↑トップ画像は、5月19日、20日に入手した書籍から📚('20.6.10 追加掲載)
この日の日記前半では歌舞伎座見物に只々感心感激のイサさん、
後半冒頭では、ここまでの旅のお天気をちょっと振り返ってみた様ですが……。
『都見物日記』(四)‥‥ ③【後編】
五・三(つづき) 鹿児島出発の折 天気よく、船上もあしき天気は稀の事也。西京 少々乃見物には天気よし、伊勢参詣の日もよし。其外はあしく のさず(※傍点有り)〳〵〳〵。今日も終日雨にて 帰りもせわぜわ敷、歌舞伎座戸口より 車にて宿屋へ帰りの事。
団十郎の道成寺、初てあの様な立派な芸を見申候。初は 地赤に桜の散らし振袖にて踊り、なかばに赤い着物はぬき下より萌黄のを着、桜にかすみにてきれい也。又夫を上計り腰ぬきにして下には白地の桜と雲也。叉ぼうずが色々とする内に又一寸内に入り直(スグ)と着がえして出る、又其時は紫、又したのは地赤に桜の金色、ぴかぴかぴかきれい也。 おそめ様もお安悦と見え申候。飯は べんとすし、ちんと酒少々 さしみ、お染様は下戸様にて酒はおのみ成されず候。四人にて 四円五十銭にて、これには感心の事。
夜入 ほどなくかえり、内にて夜食たべ候、十時過にやすみ候。
「のさず」‥‥ 鹿児島弁で、「のさん」といいますが、「(どうにもならず)まいった!」といった意味で使います。
例)「今日は洗濯物を干したのに、桜島の灰(へ)が降って来て、ほんのこて(本当に)のさんね〜」
「鹿児島弁辞典」石野宣昭(2012年・南方新社)を見ると、
「のさん ‥‥ ①我慢できない ②困る ③難儀だ」とあります。
前回の前半から一転、これまでのお天気を振り返っているので、歌舞伎座見物の話は終わったのかと思ったら、
帰りにも雨に降られて難儀したので「思えばこの旅のお天気は‥‥」と思わず回想してみたところなのですね。
最初に読んだ時には、団十郎の道成寺が余りにも煌びやかで素晴らしかったので、この日の日記にも二度にわたって書き綴ったのだろう、と思っていました。
それにしても余程、九代目市川団十郎の演技や歌舞伎座の舞台・衣装などが素晴らしく、印象に残ったのでしょうね
この演目「道成寺」の内容は↓こちらのサイトをご覧ください。
こちらでは↓錦絵も見られます。
これまで知らなかったのですが、
道成寺は和歌山県最古の寺で、大宝元年(701年)創建なのですね
道成寺のHPより↓