
雪は河村亮とのことを考えながら、一人教室へ向かって歩いていた。
するとその道中で、大きな声が雪に掛かる。
「雪っ!」「!」

声の主は伊吹聡美だった。
聡美は大声を上げ慟哭しながら、雪の肩に縋り始める。
「ゆきぃぃぃぃ!!」
「??!えっ?!どしたの?!アンタここで授業じゃないでしょ?!」

「ゆきぃぃぃぃ!!」「どうしたの?!何かあった?!」
「太一が‥」「太一が何?!」

そして聡美の口から語られた真実は、何も知らない雪を驚愕させた。
「う、うちら‥付き合うことになったのに‥」「へっ?!」

「軍隊に行くってぇぇぇ!」「はぁぁ?!」

聡美は涙をポロポロ零しながら、がっくりと肩を落とす。
「あたしとはもう終わったんだと思って、
ヤケクソで軍隊に申し込んだんだって‥」
「ちょ‥待って何が何だか‥」

「もう取り消しも出来ないってぇぇ‥!」

聡美の目からブワッと涙が溢れ出した。
「取り消しの期間も終わっちゃってて‥」と力なく呟く聡美に、雪は何も言葉を掛けてあげられない。

混乱の最中で、こう叫ぶのがせいぜいだった。
「な‥何がどうなっちゃってんの?!?!」

季節の移ろいと共に変化して行くそれぞれの関係。
冷たい秋風はただ静かに、彼らのその間を吹き抜けて行く‥。

次の授業が始まっても、雪は先程の衝撃から依然として立ち直れていなかった。
手元のノートには、「聡美」と「太一」の名が延々と書かれている。

先ほどの衝撃の告白の後、泣き続ける聡美を宥めるのは一苦労だった。
「雪ぃ‥あたしもうどうしたら‥」
「とりあえずアンタ授業あるんでしょ?落ち着いて、ね?
泣くの止めて、後でちゃんと話しよ。分かった?」「ん‥」

涙ながらに唇を噛み締め、頷く聡美。
彼女が握った携帯電話が、何度も震えていた。きっと太一からなのだろう。
この二人は、一体どうなってしまうんだろう‥。

雪は後ろ髪を引かれる思いで、とりあえず授業を受けに教室へと向かった。
出席に厳しいと評判の教授の講義だ。休むことは出来なかった。
「おはようございます」「皆さんおはよう」

「授業を始めます」

痛む頭を庇いながら、教室へと入って来た教授をぼんやりと見ていた雪。
その視線の先に、先程までは確認できなかった人物の背中を見つけて目を見開く。

柳瀬健太‥。

雪の胸中がムカムカと憤る。
滑り込みで入って来たってわけね

雪から一番遠いと思われる席に、おそらくコソコソと就いたであろう健太。
苛立ちは隠せないが、とりあえず授業に集中せねばならない。
雪は目を閉じ、一度大きく深呼吸をする。

健太への対応をどうするか、未だ結論は出ていない。
無鉄砲に向かって行ったら、また思わぬ所に余波が押し寄せてしまうかもしれないから。

雪は授業に集中しようとノートを取り始めた。
頭の中には無数の考えが、次から次へと浮かんでは消えて行くけれど。

静かに授業を聴き、黙々とノートを取る。
今の場面だけ切り取れば、何てことのない日常の一片だろう。
けれど周りの環境や人間関係は常に変化し続け、それは少なからず雪に影響を与えて行く。

教授の声が広い教室に反響し、やがて消えて行った。
雪はぼやけていくその記録を、忘れないようにノートに書き留めて行く‥。

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<友の慟哭>でした。
あちゃー‥太一‥。

クール◯コ再び‥
軍隊に申し込んだのはやけっぱちだったんですね‥。
あのピアスをお別れにしようと思っていたのかな。。うう‥(T T)
二人‥どうなるんだろう‥。
次回は<彼、突然の来校>です。
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