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「君が代」不起立処分大阪府・市人事委員会不服申立ならびに裁判提訴当該15名によるブログです。

大阪市教育振興基本計画案で「いじめ」は解決しない

2013-01-05 14:29:52 | 教育振興基本計画

※「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪事務局の松田さん(中学教員)のパブリックコメントをご覧ください。

 

いじめ、問題行動に対する取組について意見を書きます。

                                          

 大阪市教育振興計画(改訂素案)では、「第1編大阪市の教育改革、第2章教育改革の推進、第3改革に向けた施策の内容、5学校サポート改革」の項(P17~P18)で、「いじめ・問題行動に毅然とした対応をとるための制度をつくります」として、以下の取組をあげています。

「いじめについては、すべての学校、すべての教員が『いじめは生命をもおびやかす行為であり、人間として絶対に許されない行為である』という強い認識をもち、他人の心身の痛みがわかるような豊かな心を育てなければなりません。そのために、いじめた側の児童生徒に対する更生プログラムを策定し、①解決に向けた学校内での加害児童生徒への指導とその保護者への協力要請、②警察やこども相談センターなど関係機関と連携した学校内での指導、③出席停止の活用や教育委員会・警察等と連携した学校外(サポートセンター等)での指導、④犯罪が疑われる場合には、保護観察、児童自立支援施設・少年院送致等の処分に向けた、被害届の提出などの法的手続きといった対応を段階的に示し、児童生徒の状況に改善が見られるまで指導・対応に取り組みます。」

また、「第2編今後3年間で取り組む施策、第2章施策の内容、第1子どもの自立に必要な力の育成、2道徳心・社会性の育成」の項では、以下のような取り組みをあげています。

「幼児期から小・中学校を通じた義務教育修了までの期間に、基本的な道徳心・規範意識を培い、例えば、『人に親切にする』、『嘘をつかない』、『法を犯さない(ルールを守る)』、『勉強する』など、社会で生きる上で身に付けておかなければならない普遍的な事柄についても明確化して繰り返し指導します。」「併せて、いじめ・不登校・児童虐待などの課題を抱える子どもを支援するセーフティネットを充実します。」「学校園で認知したいじめについて、解消に向け対応している割合を100%にします。」「また、たとえ軽易な事案であっても毅然とした指導を行うため、加害児童生徒に対する更生プログラムの策定、いじめの調査等を行う第三者専門家チームの派遣、教職員向けのマニュアルの作成を進めます。」

                                          

 このいじめ問題に対する取組の方針は、子どもに対しては、「いじめをしたら、損だ」ということを身にしみさせる、教員に対しては、いじめに対処しないと責任が問われる状況をつくるということです。この方針では、教職員が「いじめ問題」に取り組むのは、自らの責任が問われないためであり、市長を初め、教育行政の「指導」とは、できていないことの責任を問うことだけです。教職員ひとりひとりが、どのようにして『いじめは生命をもおびやかす行為であり、人間として絶対に許されない行為である』という認識を得ていくのかというプロセスは、まったく想定されていません。また、いじめている側の子はなぜそうなっているのかということを真剣に問い直すことも必要ありません。                                           

                                           

 中学校教員としての自分の経験から考えていることを書きます。いじめる側の子は、「困った子」ではなく、「困っている子」です。自分が満たされていない状況に置かれています。それは、自己責任と言えないものがほとんどです。勉強は全く厳しい状況で、家に帰ってもひとり、という生徒が、遊び相手がほしいため友達を強引に遊び相手にさせる。友達にも、クラブ、勉強その他いろいろ都合があるので、遊び相手を確保するには、その子には力しかないのです。その関係は、やがて使い走りをさせる、させられるという関係となり、我慢できなくなった子が反抗して、命令していた子が殴った段階で、教員が何かあったと感じます。このとき、普段から、いじめている側の子の事情も理解した上で、頑張れよという励ましのことばをかけるような関係が教職員とその子の間に築けていれば、暴力をふるうという行為、力で友達を支配する行為がどれだけ駄目なことか、話したとき、聞いてくれます。また、教職員がいじめている側の生徒に一定受け入れられている状況ができている時にしか、いじめられている子は教職員に真実を話してくれません。なぜそんなことをしてしまうのか全く考えようともせず、自分の責任逃れのために、こんなことをするとお前が損をするぞとしかいわない教職員に、だれが本当のことをいうでしょうか。加害者の子は被害者の子に口封じをし、いじめはさらに陰湿化すると思われます。

