうのなら、試写くらい「お安い御用」ではないでしょうか。当然のことだと思いますね。何故これに「強く抗議」なのですか。試写が嫌なら助成金を諦めればよいのです。
この映画がもし本当に中国人監督による「反日的ドキュメンタリー」ならば、はっきり言っていい気はしませんし、公費をつぎ込むのは大反対です。そんなものに日本の政府関係のお金を出す必要はないし、表現の自由は自費でいくらでもご自由にということです。試写を見ないとわからないから試写会を要請したわけで、それを「表現者たる映画監督の自由な創作活動を精神的に圧迫している事は明らかである」なんて、御大層にこじつけるのは、かえって映画監督協会にとってのマイナスだと思います。映画館が上映を取りやめたことは、公費支出の試写の件とは別の商業上の思惑でしょう。それも「表現の自由」を侵害、あるいは、侵害するおそれのあるあらゆる行為に対し、ここに断固として反対の意を表明する」・・とはね。もう本当に日本映画監督協会とやらにも理事長にもがっかりさせられました。以後、映画監督協会には公の助成金など一切あてにせず、自費で思う存分に「表現の自由」を追求した素晴らしい映画を作成していただきたいと思います。
追記 参考 (この映画の文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」から750万円の助成金についての質疑)