晴れ上がった空のように・・

日常の出来事や読んだ本の紹介

無花果の森

2012年04月09日 | 
無花果の森  小池真理子

第62回 芸術選奨 文部科学大臣賞 を受賞されたのが記憶に新しいと思います。
すごい!快挙です。
この「無花果の森」は現代社会に潜む闇や孤独に鋭く切り込んだ物語です。
さすが・・恋愛小説の名手ですが、サスペンスの女王だったことも忘れてはいけませんね^^
ドキドキの展開で、ページをめくる手が止まらない面白さでした。

物語は・・
泉は38歳。映画監督、新谷吉彦の妻です。
新谷は日本映画界では前衛的な映画を作る有名な監督で、その実力は天才的ともいえる。
しかし、その陰では妻に暴力ふるうDV夫。
泉は、とうとう耐え切れなくなり、失踪。岐阜県大崖にたどり着くのです。

なんともやるせない物語。今DVで悩んでいる夫婦がどれほどいるのか知らないけれど、
女性なら、皆眉をひそめ、不幸な境遇に同情するし、DV夫を軽蔑して叩きのめしたい衝動に
かられるでしょうね

でも、その暴力から逃れられない恐怖とやらは体験した妻でないとわからない
ところでしょう。
逃亡先で、奇遇にも以前週刊誌の取材にきた記者、鉄治と巡り合う。
世捨て人の暮らしを覚悟して、偽名を使って、過去を捨て人生のすべてをかなぐり捨てただ生きていくだけの
泉にとって、自分を知る人間が目の前に現れて、どれほど恐怖をかんじたことか。
しかし
その鉄治も、芸能界の薬物汚染事件の取材中に罠にはめられ、無実の罪を着せられ指名手配となり、
泉と同様、逃亡者となっていたのです。

なんと、サスペンスです。
これはTVドラマの脚本にすぐ使えそうな展開になってきましたよ!

この世の終わり。。もうどうすることもできない運命。究極にこまったときに助けてくれた人は
60近いオカマのスナックママと、80過ぎの老いぼれ画家の意地悪なおばあさん?でした。

最後はちょっと素敵な恋愛モードになって
映画の一シーンで終わったところは、真理子さんならではです(*^_^*)

春のほろ酔い気分で、是非お勧めしたい一冊です