大阪市教育振興計画(改訂素案)のいじめに対する方針は、今まで積み上げられてきた大阪の教育を壊し、いじめを陰湿化させるもので、反対です。

 

大阪では、野宿の方への襲撃事件が絶えず、昨年10月には、死に至らしめる事件も起きています。その事件を知った、この問題に関わり続けている方の感想を知りました。まず、私たち自身の受け止めが問われているということです。いじめ問題を考えるときに避けて通れない指摘だと思いますので、紹介させてください。                                          

                                           

 いったいいつまでくり返されるのか…。ホームレス問題の授業・教育の取り組みを、求めつづけてきたなかで、またも起こった襲撃事件。ついにまた死者が出てしまった現実。子どもたちの「ホームレス」いじめ・差別は、大人の無知と偏見の映しかがみ、社会の「無関心」という最大の暴力が、子どもたちの「襲撃」をうみつづけている。

 

いったい、どれだけの、いのちが、犠牲になれば、「無関心」は「関心」になるのか。

 

懸命に、路上で生きている、もっとも貧困な状態にあるひとびとが、この豊かな日本の、十代の子どもや若者によって、むしけらのように襲われ、殺されても、親は、学校は、教育は、世間は、まだ、スルーしつづけるのか。

 

いったいどうすれば、ほんきで、考え、本気で、動いていくれるのか。

親も、学校も、教員も、世間も、これが「ホームレス」差別でなければ、他の被差別の問題であれば、他の理由で、生きてる人が、襲われころされたとしたら、もっと真剣に、もっと重大に、もっと深刻に、もっと迅速に、もっともっと他人事ではなく、ほおっておけない問題だとは思わないか。大変なことが起こっていると、思わないか。なんとかしなくてはと思わないか。

 

子どもたちのまえに、大人がまず、「ホームレス」を軽視し、差別している。

 

学校でも、行政でも、ほかの被差別の問題であれば、たとえ、個人的に、興味も関心もなかったとしても、「人道的」に、「教育」に、無視はできない問題として、「取り上げざるをえなかった」のではないか??

 

「ホームレス」差別、だからこそ、「取り上げずにすんで」きたのではないか??

 

石を投げ手を汚すのは子どもたちだけど、石をなげさせてるのは、だれか?

 

変わるべきは、まず、大人。それも、「教育」にかかわる、大人がまず、無知から「知る」ことへ、

無関心から「関心」へ、そして、スルーから、「出会い」へと、変容していくこと。

 

子どもたちに「説教」している場合じゃない。

 

(中略)

 

子どもたちに語りつづけていく。路上でいのちを奪われた、仲間たちの無念とかなしみ。そして、もう二度と、だれも、加害者にも、被害者にも、なってほしくない。苦しみ哀しみのなかで、ねじまげられ、ふるえるいのち。きっとわかりあえる。敵ではない。いのちのぬくりもりをもった「人と人として」、出会ってほしい。

 

子どもたちを、信じたい。仲間たちを、まもりたい。

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「具体的な目標」は、全国学テを基準にした数値目標のオンパレード?!

2013-01-05 11:04:09 | 教育振興基本計画

※大阪市教育振興基本計画案へのパブコメは昨日締め切られました。当ブログで、お寄せになったパブコメを紹介していきたいと思います。

今後、橋下大阪市長は、パブリックコメントは終えた、教育委員会との協議は終えたと、市議会提案してくるものと考えられます。

大阪の教育が、この大阪市教育振興基本計画(素案)通りに行われればどうなるのか、さらに議論を深めていきたいと思います。

 

 

◎「具体的な目標」が、全国学テを基準にした数値目標のオンパレードであることに対する疑問

 

