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「君が代」不起立処分大阪府・市人事委員会不服申立ならびに裁判提訴当該15名によるブログです。

一人でも抵抗することの意味~田中伸尚さん~

2014-09-22 11:36:51 | レイバーネット

“殺さない、殺されない、殺させない”、ーそう、この理念はアジア・太平洋戦争を体験した日本人とって、どうしても譲れない。ひと時代前には、当たり前のことのように思えたこの理念も、今では風前の灯とまではいかなくともかなり危ない。だから、私たちは、田中伸尚さんの話に耳を傾けたい。

レイバーネットHPより転載します。

 

一人でも抵抗することの意味~ノンフィクション作家・田中伸尚さん講演会

 

 9月20日東京しごとセンターで、ノンフィクション作家・田中伸尚さん(写真)の講演会が開かれた。テーマは「なぜ<抵抗>を書き続けるか」。50名収容のセミナー室はほぼ満員の盛況だった。田中さんは今年三冊の著作『抵抗のモダンガール作曲家・吉田隆子』『未完の戦時下抵抗』『行動する預言者 崔昌華 ある在日韓国人牧師の生涯』を立て続けに出版した。どれも戦中・戦後、国家や権力に抵抗し続けた人々を追っている。「国家主義・レイシズムが蔓延するいまの日本で、どうしても書かなければならなかった」と田中さんは言う。

 講演は、かれの著作活動の原点となった「自衛官合祀拒否訴訟」と「日の丸・君が代」問題との出会いにそって行われた。その中で、ただ一人の抵抗の意味をどうとらえるかという問題提起があった。

 「従っても従わなくても同じ、全体の荷担状況は変わらないのではないかという逡巡や迷いは、もし抵抗する者がゼロになったらという問いのもとに違うものが見えてくるはず、それは戦時下の抵抗とも重なる」と田中さん。日本陸軍兵士として中国戦線を二年間従軍しながら,人を殺すことを拒み続けた一人のキリスト者・渡部良三の「抵抗」の意味が語られた。またパレスチナ人の文学研究者 E・サイードの、「いつもだれか一人は話を聞いてくれた。その一人が沈黙しなければ、私の訴えは成功なのです」という言葉も紹介された。

 最後に田中さんはこう語った。「<抵抗>を書き続けても、売れないし食えない。しかし戦後を生きる私たちには、アジアと日本の戦争被害者へのコベナント(誓約)を守る責任がある。その誓約とは“殺さない、殺されない、殺させない”ということで、それを文字化したのが日本国憲法だ。抵抗の事実を発掘し、伝えるのはわたしの役目で、表現者としてのわたしができる抵抗だと思っている。作家の井上ひさしは、小林多喜二を主人公にした『組曲虐殺』の中で、一人でも沈黙しなければ継承可能と書いている。絶望から希望へと橋渡しをするのが、沈黙しない精神だ」。

 主催は「河原井さん根津さんらの君が代解雇をさせない会」で、「君が代不起立」を続ける教員の田中聡史さんも参加した。2004年から始まる「君が代強制」に対する抵抗の意義が、歴史的に照らし出される思いがした。市民の俳句排除から、朝日バッシングまで、言論・表現の自由が脅かされる毎日、後ろ向きになりがちな気持ちに一筋の希望をもらった講演会だった。(佐々木有美)

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茶番でしかない教委の教科書採択

2014-07-28 06:28:38 | レイバーネット

根津公子の都教委傍聴記(2014/7/24) 

茶番でしかない、教育委員による教科書採択

 レイバーネットhpより転載

 この日の公開議題は、①来年度の都立特別支援学校の小学部及び中学部教科書の採択について ②来年度の都立中学校及び中等学校(前期課程)用教科書の採択についてのみ。他は校長の任命や懲戒処分等、非公開議題であった。

