Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<雪と淳>閉講パーティー(1)

2016-05-03 01:00:00 | 雪2年(曰く~閉講パーティー)


今日で雪の、二年生最後の学期が終わる。

閉講パーティーと銘打たれたその飲み会に、ほとんどの学科生が参加した。



期末試験も終わり、これから冬季休みが始まる喜びに、皆自然とテンションが上がっている。

太一は目の前に置かれた料理を頬張り、聡美は笑顔で皆と会話を楽しんでいる。



その中で、一人疲れ果てた顔をしているのが雪だった。

皆の声が楽しそうに響く中で、まるでその狭間に沈み込んでいるかのように。



同期達が携帯を片手に何やら盛り上がっている。

目の前にはお酒もつまみもたっぷりと用意されている。



けれど何一つ、雪の心の琴線に触れなかった。

「沢山食べてね」と掛かる声にも、ただ曖昧に頷くだけだ。



隣の席の女の子が、声を掛けて来た。雪はそれに如才無く返答する。

「期末どうだった?」「うーん‥まぁまぁかな。そっちは?」「聞かないでー」



毒にも薬にもならないそんな会話を繰り返した。

店内にはガヤガヤとした喧騒が溶け、誰しもが楽しそうな表情を浮かべているように見える。

けれど雪の胸中には、最近頓に感じている虚しさばかりが広がっていた。



その穴を埋めるかのように、雪はジョッキに手を伸ばし、勢い良くそれを飲んだ。

聡美と太一は、幾分心配そうな顔をしてそんな雪を見ている。

「雪、今日はやけに飲むね?」「イヤな予感がしますヨ‥」



半分ほど空いたジョッキをテーブルに戻し、口元を拭った。

周りの会話が、否応なく耳に入って来る。

「瞳ちゃんはどうして来ないの?」「インフル再発だってさ」「げーっインフルひどいね」



「ていうかそのせいで学祭の時雰囲気メチャクチャだったじゃん?」「うんうん」

「ていうか直美さん、やっぱり青田先輩がすごすぎなんですって」

「普段から鍛えてるみたいだしね」「体力ありますもんねー」






ピクリ、と雪の肩が動いた。

今まで心の表面を滑って行くだけだった彼女らの会話が、やけに引っ掛かる。

「学祭当日はダウンしてたとしてもさ、その前まではテキパキ動いてたもんね」

「ううーっイケメン!」



青田淳の話題が、雪の心を曇らせた。

そして彼女らの会話の中に、いつしか雪の名前も挙がる。

「あの日って、雪ちゃんと二人で最後まで残ってたんだっけ?」

「あ‥」



すると直美が、思い出したかのように雪に向かって口を開いた。

「ていうか雪ちゃんさぁ、学祭の日見掛けなかった気がするけど、学校来てたの?」

「ちょ、直美さん!あの日この子超体調悪かったんですよ?!」



猜疑心の込められた目で雪を見る直美に対して、聡美がすぐさま噛み付いた。

しかし当事者の雪はというと、ただ黙ってその会話を聞いている。

「前日の準備で雨に降られて!そのこと、科代(科代表)の和美にも伝えたはずですけど?!

何なんですか今更ー」
「えーそーだったの?知らなかったから」

 

聡美の説明を聞いた直美は、コロッと態度を変えた。

「ごめんね~?大変だったんだね?ごめんね~?」

「あ‥ハイ‥」「直美さん酔ってるじゃんかーったく‥



ヘラヘラと笑いながら謝罪する直美。そんな彼女に対し、聡美はプリプリと怒っている。

しかし雪はというと、曖昧に笑ってジョッキへと手を伸ばした。

「あの人、時々妙にカチンと来ること言うんだよなー」「ハハ‥」



ぐわっ!



口や態度には出さないが、やはり雪も相当頭に来ていたようだ。

込み上げる怒りにまかせ、ガブガブとビールをかっ食らう。

すると雪の耳に、予想だにしなかった人物の話題が飛び込んで来た。

「ねぇねぇ、横山ってどうしてるか知らない?」

ぶほっ!!



思わず口からビールを吹き出してしまった。

横山翔のことなど、もうすっかり忘れていたからだ。

「知らない。音信不通」「俺も知らねー」

「ていうか、あの噂聞いた?」



そして話題は、もう一人の音信不通学科生のことへと移り行く。

「平井和美、塾通い始めたらしいって」「へぇ、何かの準備してんのかな。連絡してみる?」

「いや、最近はメールも電話も出ないよ」「えーなんでだろ」

 

平井和美‥。先学期、横山と双璧で雪を苦しめた人物だった。雪の胸中に暗雲が立ち込め始める。

「次の学期、誰が復学して来んの?」「えーっと、井上と米田と上島先輩と‥」

「横山と平井ってまさか休学?」「いやーいくらなんでも休学まではしないでしょ」「かなぁ?」

うん‥今度の休学‥良い選択なんだ‥。



雪の脳裏に、横山翔と平井和美の姿が蘇った。

大学から離れるのは、あの人達とも離れられる絶好の機会だ。



しんどい理由が全て青田淳のせいではないけれど、

青田淳のことがなければ、あの二人ともここまでトラブることにはならなかった。




横山と和美とのトラブルは、謂わば二次的被害のようなものだった。

その全ての元凶は、青田淳その人にある‥。



再び胃がキリキリと痛み出すように思えた。

雪は俯きながら、あの疎ましい光景を思い浮かべる。

とにかく‥



青田淳‥



高級そうな靴で書類を蹴られた。

あの時自身のプライドまでもが、グシャリと踏み潰された気がした。

青田淳青田淳青田淳‥



あの男のせいで何もかもが狂って行く。

雪はまるで呪文のように、心の中で彼の名前を唱え続けた。



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<雪と淳>閉講パーティー(1)でした。

ついにこの時が来ましたねー!

連載開始から6年、再び巡ってきた閉講パーティーです。

ここが終わりであり、始まりなんですね。なんだか感慨深いですね。

そして次回<雪と淳>閉講パーティー(2)で、冒頭へと繋がります!


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