 「素案」の「施策分野ごとの具体的な目標」には、学力だけでなく、運動や体力、PTA活動、家庭での生活、心の問題等、あらゆる項目を数値目標化し、成果を競わせる内容となっています。しかもその数値目標の基準が「全国学力テスト」の結果を3年間でどこまであげるかに特化しています。「全国学テ」という結果の一面を全ての基準に拡大し、その数値に完全に縛られることになります。これでは「全国学力テスト」至上主義、うすっぺらい教育観のあらわれではないでしょうか。なぜ、「全国」との比較なのでしょう?市長は大阪を個性ある独立性のある地域にしようとされているように聞いています。だとしたら、他と数値で競う必要はないのでは? 後でどうにでも操作できる数値など、意味があるとは思えない。

 何より、子どもたち、また指導する先生方の個々の能力は数値で表すようなものではないと思います。競うか競わないかは個人の考え方で、その多様性こそ育むべき能力ではないでしょうか。

数値をもとに国の基準に押し込めては、他の個所で言う「グローバル人材」が育成されるとは思えません。明治期に教育が庶民にまで行きわたるようになったのは、真に個の能力を高めるためだけでなく、「お国」のために働く人間を作るためでもあったと認識しています。その結果、先の大戦まで多くの命が無駄に失われていきました。「個」が、尊重されていなかったからです。

 「数値」は親や教育界を表面的に納得させるツールでしかありません。多様な能力を秘めた子どもにとって、一般化した数値で判断されることは、「暴力」でもあります。いじめや自殺、授業妨害、校内暴力など、現在、教育現場が直面する多くの問題は、大人社会の都合で「管理」対象とされている子どもからの「私」をよく見て!というメッセージだと思います。教師にしても、成果を競わされては、人と人として生徒に向き合うことができるか疑問です。それぞれが個々の能力を高め自分の生き方を確立するのに、国家や行政が決めた競争目標で囲うのは、真に子どもを思う教育ではないと感じます。

 教育目標が、私たち子どもをもつ親に納得できる具体性をもつものになるよう、再考願います。

 

 
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大阪市教育振興基本計画の改訂素案に対するコメント(1)~転載~

2013-01-05 00:00:19 | 教育振興基本計画

 ※本日、大阪市教育振興基本計画(素案)に対するパブリックコメントは締め切られました。

私たちが、いつもお世話になっている住友剛(京都精華大学人文学部教員)さんもコメントを送られたとのことです。

ブログ「できることを、できる人が、できるかたちで」から転載させていただきます。シリーズ3編の第1弾です。 

http://tsuyokun.blog.ocn.ne.jp/seisyonenkaikan/2013/01/post_50a5.html

 

 

2013/01/04

大阪市教育振興基本計画の改訂素案に対するコメント(1)

新しい年を迎えました。今年もよろしくお願いします。
さて、今日1月4日(金)締切りの形で、大阪市教育振興基本計画の改訂素案に対するパブリックコメント募集が行われました。詳しくはこちらを見てください。

http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/kyoiku/0000194120

この改訂素案に対して「何も言わないままじゃいけないだろう」と思ったので、ひとまず第2章についてのみ、思いついたことを今日、書きなぐるような形で書いて、メールで送りました。以下の内容は、その書いた内容をフェイスブックにアップしたものを、こちらにも転載したものです。「その1」から「その2」「その3」まで分けて書いたので、3つにわけて今日から掲載します。今日は「その1」です。なお、実際に送ってしまったあとで誤字脱字などに気づき、文言を訂正したところがあります。実際に送ったコメントとは若干言葉がちがいますが、趣旨はほぼ同じだと思ってください。

○第2章「教育改革の推進」について
(1)子どもの権利条約の視点はどこへ???
「基本となる考え方」に「一人一人の子どもを、個人としての尊厳を重んじ、その意見を尊重する」「自由と規範意識、権利と義務を重んじ」と書く以上は、その前提として、大阪市内の子どもたちすべてに対して、「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」の理念や条約の概要を周知させるべきです。
また、その条約の理念や概要は、子どもだけでなく、保護者や学校の教職員及び学校に関わる他の職種の人たち(スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー)、さらには教育行政や社会教育・生涯学習関連の仕事に従事する人々にも、周知させるべきです。 ところが、この教育振興基本計画(改訂素案)については、そのような視点が全くといっていいほど見られません。
これでは、「子どもの権利条約」というグローバルな視点に立つ国際条約をふまえた大阪市の教育振興基本計画として、不適切な内容だと言えるでしょう。その点をとっても、この改訂素案をつくった人々の見識を疑います。