 ①②では、文科省検定済み教科書を使用する都立特別支援学校(小学部・中学部)用、都立中学校・中等学校(前期中学校課程)用2015年度使用の教科書採択が行われた。すでに都教委ホームページに採択の結果が掲載されている。義務教育段階の学校の教科書は、教科用図書の無償措置に関する法律によって、4年間同一教科書を使用することが定められている。中学校課程は2015年度が4年目となるため、今年度と同じ教科書を使用することが確認された。小学校課程は今年で4年を経過するので、この定例会で新たに採択された。

 指導部長から採択の流れの説明と議案提案がなされた。採択方法は、「『文科省検定済み教科書一覧』の中から学校種別、教科(種目)ごとに1種の教科書を教育委員が選定し、採択する」と定めている。委員長は「事務局があらかじめ採択すべき教科書の候補を1種又は数種に限定する、いわゆる絞り込みを行ってはいけないとされている」と説明を加えた。高校日本史教科書選定の際、都教委が「文部省検定済み教科書一覧」に掲載された実教出版社版を事前に除外し、選定させなかったのは、「絞り込み」とどう違うのか、その説明を抜きにこれを言えてしまう厚顔無恥さ。私は思わず、委員長の顔を見上げてしまった。

 提案を終え、選定記入用紙が各教育委員に配られ、選定、回収、集計、結果発表された。高校や中学校用の採択では、「都教委の考え」と異なる教科書は選定・採択できないように都教委は介入するが、小学校用では、その必要がない。法律に則って粛々と採択したという印象を与えるかのよう。茶番でしかない。各教育委員からは一言の発言もなかった。意見を擦り合わせることによって考えは深化するのに、それはしないのだ。私は八王子市教委の教科書採択を何度か傍聴したことがあるが、そこでは、きちんと論議がされていた。一人も発言せずに選定・採決となるようなことはなかった。

 前回7月10日の定例会において、都教科用図書選定審議会が「適正と答申した「教科書調査研究資料」が配布されていた。前回の定例会は傍聴できなかったために、その資料を傍聴された人から譲っていただいた。 それを見ると、都教委のこだわりがよくわかる。高校の教科書選定・採択の時と同じだ。

 国語の教科書については「神話や伝承を知り、日本文化や伝統に関心を持たせる資料」であるか否か、と並列して、「北朝鮮による拉致問題の扱い」があるか否かを表示する。結果は「なし」とされているが、これを調査し表示することは、普通の感覚ではしないであろうに、資料作成にかかわった人の誰一人、異議を述べなかったということなのか。

 社会科では、「我が国の位置と領土をめぐる問題の扱い」「国旗・国歌の扱い」「神話や伝承を知り、日本文化や伝統に関心を持たせる資料」「北朝鮮による拉致問題の扱い」「防災や、自然災害時における関係機関の役割等の扱い」「一次エネルギー及び再生可能エネルギーの扱い」「オリンピック、パラリンピックの扱い」があるか否かを表示する。東京書籍の地図帳については、「大きな地図と写真で都心の様子を表してあり、2020年オリンピック・パラリンピックの主な会場予定地を確認することができる」と紹介する。こうした資料を参考にし、「都教委の考え」と異なるものは排除する方針の下、教育委員によって教科書採択がされるのは、迷惑な話だ。オリンピック・パラリンピックの主な会場予定地を確認したら、差し迫った課題である貧困や原発汚染が解決に向かうとでもいうのだろうか。

 安倍政権は小学校教科書検定に際し、日本政府の立場を教育現場で徹底させるように迫った。それを受け、どの教科書会社も小学校学習指導要領には書かれていない「領土問題」を入れるなど、国定教科書化に向かっている。敵愾心をあおり、戦争要員として子どもたちを戦場に送り込む教育に、教科書会社も加担していることの問題が大きい。

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「君が代」に疑義を持つものはどうしても葬り去りたいようです!

