![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/a4/aa44bed26d5b8fb84480cc926e1440e1.jpg)
旅立ちの前の空白の時間。
淳はぼんやりと天井を眺めて寝転んでいた。脳裏には、雪の後ろ姿ばかりが浮かぶ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/dc/3d7a89127867acdc49aa16a95be66375.jpg)
ふと、先日の閉講パーティーの時に耳にした彼女達の会話を思い出した。
「ねぇ雪、アンタ休み中またバイトすんでしょ?どこでやるの?」
「‥XX企業に願書送っ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/3f/6d64e598610a991e6741a4f5f4707320.jpg)
そして保健室で目にした、
彼女のポケットに入っていた紙切れのことも。
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手に入れていた二つの情報が、淳の頭の中で一つに繋がった。
‥彼女は今、XX企業にてバイト中だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/ba/f3420486ae4d49ced552400192abe08d.jpg)
飛行機の時間まではまだ余裕がある。
淳はガバッと起き上がった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/97/1984f08113580990bd6d6c43981523d0.jpg)
「近所だ」
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XX企業、その場所はここから随分と近い。
すぐに淳は出掛ける準備を始めた。
もしかしたら、彼女に会えるかもしれないという微かな期待を込めてー‥。
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案の定雪は、XX企業にて絶賛バイト中だった。
通常業務はオフィス内にて、PCでの作業である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/4d/39feff985720c66c80702b6c4a33ad53.jpg)
その他は雑用で、電話対応をしたり段ボールを運んだりと、それなりに忙しかった。
雑用途中で社員に呼ばれても、雪は嫌な顔一つせず素直に業務をこなす。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/36/93356baf0aff45a340543f767bbe7edc.jpg)
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PCに向き合っての作業中、ふと今日の日付を見てこう思った。
もうちょっとで成績発表の日だな‥うーん‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/f6/0b034d70d55cc49a745d7133e7d3d94d.jpg)
休学すると決めたものの、奨学金のことはいつも頭にあった。
全額は無理だと思うけれど、もしかしたら‥。
雪がモヤモヤと頭を悩ませ始めたその時、少し離れた席から名前を呼ばれた。
「赤山さーん!コーヒーの買い出し頼む!
ここメニュー書いたから、他のバイトの子達と行って来てー」「あ、はい!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/04/341f29174c622dd31103c11be70e50c6.jpg)
そして雪はバイト仲間と共に、オフィスの下にあるカフェへと向かった。
それはビルの真下にあるため、外に出ずとも買いに行けるのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/ff/acd2571e5a5bb9529fda5d1a2d21f097.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/a2/24b9a1c6906649de0c29b62b38c192b5.jpg)
えんじ色のセーターを着て、佇む彼女。
少し猫背な後ろ姿。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/ad/d995a15fb43091f8828f43d493b32d0e.jpg)
XX企業前に到着した淳の目に、その姿は飛び込んで来たのだった。
まだ空気が冷たい二月、彼は白い息を吐きながら彼女の姿を覗き込む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/9c/d1112ac453cfb86cb9dc7f2c13e998cd.jpg)
オレンジ色の豊かな髪。ひと目で彼女だと分かった。
久しぶりに目にするその背中に、どこか懐かしさを感じる。
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淳はボストンバッグを背負い直しながら、その場に立ち止まった。
彼女の後ろ姿から目が離せない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/e4/f317f6859ad523396fe3038ed4f3079d.jpg)
じきに、Pick-upのカウンターから雪達に声が掛かった。
「まずコーヒー四つお渡しします。お待たせしましたー」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/24/e7bbf814e28b08932cd3a6f5a7edcdfb.jpg)
それを受け取ろうとした雪の元に、バイト仲間らしい男性がすぐに駆け寄った。
どうやら「俺が持つよ」と声を掛けているらしい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/4d/e6247cd01bf5bafe46488625b0470ea0.jpg)
雪は首を振りつつ、何やら彼に話し掛けていたが、やがてその男に任せることにしたようだ。
バイト仲間達は親しげに会話を重ねている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/6c/db6fc79fa510c464be92a69f85600e1c.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/4c/bd3d71bf9240ef497b502a637b143278.jpg)
そんな彼女の様子を、淳はガラス越しにじっと眺めていた。
どこか面白くない気持ちを胸に秘めながら。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/db/343d3e2baabd9d60f5e87d9bd977a9ef.jpg)
俺は一体何をやっているんだろう。
何度も頭を巡るその自虐的な問いが、またもゆらゆらと自身を揺らす。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/d8/dc6783d52a7074534a7e0faa0c3c2bde.jpg)
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そして淳は一歩踏み出した。
もう旅立ちの時間なのだ。
しかしそう考える思考とは裏腹に、心はじっとこの場に佇んだままだ‥。
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<雪と淳>彼女の姿を でした。
淳ってば‥雪の姿見たさに少ない情報をかき集め、バイト先に出向くとは‥!
言ってやりたいですね。
「恋~しちゃったんだ~多分~気付いてないでしょ~」と!
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次回は<雪と淳>彼の姿を です。
次で、雪が二年生の時の時系列は全て終わりだそうですよ!
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