(2)「教育振興基本計画」は「子どもの学校教育」だけのものか??
そもそも、今回の基本計画改定の前提になっている「教育行政基本条例」では、家庭教育の振興や社会教育・生涯教育の振興に関する市教委の施策等についても定めています。だとすれば、当然ながらこの「教育振興基本計画(改訂素案)」においても、その「めざすべき目標像」や「基本となる考え方」には、学校教育及び子どもに関することだけでなく、社会教育・生涯学習の領域をふまえた理念を書く必要があるのではないでしょうか。
今の改訂素案の「目指すべき目標像」や「基本となる考え方」では、まるで「教育振興基本計画」は「子どもの学校教育のため」だけのものであり、この素案での社会教育・生涯学習関連施策は「おまけ」のような印象を受けますが、いかがでしょうか。
また、家庭教育の振興も、今の改訂素案では、たとえば学校・家庭・地域の連携など、まるで「学校教育の下請けのため」にやっていくかのような印象を受けます。もちろん、これは教育行政基本条例の趣旨を受けてのことかと思いますが、しかし、そもそも家庭教育の振興というのは、そういう「学校教育の下請け」目的で取り組むものなのでしょうか?? もしも「いい」とおっしゃるのであれば、この改訂素案を作った人々の見識を疑います。
なお、このことに関連して言うならば、そもそもこの基本計画改定の前提になっている諸条件のうち、大阪市の「市政改革プラン」で数多くの公共施設の統廃合、子育て関連施策の縮小などが提案されています。そのことによって、大阪市の社会教育・生涯学習や家庭教育振興関連の施策が大幅に後退するのではないかと私は危惧します。だとすれば、この改訂素案は、教育行政基本条例の趣旨に沿って、その後退に歯止めをかけるものでなければいけないはずです。そこを容認して振興計画を作るというのは、いったい、どういう見識なのか。この改訂素案を作った人々には「もう一度、条例から読み直せ」と言いたいです。こういう「市政改革プラン」を容認するような振興計画では、とてもではないですが、「学校教育の下請け」的な家庭・地域との連携ですら危ういのではないですか。

 

コメント (1)
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大阪市教育振興基本計画(素案)パブコメしました!第4弾

2013-01-03 15:48:18 | 教育振興基本計画

※大阪市教育振興基本計画(素案)パブコメ第4弾です。辻谷博子

これが通れば、小学校からの「英語競争教育」が本格化します。

それは浅薄な外国語理解と学力格差(落ちこぼれ自己責任理論のもとに)拡大につながると危惧します。

 

大阪市教育振興基本計画(改訂素案)についてのご意見・ご提言

 

「第1編:第2章教育改革の推進:第3改革に向けた施策の内容:2 グローバル化改革」について

 

「○「英語イノベーション」:小学校1年生から大阪独自の英語教育に取り組みます」について

まず、英語を国際共通語と捉えることに異議があります。多言語教育を志向すべきではないかと考えます。

特に大阪の公立学校には、多様な民族的ルーツを持つ子どたちが在籍しています。

まず取り組むべきは母語教育です。

 

ただでさえ、「英語嫌い」の中学生が多い現状に、さらに競争を過熱する英検受験は適切ではないと考えます。

小学校からの英語教育は、学力格差拡大に間違いなくつながることでしょう。

また、日本語すらおぼつかない時期から英語力育成を目指す教育は賛成しかねます。

外国語教育の観点から考えても、ただ会話力のみを求めることは、

異文化について浅薄な理解にとどまり、真の国際理解にはつながらいと危惧します。

 以下の欄は、よろしければご記入ください。

性別

男性    女性

年齢

20歳未満 ・ 20歳代 ・ 30歳代 ・ 40歳代 ・ 50歳代 ・ 60歳代 ・ 70歳以上

住所

大阪市内  大阪市外

宛先

 〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号 大阪市役所内

大阪市教育委員会事務局 総務部総務課(企画グループ)あて

ファクシミリ:06-6202-7052  電子メール: kyoiku-plan@city.osaka.lg.jp

 