2014-07-13 16:25:41 | レイバーネット

「君が代」に疑問を持つ教員・市民をなんとしても「悪人」い仕立てあげたいという強い意思のようなものを感じます。いったいこれはなんなのでしょうか?なぜ、集団的自衛権行使容認が憲法を無視して閣議決定された今、ニッポンを戦争国家にしようとする勢力が暗躍していると思うのは杞憂でしょうか。

板橋特別支援学校が警官を導入したことに関して、7月10日抗議・要請行動を行いました

                       報告 根津公子

 河原井・根津らの「君が代」解雇をさせない会の根津公子です。 田中聡史さん「君が代」不起立処分にかかわる「服務事故再発防止研修」が行われた6月10日の朝、私たちは思想転向を強要する同「研修」をやめるよう、校長に要請書を手渡すために、板橋特別支援学校を8人で訪ねました。外来者入口を通り、受付窓口に行って、そこに掲示された通りに受付手続きをしている最中に、同校副校長は「不法侵入、不法滞在」と大きな声を上げ、携帯電話から警察に出動を要請。通報から10分とかからずに、私服警官・制服警官を合わせて23名の警官がやってきて、私たちは要請書を手渡すことができないままに、校地から排除されました。

 

 学校教育にかかわり市民が校長に意見を述べ、要請することはしばしばあります。それに対し、校長は意見の違いを超えて聴くべき立場にあります。しかし、同校校長・副校長はそれをしないばかりか、警察を導入したのですから言語道断です。

 そこで、当会では、6月29日に当会の総会を行った折、校長、出動した高島平警察署長、校長に指導・助言をしたと思われる都教委に対し、「抗議声明」を出すことを総会参加者一同で確認し、本日7月10日、それを持って、高島平警察署、板橋特別支援学校、都教委を5人(途中から6人)で訪ねました。以下は、その報告です。

 最初に訪ねたのは、高島平警察署。前もって、日にちと来意を伝えていました。受付で手続きを済ますと、警務課長代理(高橋氏)と警務課職員(亀井氏)が現れ、「10分間、2名に限り面会に応じる」と言いました。私たちは5人で話を訊きたいし各自の思いを届けたいと言いましたが、「その必要はない、抗議なら(あなたたちの)ブログやメールでやればいいではないか」と初対面の市民に向かって言いました。「なぜ2名に限定するのか」と訊くと、「こちらが2名だから」だと言いました。数の力で決めることではないのに、2人は対決姿勢あらわにし、更に「10分のうちすでに2分使った」と脅しました。

 仕方なく、こちらが2名(一人は根津)に絞ると、私たち2人は小さな部屋に通されました。「今12時23分。今から10分間です」と課長。私たちは抗議声明を読み上げ、6月10日の事実を押さえたうえで、次の3点の質問をしました。①出動要請をした際に副校長が言ったことばは、「8人が不法侵入、不法滞在した」だけであった。それだけで警察が出動したのは、事前に校長から出動要請を受けていたということか ②副校長は出動要請を言うと、すぐに携帯電話を切った。そのことから推察するに、出動要請を受けた警察には、事実確認をした様子が見受けられなかった。警察は副校長に状況確認をしたか否か。③一般的に、状況確認をせずに出動することはあることなのか。

 質問に対し課長は「即答はできない」と言うので、調査をしたうえでの回答を要求したところ、「回答するかはわからない。回答の必要がない」と居丈高。「回答が来なければ、そちらに電話を入れます」と言うと、それには拒否はしませんでした。しかし、抗議声明を渡そうとすると、「あなた方の質問はメモした。この抗議文は必要ない。抗議は受け取らない」と、差し出した「抗議声明」を受け取りはせず、「捨てますよ」と繰り返し言いました。「署長に渡してほしいのです」と言っても「受け取らない」の一点張り。「抗議声明」は机上に置かれたままでした。「抗議は受けないということは、警察が間違いをすることはないということですか」と言うと、課長代理ではない職員が「そうだ」と。「市民の権利を保護すること、市民の生活を守ることは警察の仕事でしょう」と言うと、「警察の仕事は秩序維持」と課長代理。警察は、市民を守るのではなく、国家秩序維持のために存すると平然と言葉にしたことに唖然とした次第です。

