不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Patrimonio Unesco

2007-07-24 07:16:06 | アート・文化

1972年のユネスコ総会で採択された
「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」。
人類が将来的に共有するべき普遍的な価値をもつ遺跡や景観。

世界遺産への登録は長い年月と莫大な費用がかかり
厳しい審査を受ける必要があり、
一朝一夕で実現するものではありません。
2007年現在世界各地で851件の登録があり
(文化遺産600、自然遺産168、複合遺産25)
イタリアは世界でもトップの41件を保有。
このうち40件が文化遺産で自然遺産はエオリア諸島一件のみ。
アメリカやアフリカのように広大な自然を誇る国々とは異なり
3000年の歴史を形に残すのが主流となっています。

世界記録を保持しながらも、
未だ登録を待つ遺産候補がイタリアにはいくつもありますが、
実はここ数年は
遺産の登録を立て続けに引き上げているという現状。
まだまだ知られていない手つかずの自然や貴重な文化遺産は
イタリア国内には確かにたくさんありますが、
この国の抱える問題は
「登録候補遺産の将来的維持」が不十分であるという点。
他にも登録手続きに必要な書類に不備があったり、
十分なプレゼンテーションができなかったり
準備期間および将来的な資金の調達が
ままならなかったりと様々な問題があります。
特化すべき生態系があまり多くないことなどから
自然遺産の登録が非常に難しくなっているのは事実です。

Foresta fossile di Dunarobba
(テルニ近郊・ドゥナロッバの森林化石)
Foresta_fossile_dunarobba
Parco Nazionale del Gran Paradiso
(アオスタのグラン・パラディーゾの国立公園)
Gran_paradiso
Arcipelago della Maddalena
(サルデーニャのマッダレーナ諸島)

などに代表されるいわゆる自然遺産は暫定リストに掲載され
既にユネスコの派遣する国際自然保護連合(IUCN)の
現地調査も完了していますが
いずれも「地域的遺産」であり
「世界的な人類の共有すべき遺産ではない」と
判定されたため登録断念。
毎年各国から候補として出すことができるのは
文化遺産一件、自然遺産一件のみ。
こうして一回ボツになった候補地が
再び体勢を整えて立候補するまでには数年かかります。

そんななかにわかに浮き上がってきた文化遺産候補が一つ。
「地中海式食餌療法」がそれ。
イタリアだけではなく、地中海地域全般で好まれる食事は
科学的な検証もうけており、
人類の健康に貢献しているという点や
長い歴史の中で受け継がれてきた文化的なものである
というのが候補に挙がった理由。
提案したのは実はイタリアではなくスペインですが
食物繊維の豊富な穀物、豆類、フルーツ、野菜と
オリーブオイルを豊富に使う地中海料理は
果たして「人類が共有すべき顕著で普遍的な価値」をもつと
判断されるのか、今後の動きが楽しみです。

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