※ 電話など口頭でのご意見・ご提言はお受けできませんので、必ずこの用紙を使ってください。 なお、1枚に収まらない場合は、複数枚にまたがっても差し支えありません。

※ ご意見・ご提言に対する個別の回答はいたしかねますので、あらかじめご了承ください。

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大阪市教育振興基本計画(素案)パブコメしました!第3弾

2013-01-03 13:08:05 | 教育振興基本計画

※大阪市教育振興基本計画(素案)に対するパブコメ第3弾を送りました。応募用紙そのままを転載します。辻谷博子

 

なお、大阪教育条例NO!のブログを参考にしています。今回のパブコメをするにあたってとっても有益なブログですので是非ごらんください。

大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する④
ICT教育って、本当に必要?
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/25e8a4b2cc426ecc22c2ed497f6232ae

 

大阪市教育振興基本計画素案

http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/cmsfiles/contents/0000194/194120/soann.pdf

応募用紙

http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/kyoiku/0000194120.html

応募用紙

 

 

 

大阪市教育振興基本計画(改訂素案)についてのご意見・ご提言

 

「第1編 大阪市の教育改革:第2章 教育改革の推進:第3 改革に向けた施策の内容:1 カリキュラム改革」についての意見

「○幼児期から義務教育修了までに、基本的な道徳心・規範意識を培います」について

道徳教育は一種の思想教育の側面を持ち併せます。「規範意識」や「義務」を重んじ、「責任」を課すことによって、健全なる批判意識が阻害される虞があります。

また、「幼児期から小・中学校を通じた義務教育修了までの期間に、基本的な道徳心・規範意識を培い、例えば、「人に親切にする」、「嘘をつかない」、「法を犯さない(ルールを守る)」、「勉強する」など、社会で生きる上で身に付けておかなければならない普遍的な事柄についても明確化して繰り返し指導」とありますが、これでは、善悪の判断がつく公民の育成にはつながらないと考えます。それどころか、思考停止状態で上意下達をよしとする、すなわち自分でものごとを考えられず判断できない人間ばかりが増えるように危惧します。

いま、最も重要なことは、自分自身で判断できる人間の育成です。素案では真逆の方向の進む虞が多分にあります。

 

「○ICTを活用して協働学習や個別学習などの充実をめざす「大阪市スタンダードモデル」を策定します」について

素案にはこうあります、「大阪市では、学校にタブレットPC、電子黒板、ネットワーク、デジタル教科書その他の学習コンテンツなどを含む最先端のICT学習環境の整備を図ります。このICT学習環境を日常的な授業で活用しながら、個別学習ツールを取り入れて繰り返し学習することなどによる「基礎的・基本的な知識・技能の習得や学習習慣の確立」、プレゼンテーションソフトを使って調べたり考えたりした内容を発表することなどを通じた「思考力・判断力・表現力の育成」、新しい単元に入るときにこれから学習する内容を映像で見て興味・関心を高める「学習意欲の向上」、インターネットや百科事典ソフトを活用した調べ学習や、テレビ会議システムによる遠隔地や海外の学校とのコミュニケーションなどを通じた「情報や情報手段を主体的に選択し活用していくための資質の育成」を図ります。」と。

 IT教育の必要性は理解できます。しかし、あまりにも短絡的に導入されようとしている点に危惧を感じます。下記専門家の意見は示唆に富んでいます。ツールに頼るあまり、本来子どもが身につけることが望まれる思考力・判断力の育成が阻害されるようなことに

ならないようご一考をお願いします。

(参考)

「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望
                              2010年12月7
                              会長  白鳥 則郎

http://www.ipsj.or.jp/03somu/teigen/digital_demand.html

 このたび本会は,「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望(以下)を12月7日に文部科学省生涯学習政策局に提出いたしました.