 13時5分、板橋特別支援学校の受付窓口を訪ね、受付名簿に時刻と私たちの名前、来校目的を記入。窓口業務に当たる経営企画室長が受付名簿に目を通し、今日も私たちに応対したので、「校長にお会いし、抗議文を手渡したい。校長が会わないというのであれば、副校長にお会いしたい。時間は1,2分で結構です」と来意を告げると、室長は「副校長は、今日は不在です」と言い、困惑顔をしながら、隣室の校長室に行き、すぐに戻ってきて、「校長はお会いしないと言っています」。いつものパターンでした。「会わない理由は何ですか」と訊くと、室長はまた、校長室に訊きに行き戻って、「会う必要がないということでした」。

 校長は会いたくない人間には会わないという学校経営方針のよう。室長には校長の尻拭いはやめてほしいと話しをし、「抗議声明」を校長に渡してもらうよう話をして引き上げました。

 そして15時、都庁で都教委教育情報課長(ほかに2名)に面会(写真上)。事実経過やこちらの要請を知って臨んでほしいと思ったので、都教委の要求に応じて、事前に「抗議声明」を送っておきました。そこで、事実を把握しているかを尋ねたところ、課長は私たちがホームページ等に流した報告で、動画も観て事実をつかんでいるということでしたので、すぐに次の質問をしました。

1 校長が一人の判断で警察を導入したとは考えられない。都教委に指導・助言をしたと思うが、その場合、指導・助言するのはどの部署か。

2 真下氏個人に宛てたのではなく、公人としての真下校長にあてた文書を真下校長は受け取らないのだが、公人としてそのようなことが許されるのか。それが「校長の責任と判断」とは思えないが、いかがか。

1 については、「担当所管の職員課と研修センターではないか」と課長は言っていましたが、「確認する」との返事。①②とも、後日の回答ということです。

その上で、「抗議声明」を手渡しました。最後に課長は、「今までに校長が今回のように(警察に出動を要請しようと)判断するような、板橋特別支援学校の研修、研修センターでの再発防止研修で騒然としたこと、怒鳴り合いはなかったのか」と聞いてきました。私たちは、「私たちが大声をあげたりしたことは一切ありません」と答えました。市民の声を聴くということは公的施設責任者の任務ですから、私たちは引き続き求めていきます。

以下に、抗議声明を貼り付けます。

  ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ 

校長への要請行動に対し、警官を導入したことについての抗議声明

                                   2014年6月29日
東京都教育委員会 教育長 比留間英人様
板橋特別支援学校 校長 真下智様
高島平警察署 署長 吉田武司様

 6月10日、板橋特別支援学校・田中聡史教諭に対し東京都教育委員会(以下、都教委と言う)が強行した「服務事故再発防止研修」に対し、私たち市民8名が同研修の中止を求める要請書を真下校長に渡そうと、板橋特別支援学校を訪れた際、同校副校長は私たちが訪問の目的を話しているにもかかわらずそれを聞こうとはせず、「不法侵入、不法滞在だ」と騒ぎ立て、直ちに警察に通報しました。

 

 それに対し警察署は、制服11人、私服12人を同校に送り込みました。不思議なことに、一切の暴力を働かない私たち8人に対し、警察署はその確認を副校長に求めもせずに、23人という異常としか言いようのない人数を、通報から10分とは置かずに送り込んだのです。予め、学校からの要請を受けて、待機していたことをうかがわせるものでした。

 私たち8人は、同校受付窓口で正規の手続きをし、校長に要請書を手渡そうとしただけのこと、市民としての当然の権利を行使しただけのことでした。警官を導入して強制排除されるようなことはしていません。都民に開かれたはずの公立学校で、市民の声を聴こうともせず、施設管理権を楯に警察に通報し、市民の正当な権利を奪った真下校長及び、学校からの通報に確認もせずに警官を出動させた警察署長に、強く抗議し、猛省を求めます。

 ところで、真下校長が警察を導入したことに対し、都教委には校長に反省を迫り、今後そのようなことのないよう、指導する責任があります。良質の教育を子どもたちに与えようとするならば、異なる考えに真摯に耳を傾け、意見を擦りあわせようとする姿勢や度量を保持すべきです。子どもたちが学ぶ学校に、警察を導入することなど、してはならないことです。

