不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Il Ritorno del Bacco di Giambologna

2006-09-26 06:38:31 | アート・文化

Bacco(バッコ:バッカス)とはローマ神話の酒の神。
ギリシャ神話の酒の神である
Dioniso(ディオニソ:ディオニソス)と同格。
このローマ神話とギリシャ神話の
複雑な絡み合いがよくわからない私。
よく間違えます。

イタリアでは紀元2世紀ごろから
ワインの神、酒飲みの悪習慣の神として知られ
古代ローマの社会に広く浸透していたとか。
ただし社会に悪影響を与える面ばかりがあまりに広く普及したため
古代ローマの元老院は紀元前186年に宗教的な酒宴の儀式を
一部禁止するほどだったとか。
神の名前は「乱痴気騒ぎ」を意味するBaccanaleに
由来しているということからも推し量ることができます。
何事も度を過ぎてはいけないのです。

妖艶な酒の神はどの時代にも
芸術作品のテーマとして好まれています。
有名なものには

Bacco_caravaggio
Caravaggio(カラヴァッジョ)が描いた
目のうつろな酔っ払い神や
Bacco_michelangelo
Michelangelo(ミケランジェロ)が製作した
グラマラスな大理石彫刻などがあります。
私はバッカスの後ろに隠れるパンの卑屈な笑い顔が好き。

前者はローマのボルゲーゼ美術館に
後者はフィレンツェのバルジェッロ博物館に収蔵。

ルネッサンスからマニエリスムの時代を生きた彫刻家
Giambologna(ジャンボローニャ)は
ブロンズ像でバッカスを表現。
フィレンツェの銀行家であった
Lottanzio Cortesi(ロッタンツィオ・コルテージ)の依頼によって
1560年から1570年にかけて制作された作品。

フィレンツェのPonte Vecchio(ヴェッキオ橋)を渡りきると
Borgo San Jacopo(ボルゴ・サン・ヤコポ)への入り口が
小さな広場になっています。
この広場の一角にNicchia(壁がん)があり
小さな水のみ場になっています。
ここには数年前までジャンボローニャのバッカスの
ブロンズ像のオリジナルが置かれていましたが
修復のため撤去されその修復と複製製作が完了。

オリジナルはバルジェッロ博物館収蔵となり
ミケランジェロのバッカスと同じ展示室に展示されることに決定し
ボルゴ・サン・ヤコポのニッキアには複製がようやく戻ってきました。
Bacco_giambologna
酒盃を傾けてうつむき加減に歩を進めるバッカス。
精神は古代ローマから受け継がれ、
肉体にはルネッサンスの息吹。

屋根のない美術館・フィレンツェに
またすばらしい作品がひとつ戻ってきました。

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