一般社団法人 情報処理学会
社団法人日本化学会
日本化学会化学教育協議会
社団法人日本数学会
一般社団法人 日本地球惑星科学連合
日本統計学会
社団法人日本動物学会
日本物理教育学会
(
五十音順)

 

 理数系学会教育問題連絡会に加盟する上記諸学会は、「デジタル教科書」「デジタル教材」推進に際して、世界的に見て低くない我が国の教育水準を維持し、さらに向上させるために、必要と思われる事項のチェックリストを作成致しました。

 現在、関係各位において「デジタル教科書」「デジタル教材」(以下、単に「デジタル教科書」と記します)推進に向けての議論が進められていることと理解しております。理数系諸学会においても、今日の情報・通信技術により実現可能となった「デジタル教科書」の活用は、教育における重要な課題でありかつ、将来にわたってわが国の教育を高めていく上で必須のものであると理解しており、それぞれ、その教育における活用に取り組んで行きたいと考えています。

 しかしながら、「デジタル教科書」は、あくまでも教育の手段であり、目的とするのは教育を高めていくことであるのを忘れてはなりません。特に初等中等教育における「デジタル教科書」の活用に関しては、生徒・児童の発達過程およびその教育内容との関連についてこれまでに行われてきた検討・試行・研究を、技術の進化を踏まえて、さらに深めていく必要があります。

 このような考えから私たちは、「デジタル教科書」活用に向けての具対策が、教育そのものを高めていくという目的に適ったものになっていることを確認するため、下に示すとおりの9項目のチェックリストを作成致しました。このチェックリストは、理数系諸学会が「デジタル教科書」の活用に向けて活動する際に配慮すべき事項をまとめるという趣旨で作成したものですが、関係各位におかれましても、「デジタル教科書」の推進にあたっては、常にその施策が、本チェックリストの全項目を満たしていることを確認されますように、強く要望いたします。

事項1: 「デジタル教科書」の導入が、手を動かして実験や観察を行う時間の縮減につながらないこと。

事項2: 「デジタル教科書」において、虚構の映像を視聴させることのみで科学的事項の学習とすることが無いこと。

事項3: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が紙と筆記用具を使って考えながら作図や計算を進める活動の縮減につながらないこと。

事項4: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が自らの手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動の縮減につながらないこと。

事項5: 「デジタル教科書」の使用が、穴埋め形式や選択肢形式の問題による演習の比率増大につながらないこと。

事項6: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒どうしが直接的に考えや意見を交換しながら進める学習活動の縮減につながらないこと。

事項7: 「デジタル教科書」の使用により、授業の「プレゼンテーション化」や、児童・生徒に対するプレゼンテーション偏重・文章力軽視意識の植え付けが起きないようにすること。

事項8: 「デジタル教科書」の導入に際して、教員の教科指導能力が軽視されることがないように、また教員の教材研究がより充実するように配慮すること。

事項9: 「デジタル教科書」の導入に際しては、少なくとも当面の間は、現行の紙の教科書を併用し、評価や採択においては紙の教科書を基準とすること。

付記1 健康上の問題点に関する検討
 上に記した以外の点として、情報機器の長時間にわたる使用が、児童生徒の視力をはじめとする身体能力やその発達に悪影響を与える可能性についての懸念について指摘しておきます。私供はこの分野の専門家ではないため、この件については事項として挙げませんでしたが、研究開発校など限定的な範囲において、十分に時間をかけた調査を実施することにより、デジタル教科書が子供たちの健康に悪影響をもたらさないかどうかについて、まずは検証することが、デジタル教科書導入の教育効果について考える前段階として必要だと考えます。

付記2 児童・生徒のプライバシーに関する検討
 「デジタル教科書」に関連して、すべての児童・生徒の学習行動を電子的に記録・集約・保管して学習指導に役立てるという考えがあります。これが教育上有益であり得ることには異論ありませんが、当然ながらこのようなデータは高度なプライバシー情報です。児童・生徒ならびに保護者が認める者だけがこれらのデータにアクセスでき、また児童・生徒ならびに保護者がデータに対する制御を持つこと(必要な時に自分のデータを利用できるようにすること、またその意思に基づいてデータが確実に破棄可能なこと)を確実に保証すべきであり、その保証が行えるまでは記録・集約・保管を見合わせるべきだと考えます。

付記3 チェックリスト各事項の解説

事項1: 「デジタル教科書」の導入が、手を動かして実験や観察を行う時間の縮減につながらないこと。

解説: 理科においては、実際に実験などを行い、自然現象を観察するこ とが、本質的に重要です。実験なしで教材のみで学習を済ませた場合、 試験の点数は取れても、現実に理科的思考が必要な場面で対応できない おそれが大きいと考えます。したがって、デジタル教科書の教材を視聴・ 操作することで実験を代替し、実験の時間を「節約」するようなことが 起きないような配慮が必要です。なお、現状で既に、理科を十分学習せ ず、理科の実験が行えない教員の増加が問題になっていることから、そ のような現状を改善し、理科の実験実施への敷居を低くするようなデジ タル教材の導入は、大いに望まれることを付記します。