 また、この日、板橋特別支援学校は年間計画に組まれた学校公開日でした。保護者や地域の関係者を招いているのですから、校長はその任に専念すべきなのに、都教委はそれを承知の上で、校長を「服務事故再発防止研修」に当たらせました。都教委は判断能力を失ったとしか言いようがありません。

 都教委に対しても強く抗議し、猛省を求めます。    併せて次のことを3者に要求します。

1.校長は、市民の要請を差別せずに受け付け、誠実に対応すること。

2. 警察は、学校からの出動要請に、その場の状況を確かめもせずに出動しないこと。

3. 都教委は、市民の要請に対し、校長が警察を導入したことについて、校長を指導すること。「都教委の考えと異なる」市民の声も広く聴くよう、校長を指導すること。

子どもたちへの「日の丸・君が代」の刷り込みに象徴される都教委の教育行政に終止符を打つことこそが、一人ひとりの子どもたちの学びを保障し、学校を、教育を受ける場に蘇らせることにつながります。

以上、本日、ここに参集した私たちは声明を発し、校長・都教委・警察署に反省を要求するものです。

河原井さん・根津さんらの「君が代」解雇をさせない会
2014年度総会参加者一同

*6.10事件に関する報道

 

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根津公子の都教委傍聴記~古典の教科書に拉致問題、あるわけないでしょ!

2014-06-28 22:55:43 | レイバーネット

お馴染み、根津公子さんの都教委傍聴記です。しかし、大阪にしても東京にしても、教科書は政界財界のプロパガンダでもないはずですが。

根津公子の都教委傍聴記(2014.6.26)

古典の教科書に拉致問題、あるわけないでしょ!

 

 公開議題は今年都議会定例会において可決・成立した都いじめ防止対策推進条例に基づき、都教委が関係する機関(都いじめ問題対策連絡協議会、都教委いじめ問題対策委員会)の規則の制定についてという二つの議案。発言なしで可決された。

 報告は①来年度都立高用教科書の調査研究資料について ②昨年度「都立高校学力スタンダード」推進校の取り組みについて ③特別支援学校における宿泊防災訓練の試行実施について ④小中学校事務共同実施の試行の結果について。

 ①は、7月から8月にかけて行われる高校教科書採択に当たり、昨年度検定に合格した教科書71点について調査研究した結果を一覧表にまとめたものの報告であった。専門教科(農業、工業、商業、情報、福祉)を除けば、国語(国語表現 現代文A 古典A 古典B)、理科(生物)、芸術(音楽Ⅲ 美術Ⅲ 書道Ⅲ)、外国語(コミュニケーション英語Ⅱ 英語表現Ⅱ)のみ。他の教科の教科書については、昨年の選定・採択の際に調査研究資料をつくっている。

 調査する内容として、「学習指導要領の各教科・科目の目標等を踏まえ」るだけでなく、またもや、特別調査項目「北朝鮮による拉致問題の扱い」「一次エネルギー及び再生可能エネルギーの扱い」「オリンピック、パラリンピックの扱い」を挙げる。国語、外国語については、すべての教科書について、「北朝鮮による拉致問題の扱い」を調査項目にあげ、「調査の結果、記載のないことを確認した」とある。(当り前だろう!)古典に拉致問題とは、首をかしげてしまう。理科については、「一次エネルギー及び再生可能エネルギーの扱い」を調査項目にあげ、その扱いがあるのは、実教出版の「生物」のみ。バイオマス燃料についての記載であった。何とも皮肉なことだ。

 日本史教科書は昨年、一昨年に教科書検定を終えており、前回6月12日の定例会で、その記述(実教出版:「日の丸・君が代」に関し、「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」)に変更がなければ、昨年の「見解」を今年も教育長名で学校に通知することが議決されていた。指導部長は、今日もその確認を繰り返した。「見解」の撤回を求める要請等がたくさん寄せられても、一切の論議、説明をせずに強行するとは、厚顔無恥と言うしかない。

