子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会の「国葬」閣議決定反対、撤回要求を転載します!
岸田政権による安倍元首相の「国葬」閣議決定に反対し、撤回を要求する
2022年8月2日
子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会
1.7月22日、岸田政権は、安倍晋三元首相の「国葬」を9月27日に実施することを閣議決定した。「国葬」に厳しい批判の声がある中で、法的根拠もないまま、国会審議さえ行わず、強行決定したのである。 弔意は個人の思想信条の問題であり、国家が個人に強制してはならないものである。私たちは、「国葬」閣議決定に抗議するとともに、撤回を要求する。すべての人々への安倍賛美と弔意の強制に反対する。学校現場での弔意の強制に反対する。
2.安倍元首相は、首相在任中、「教育再生」を中心的課題として主張し、教科書の改悪、教育の破壊を実行してきた張本人である。私たちは、以下のような教育政策を安倍元首相の「功績」としてたたえることなど断じてできない。
(1)安倍元首相は、自民党組織、「教科書議連」を活用し、扶桑社/育鵬社教科書採択を積極的に推進した。2001年、安倍元首相は、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(「教科書議連)の事務局長に就任し、扶桑社教科書の採択活動を全面的にバックアップした。2003年には自民党幹事長に就任し、2005年中学校採択で、扶桑社教科書採択に取り組むように自民党地方組織に通達を出した(2004年6月)。2004年6月と2005年3月には、全国の自民党地方議員を東京に集めて教科書採択を目指す決起集会を開催した。2011年には、「教科書議連」の顧問に就任し、2011年採択、2015年採択の育鵬社教科書の採択に向けて暗躍した。2012年、高校教科書採択に際しては、自民党文教部会に文科省官僚を呼びつけ、「自分は総理のときに、『いわゆる従軍慰安婦の強制連行はなかった』と国会で答弁したが、一体、いつ変更したのか?なぜ(政府答弁を)無視するのか?」と詰め寄った。明らかな政治圧力であった。
(2)安倍第1次政権は、憲法改正の先取りとして教育基本法を全面改定した。教育の目的を個人の人格の形成から国家に役立つ人材の育成へと根本的に転換させた。教育への政治・行政の介入を抑制する規定を容認する規定に転換させた。その後、改悪された教育基本法の教育の目的にそって学習指導要領を改訂し、教科書記述を後退させていった。
(3)第2次安倍政権は、「教育再生」を掲げて、教育と教科書への政治介入を強行してきた。2014年には、下村文科大臣(当時)と歩調を合わせて教科書検定基準を改悪した。「バランスのとれた記述」を理由に、日本軍「慰安婦」、南京大虐殺(「南京事件」)、強制連行など日本の侵略戦争と植民地支配に関する記述を攻撃した。さらには、閣議決定などの政府見解や最高裁判決に基づいた記述を要求し、学校への国歌・国旗の強制に関する記述、領土問題や集団的自衛権等の記述で政府見解を強制した。
(4)安倍元首相は、2015年に教育委員会制度を改悪し、教育長の権限強化と総合教育会議の設置を強行した。首長は、総合教育会議を通じて「(教育の)大綱」を作成し、教育内容について強力な介入を行うようになった。教育の独立性、自立性を完全にないがしろにする体制を作ったのである。大阪での「大阪維新の会」首長の教育介入は、これによって堂々と行われるようになった。
(5)安倍元首相は、「首長が教育について強い信念を持っていれば、その信念に基づいて教育委員を替えていくことができる」と公言していた。2014年6月には、安倍元首相の主張に同調する首長が集まり、育鵬社教科書を採択させるための「実行」部隊、教育再生首長会議を設立した。2015年の中学校採択では育鵬社が採択率(歴史:6.3%、公民:5.7%)を伸ばす大きな原動力となった。
安倍元首相は、自民党組織、教育再生首長会議、文科省、そして日本会議等の右派団体をフル稼働し、育鵬社採択に動いたのであった。
(6)安倍元首相は、大阪で「維新」首長を全面的に支援し、大阪市や東大阪市、泉佐野市などでの育鵬社採択に大きな役割を果たした。出発点は、2012年2月、日本教育再生機構の「教育再生民間タウンミーティング」において、安倍元首相と松井大阪府知事(当時)、八木秀次理事長(日本教育再生機構)が登壇したことであった。安倍元首相は、「維新」が大阪で進めようとしていた「教育基本条例」「職員基本条例」を絶賛し、大阪でも横浜市のように首長主導で育鵬社採択を目指すようにエールを送ったのであった。その後、「維新」は安倍元首相の言葉通り、大阪での育鵬社採択をやってのけたのであった。安倍元首相は、森友学園の小学校設置の動きと併せて、大阪での育鵬社の大量採択に重大な役割を担ったのである。
(7)安倍「教育再生」政策の目玉の一つが道徳の教科化であった。道徳の教科化は、個人の思想・信条、内心に踏み込み、国家のための人材をつくるために「愛国心」などを植え付けるものであり、戦後、自民党が繰り返し画策しながら実現することができなかった悲願であった。それを安倍政権が実現したのであった。
3.岸田政権は、安倍元首相の「国葬」で追悼することで、安倍元首相の「業績」を賛美することにとどまらず、それをすべの人々に押しつけようとしている。さらには、安倍政治を継承する岸田政権への支持を取り付けることを狙っている。日本国憲法の思想良心の自由を蹂躙する憲法違反そのものである。
そもそも「国葬」の法的根拠はない。1947年、「国葬令」は、大日本帝国憲法下の廃止とともに失効している。日本国憲法とは相容れないからであった。私たちは、憲法違反の「国葬」に強く反対し、撤回を要求する。
以上