事項2: 「デジタル教科書」において、虚構の映像を視聴させることのみで、科学的事項の学習とすることが無いこと。

解説: 今日のデジタル映像技術の進歩はめざましく、「わかりやすい」 映像を生成することが容易におこなえます。従来の授業形態では難しかっ た、自然の記録映像等の視聴を行えるようにしたり、見ることができな い空間や電磁場などの概念を視覚化することで把握を助ける、という形 でのデジタル教材の導入は、大いに望まれることです。一方で、どんな 現象でも自由にしかも直接に観測や実験可能だという誤った直観を醸成 する危険性もあります。科学による自然の解明は、観測・計測困難なも のを観測・計測できるようにするための技術や、観測・計測できたごく 限られたデータを元に、モデルを構築して理解する活動によって支えら れています。そのような困難や達成感を生徒が身を持って体験できるよ う、デジタル映像の視聴は、教育上必要な範囲に留めるべきだと考えま す。

事項3: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が紙と筆記用具を使って考えながら作図や計算を進める活動の縮減につながらないこと。

解説:紙と筆記用具を用いて事項を整理したり、計算や証明の過程を適切 に配置する訓練を積むことは、理数系の各科目において非常に重要な位 置づけを占めます。これらのことがらをソフトウェア上で行うことも不 可能ではありませんが、初等中等教育段階では、紙と筆記用具のような 柔軟性や操作性に優るものはないと考えます。特に、学びの基本的な技 法である、ノートの取り方、直接動かすことができる教具や図を用いて 考える方法、観察や実験の結果を写真ではなく図や言葉で記録する方法、 表やグラフにまとめる方法、筆算等の計算の書き方、証明の書き方等が 十分に身についていない学齢において、紙と筆記用具をソフトウェアで 代替することは適切でないと考えます。

事項4: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が自らの手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動の縮減につながらないこと。
解説: 生徒が学習した内容を自分のものとして定着させるためには、自 発的に学習内容を記録・整理する時間を十分取ることが不可欠です。デ ジタル教科書の使用によって、学習内容が短時間に効果的に提示され、 また教師の提示内容と同じものが即時的に手元に残せたとしても、それ だけでは学習したことにならないのは当然です。デジタル教科書による 学習の「効率化」が、生徒が手と頭を働かせて学習内容の記録・整理を おこなう時間の縮減につながらないように、十分な配慮が必要です。な お、「効率化」によって生み出される時間の余裕を、生徒による自発的 な記録・整理のための時間増に充てられるなら、それは大変望ましいこ とだと考えます。

事項5: 「デジタル教科書」の使用が、穴埋め形式や選択肢形式の問題による演習の比率増大につながらないこと。

解説: 穴埋め形式や選択肢形式の問題は、生徒が問題全体を書き写すこ となく、解答欄だけに記入すれば済むことから、一見効率が良いように 思えます。しかし、児童・生徒が問題に関わる概念を十分に定着させる ためには、問題全体を書き写すなど、作業に一定の手間と時間を掛ける ことが重要です。したがって、デジタル教科書により、この時間を縮減 するような穴埋め形式や選択肢形式の問題の比率増大が起きないための 配慮が必要です。

事項6: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒どうしが直接的に考えや意見を交換しながら進める学習活動の縮減につながらないこと。

解説: 児童・生徒に科学的な考え方を身につけさせる上で、対象とする 事項について話し合う学習活動は、さまざまな捉え方があることを身近 に実感させ、それらを統合して真実を探究していく体験を持たせられる ため、非常に重要です。デジタル機器を通した意見交換も可能ではあり ますが、やりとりされる情報の密度や即時性の点では、対面での直接的 な意見交換のほうが優っているのが現状です。したがって、デジタル教 科書の使用により、児童・生徒どうしの直接的な意見交換を行う学習活 動が削減されることが無いような配慮が必要です。