 ②は、2013年度から2年間、32校を推進校に指定し、学力定着を図るために校内で組織的・効果的な指導・評価を行うという取り組み。1年間の指導を経て2月、推進校の1年生を対象に、「基礎」「応用」「発展」の3コースに分けて学力テスト(ここでもテスト作りにベネッセが参加)を実施した結果を活用し、今年度は、教材の工夫や放課後及び長期休業中の補習の取り組みをしていること、対象を推進校の1,2年生と全都立校の1年生に拡大すること、等の報告。委員は、「成績下位層をどうするか」(木村委員長)、「いい大学に入ってもらうのも大事だが、卒業後社会に出る下位層の子の学力も」(竹花委員)と言い、「経済界の期待に応えた素晴らしい取り組み」(遠藤委員)と言う。

 次世代リーダー育成道場、国際バカロレア、進学重点校などのエリート育成にはお金をつぎ込む都教委だが、「成績下位層」の子どもの学力を上げるために予算を計上するという話にはならなかった。学力テストの作成をベネッセと共同でするために不必要なお金を使うだけのことだろう。しかも、補習等に費やす教員の労働強化には一切触れないで、教育委員のほとんどが補習の推進にもろ手を挙げ賛成する始末。学力をあげることを本気で考えるのであれば、まずは、小学校段階から、「先進国」で一般的となっている15~20人学級を実現することではないのか。

 ④もひどい話だ。今は小中学校に1校1名の都費の事務職員が配置されている。試行は、数校を一つの単位とし、そのうちの1校を拠点校として、そこに事務職員を集める。その事務職員は、数校の経理・給与・調査事務等を集中処理する。他の学校には支援員(非常勤)を配置し、副校長の補佐や窓口業務に従事させるというものだ。副校長が調査等の事務に追われ、学校経営等の本来の仕事に力を注げないこと、事務職員が一人職場のため、事務処理のチェック体制が不十分。大量退職により、事務処理ノウハウの継承等が困難というのが、その理由だ。江東区教委、武蔵村山市教委で昨年度これを試行した結果、成果が上がったので、今後他にも拡大していくという。

 これまでは、学校の事情を知る事務職員が職員の声を拾い、学校予算を上手に配分してきたが、そうしたことが不可能になるのではと心配になる。都教委は合理化、効率化による弊害を考えていないのではないか。教育破壊にひた走る都教委である。

 *写真=佐藤茂美

 

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根津公子の都教委傍聴記

2014-06-16 19:23:44 | レイバーネット

根津公子さんの都教委傍聴記が届きました。教育委員会制度が改正(悪)され、ますます地域住民から遠いものになることが予想されます。だからこそ、今、教育委員会会議を傍聴し、その実態を伝える努力が必要かもしれません。

●根津公子の都教委傍聴記 2014.6.12

公開の場で意見を言えないような教育委員は辞任してほしい

 

 今日の公開議題は報告が4点、①「都立高校入学者選抜学力検査の採点の誤りに係る答案の点検結果(第一次調査)と今後の方針について ②教科書選定審議会の答申について ③教科書採択の日程について ④「企業等による体験型講座」について、だった。①については教育委員全員から発言があったが、②以降の議題については、誰一人発言する委員はいなかった。

①について。昨年度、一昨年度の答案(一昨年度答案は保管期間を超えたため廃棄した学校が57校)について、学校で再点検し、都教委でも点検したところ、現時点で2,211件(昨年度1,139件、一昨年度1,072件)の採点ミスが見つかった。引き続き点検をし、8月末に点検結果を公表する。採点ミスの発生原因について学校に聞き取り調査をしたところ、ア.「採点後3人が点検」の形骸化(採点に誤りがないという思い込みなど) イ.検査日から発表まで中3日間しかないこと ウ.記述と記号選択が混在した問題で採点しづらい エ.同一会場で複数教科が採点することから来る焦りや、授業や行事を並行して行うことによる集中力持続の困難さ 等が挙げられた。再発防止に向けては、「都立高校入試 調査・改善委員会」を設置し、これまでに2回の会議を開催。今後は、8月下旬のプレス発表まで6回の会議を公開で行うということだった。

