Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

白紙の準備

2016-05-26 01:00:00 | 雪3年4部(虚勢の裏側~魔法の言葉)
聡美と太一がカップル最大の危機に直面している頃、

雪は一人構内を歩いていた。



分かれ道に差し掛かった時目に入ったのは、

何度か足を運んだことのあるあの建物だ。

音大‥



雪は少し考えた後、そちらの方向へと足を伸ばす。







入り口の方へと近付いて、キョロキョロと辺りを見回す雪。

会えるわけないかと思いかけたその時‥。

「おい」



聞き覚えのある声が、後方から掛かった。

振り返ってみると、彼が立っている。



河村亮。

亮は無表情のまま、じっと雪のことを見つめている。



「河村氏‥」



雪は少しきまり悪い表情を浮かべながら、彼の名を口にした。

二人の間に沈黙が落ちる。





亮は首の後ろに手をやりながら、その大きな目をキョロッと上に動かした。

未だ黙っている雪に向かって、彼女がここに居る理由を当ててみる。

「謝んの?礼言うの?」



「あ‥どっちも‥」



そう気まずそうに口にした雪を見て、亮はふっと静かに笑った。

以前のような仏頂面でも、雪を突っぱねる態度でもない、どこかすっきりとした笑顔を浮かべて。



亮の視線は空を仰ぎ、落ち着いた口調で、雪に向かって口を開き始めた。

「いらねーよ。この前はオレも言い過ぎたし、昨日はお前んこと助けらんなかったし。

だからお前がオレに気ぃ使う必要なんて、全くねぇってこと」




亮はゆっくりと、雪の方へと視線を流す。

「だから全部忘れてくれ。最初から、何も無かったみてーにな」



「分かったな?」



亮からそう言われ、雪は言葉に詰まった。

彼が口にするその言葉の意味が、二人の間に見えない壁を作る。



秋の終わりの風が二人の間を吹き抜けて行き、鳥の鳴き声だけが辺りに響いていた。

その中で亮はただ静かに、穏やかな笑みを浮かべて佇んでいる。



彼の心の中を目で見ることは出来ないけれど、それにどうやら何かしらの折り合いが付いたことを、

無言の中で雪は感じ取った。

「‥‥‥‥」



これ以上自身が立ち入ることは出来ないのだ、と。



雪は若干わざとらしい程の声を上げ、亮の前で笑って見せた。

「いやいや~!それでも助けようとしてくれたじゃないですか!

本当にありがとうございました!あの時怒っちゃったのもとにかく‥すみませんでした!」




亮はそれをただ黙って聞いている。

雪の笑い声は、二人の間に虚しく響いて消えて行った。






雪は咳払いを二、三回した後、この場を立ち去る挨拶を口にする。

「あ‥それじゃコンクール‥の準備、頑張って下さいね。私授業行くので‥」



雪もまた、亮と同じような笑顔を浮かべた。

「頑張って下さいね」



亮は片手を上げて、彼女の笑顔に笑顔で応える。

「おう」






亮が浮かべるその笑顔を、雪は暫しじっと見つめた。

その笑顔の裏にある、何らかの決心を感じながら。



笑顔を崩さない亮の前から、

雪はやがて背を向ける。







亮は雪の背中が小さくなっても、上げた左手をそのままの状態で彼女を見送った。

彼女との関係を白紙に戻す、そのカウントダウンがだんだんと迫っている‥。



亮は音大の方へと歩き出した。

一度も彼女の方を、振り返らないまま‥。




これで充分だ



雪はだんだんと遠くなって行く彼の存在を背中に感じながら、亮のことを考えていた。

嫌だと言われたのに、家族のような付き合いを強要するのは違うし、

本人の心の整理はまだのように感じだけど、結論を下したのは確かなのだろう。

これ以上は、私も何も言うことは出来ない。




どうせ河村氏との関係が上手く行ったところで

先輩とはずっと衝突することになるだろうし‥。

二人が誤解を解いて円満な関係になることを願ったけど、

私が彼らのプライバシーに介入するのにも限界があるだろう。

ただ‥




冷たい風が頬を刺し、それは雪の心の中にもひゅるりと入り込んで来た。

河村氏との関係は、先輩に関する縁だけじゃなく、

私個人の人間関係の一つでもあったから‥。こういうぎこちない感じに慣れなくて、




ただ寂しさだけがしんしんと積もる



脳裏に浮かぶ亮の笑顔が、だんだんと霞んで行く。

「ダメージ!」



胸の中に煙る靄が彼の顔を白くぼやかし、まるで白紙の状態に戻して行くかのように感じた。

心の中に、ぽっかりと穴が開く。



ふと、雪は音大の方を振り返った。

上手くやってるなら良かった



そこにはもう誰も居ない。

河村氏がどこに行ったとしても



上手く‥行きますように



ぐらつく心に言い聞かせるように、雪はそう胸の中でひっそりと祈った。

その表情には、そこはかとなく寂しさが滲んで居たけれど‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<白紙の準備>でした。

なんとか4部35話の亮と雪の会話、記事に間に合いましたー^^

急いで訳したので、翻訳間違いあるかもしれません(汗)、あったら教えて下さいー。


着々と別れの準備をしている亮さんが切ないですね(TT)

全力で引き止め隊、集合!


次回は<友の慟哭>です。

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