事項7: 「デジタル教科書」の使用により、授業の「プレゼンテーション化」や、児童・生徒に対するプレゼンテーション偏重・文章力軽視意識の植え付けが起きないようにすること。

解説: プレゼンテーションソフトウェアは今日、世の中で広く使用され ていますが、その使い方の多くはカラフルな図や写真などで目を引き、 聞き手に「わかった気にさせ」「話者の主張を売り込む」ことを目的と したものです。しかし、スライドは筋道立てた文章を盛り込むものでは ないので、後からスライドを見ても正確な理由づけや論拠を読み取るこ とはできず、正確な情報伝達の文書として機能させることは難しいのが 実情です。このようなプレゼンテーションソフトウェアに対する批判や 警告、使用とりやめの提案は、情報技術の分野では1990年代から存在し ています。学校教育の目的は児童・生徒に「わかった気にさせる」こと ではなく「本当に理解させる」ことであり、また「自分の考えを筋道立 てた文章により説明する」能力を養うことでもあります。デジタル教科 書の使用によって、教員が「プレゼンテーションによって理解させた気 に」なったり、児童・生徒に「魅力的なスライドを作ることが大切」だ と誤解させるような事態が発生しないための配慮が必要です。

事項8: 「デジタル教科書」の導入に際して、教員の教科指導能力が軽視されることがないように、また教員の教材研究がより充実するように配慮すること。

解説: 動画をはじめとする一部のデジタル教材は、それを生徒に使用さ せておくだけで一定の時間が消費されるという特性を持ちます。このこ とは、当該教科に対する十分な指導能力を持たない教員でも、形の上で は授業をこなせているように見せかけられることにつながります。しか し、生徒の本質的な学習や理解のためには、教員の指導能力が本質的に 必要であり、なおかつ最重要の要因であることは言うまでもありません。 そして、新しい教材を導入するということは、その教室での使用に先だっ て、十分な教材研究が必要となることも明らかです。従って、デジタル 教科書の導入に当たっては、教員の教育能力を重視するという姿勢を明 確に打ち出すとともに、各教員が新たな教材や教育内容の変化に対応で きるだけの教材研究の時間を継続的に確保できるような配慮を強く求め ます。

事項9: 「デジタル教科書」の導入に際しては、少なくとも当面の間は、現行の紙の教科書を併用し、評価や採択においては紙の教科書を基準とすること。

解説: 「デジタル教科書」の導入に際して、紙媒体の検定教科書を全面 的に廃止して電子機器に移行するという考えがありますが、これは極め て大きな変化であり、十分な時間を掛けて得失を見極める必要がありま す。たとえば、これまでのe-learningなどにおける知見として、児童・ 生徒の中には一定時間(たとえば30分)以上、コンピュータ画面を見つづ けることが困難な者が含まれるとの報告がありますが、紙媒体の廃止は そのような者にとっては「教科書で学習できなくなる」という重大な問 題を招くことにつながります。このことを踏まえ、検定教科書について は、少なくとも見極めが済むまでは、紙媒体の使用を継続(ないし併用) すべきと考えます。また、教科書採択において、デジタル教科書のみを 対象とすることは、視覚効果や高価なアニメーションキャラクタの使用 などが結果的に大きく影響してしまい、肝心な記述内容の適切さ、学習 の進めやすさの評価がおろそかになる危険が大きいと考えます。このた め、少なくとも紙媒体が併用される当面の期間においては、あくまでも 紙の教科書を基準とし、そのデジタル版が併用される、という形を取る ことを要望します。

 以下の欄は、よろしければご記入ください。

性別

男性    女性

年齢

20歳未満 ・ 20歳代 ・ 30歳代 ・ 40歳代 ・ 50歳代 ・ 60歳代 ・ 70歳以上

住所

大阪市内  大阪市外

宛先

 〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号 大阪市役所内

大阪市教育委員会事務局 総務部総務課(企画グループ)あて

ファクシミリ:06-6202-7052  電子メール: kyoiku-plan@city.osaka.lg.jp

 

※ 電話など口頭でのご意見・ご提言はお受けできませんので、必ずこの用紙を使ってください。 なお、1枚に収まらない場合は、複数枚にまたがっても差し支えありません。

※ ご意見・ご提言に対する個別の回答はいたしかねますので、あらかじめご了承ください。

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