 木村委員長の、「答案にじかに採点するのではミスは防げない。答案は汚さないという大学入試の採点方法に学び、採点のシステムを変えるべき」という提案にはうなずくことができた。答案をコピーして複数の人が採点し、突き合わせるというやり方だ。しかし、これを実現するには、時間と人手の確保がなされなければならない。委員長はその点になぜ、言及しないのか。

 竹花委員は「採点ミスの個人を特定できるか」と質問。「できる」との返事に、「応分の責任をわからせねばならない。都教委もその例外ではないが」と。山口委員に至っては、「改善委員会が公開の会議では、言おうと思ったことが言えなくなることもある。どの部分を公開にするか、非公開にするか、考えてほしい」と言った。山口委員自身が、公開の定例会では言えなかったり、発言内容を変えたりしたことがあるのだろうか。疑念が生じた。公開の場で意見を言えないような人には、委員を辞任していただきたい。

 また、昨年6月27日の定例会において、実教出版「高校日本史A」「高校日本史B」を学校が選定しないよう、都教委の「見解」を議決するに当たり、6月13日の定例会の後に非公開の懇談会を持ち、そこで「見解」を事実上決定するという、委員自らが教育委員会制度を否定し、権力を濫用する非行をはたらいたが、非公開の会で事前に決定することに山口委員が同意したのは、傍聴者に聴かれると「言おうと思ったことが言えなくなる」からだったのか。

 ②来年度から使用する小学校教科書の採択にあたり、審議会が答申した教科書調査研究資料が配布され、報告がされた。社会科の「調査項目の具体的な内容」の〈その他〉には、*1領土をめぐる問題、*2国旗国歌の扱い、*3神話や伝承を知り、日本文化や伝統に関心を持たせる資料、*4北朝鮮拉致問題の扱い、*5防災や自然災害時における関係機関の役割、*6一次エネルギー及び再生可能エネルギーの扱い、*7オリンピック・パラリンピックの扱いについて、が列挙され、各社の記述を並べている。都教委の関心はここにあると言わんばかりの答申内容だ。

 都教委の答申内容も偏ったものではあるが、改定教科書は現行教科書と比べて、各段と政府の考えを教え込む教科書となっていることが歴然とする。現行教科書は、領土についての記載は一切なかったところ、改定教科書はどれも、「北方領土は日本固有の領土  ソビエト連邦(今のロシア連邦)が不法に占拠している」「竹島は日本固有の領土 韓国が不法に占拠」「尖閣諸島は固有の領土 中国がその領有を主張」と、子どもたちは5年生、6年生と2年続けて同じことを学ばされる。戦前の教科書が辿った道を再び、である。

 ③について。小学校教科書の採択が7月に、高校教科書の採択が8月に行われることになっていて、その日程が示された。しかし、日程だけの報告ではなかった。

 昨年の高校教科書採択の際に、実教出版「高校日本史A」「高校日本史B」が国旗・国歌にかかわり、「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述したことに対し、都教委が「都教育委員会の考え方と異なるものである」から「使用することは適切でないと考える」とした「見解」を出したことについて、撤回を求める請願等が多数、都教委に届いたのを知りながら、今年も、「当該記述に変更がないことが確認できた場合は、都教委は各都立学校長宛に、昨年の「見解」を踏まえて教科書選定をするよう、教育長名の通知を出す」という。これが、一人の発言もなしに確認された。 先ほども触れたが、「見解」の決定は、非公開の懇談会で行った。堂々と公開できなかったことを教育委員は、恥とは思わないのだろうか。そして今年も、その上塗りをすることに対するためらいが一人としてないのだろうか。持論を堂々と展開できない教育委員たち、ということだ。悲しすぎる。

 腐りきった教育委員たちに怒りをぶつけたい衝動に駆られるが、傍聴禁止とされないために、声には出さず。

*写真=佐藤茂美

 

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