不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Biblioteca Nazionale Centrale di Firenze

2007-04-03 07:10:10 | アート・文化

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ヨーロッパ有数の、
しかもイタリア国内最大の図書館がフィレンツェにあります。
実に蔵書数は400万冊。
それに加えて雑誌類8万冊、写稿2万5千冊、
インキュナプラ3700冊、手紙類70万通で、
書籍をずらりと並べると
延べ108キロになるといわれています。
1966年のアルノ川の洪水で大きな被害を受けたことでも有名です。

元々はAntonio Magliabchi(アントニオ・マリアベキ)の遺書により
1714年にフィレンツェに贈呈された
30000冊のコレクションがベースとなっています。
トスカーナ大公が1737年にそれを補充して、
フィレンツェで発行されたものをすべて集める図書館として整備、
1743年にはトスカーナ一帯で発行された書物へ蔵書を拡大。

当初は現在のウフィツィ美術館のある建物の中に
蔵書管理室も含め図書館機能が置かれていたのですが
1911年からウフィツィよりも上流の
アルノ川沿いに新しく建築が始まり1935年からそちらに移動。

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表面積10000平方メートルといわれる現在の敷地は
サンタ・クローチェ教会にも隣接していて
図書館の一部には教会の回廊も含まれています。
設計・建築はCesare Bazzani
(チェーザレ・バッザーニ)によるものですが
建築美観批判や経済的理由から
実現されなかったオリジナルの計画は数多くあり、
そのため1935年の完成当初から
図書館としての機能的な部分が欠けるといわれていました。
後にVincenzo Mazzei(ヴィンチェンツォ・マッツェイ)が
拡張工事を行いほぼ現在の形に整えています。

イタリア統一後まもなくのフィレンツェは
ローマへの遷都の準備が整うまでの
暫定期間(1865年-1871年)のみイタリアの首都となり、
その時代に国立図書館の整備が決定したため、
首都ではなくなった後も、元々の蔵書の豊富さもあり、
それに値するということで
「国立中央図書館」だけは残っているのです。

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イタリア統一に伴い、それまで都市国家として
それぞれ文化的発展を遂げてきた
イタリア各地の芸術様式を取り入れて
国家として統一した芸術スタイルを構築しよう
という目論見があったのは確かですが
なかなかひとつにまとまらず、
それゆえこの時期に建設された公共施設は
どれもこれも不恰好であると批判されていますが、
この国立図書館もそのひとつ。
なんともあいまいな、中途半端な建築様式で
景観になじまず、なお印象に残りにくいのです。

建物の中で最も古いのは
もちろんサンタ・クローチェ教会の回廊を含む部分。
それ以外に新しく建設されたうちの
最も古い部分は正面西側にある
ダンテとガリレオのトゥリブーナ。
フィレンツェを代表する偉人ダンテとガリレオに
敬意を表して造られた円形のスペースで、
下階部分がガリレオ、上階部分がダンテ。

ダンテをフィレンツェから追放し、
ガリレオを火炙りにしたことはすっかり忘れて
彼らの偉業に敬意を払っているわけですね(爆)。

天文学者・科学者として名高いガリレオのトゥリブーナは
一切の装飾を削りシンプルに整えられています。
エルバ島から運ばれたという
白い御影石の柱が印象的なこの部屋にも
かつては書棚が取り付けられていましたが、
1966年の洪水後すべて取り払われ
現在は特別展などの会場として使われています。
一方、上階部分のダンテのトゥリブーナは
柱頭部分のハアザミの装飾など若干の装飾が見られます。
こちらも特別展の会場として使われています。

建物全体にいえることですが、
基本的に自然採光で本を読めるようになっています。
どこも明るい印象なのはそのためです。

古代の石棺などにも見られる
Strigilatura(ストゥリジラトゥーラ)という
伸びたS字型が連なる薄彫り装飾が、
この建物の装飾として柱頭をはじめ、
あちこちに用いられているのも特徴です。
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元々ストゥリジラトゥーラは
宗教的に浄化や純化を象徴する装飾で
古くから好んで使われた装飾ですが、
図書館での営みを通して
各個人が純化するという意味合いが込められているのだそう。

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通常はもちろん文献閲覧などの入場となり、
会員証が必要となりますが
時にダンテ&ガリレオのトゥリブーナで特別展が行われ
そういった機会には一般にも公開されています。
4月23日までは古文書を通してトスカーナを旅する
というテーマの展覧会開催中。

Il viaggio in Toscana fra XVIII e XIX secolo
会場:Biblioteca Nazionale Centrale di Firenze
会期:2007年3月23日から2007年4月21日まで
開館時間:月曜から金曜まで10:00-12:30、15:00-18:00
     土曜10:00-12:30
休館日:日曜・祝日
入場料:無料
詳細インフォメーション

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