
鳥ゆけば点列の影追うように手負いの私にはうたがある
昭和の終わりから平成の初期にかけて
地方の単科大学に勤めていた。
それが諸々の事情があってバブル崩壊と共に
今の仕事に就くこととなった。
今日のうたは東京に戻ってきて
今の仕事を始めて間もない頃のもので
三年前に発表した自選100首にも入れたうたである。
短歌は学生時代からやっているが
自分のうたというものは
あたかも一枚の写真のようだと思う。
仕事で、というより会社の経営で、ぶっちゃけ
資金繰りのことで行き詰まり、工場を抜けて
近くの土手沿いを歩いていた時の情景。
ふっと気配がして空を見上げると鳥が
隊列を成して西へと向かっていた。
それを角行のごとくと喩えたり、私を支点としてと
表現したり。
ずいぶんと追い込まれていたってうたを
忘れることはなかったころである。
短歌がなければ生きられないとは思わないが
短歌によって生かされてきたとは思う。