不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Il paesaggio e il genio

2010-05-24 21:24:40 | 日記・エッセイ・コラム

5月も半ばを過ぎて
ようやくイタリアらしい晴天が広がった週末。

土曜日は視察も兼ねてVinci村へ。

フィレンツェから車で約40分のところにある、
本気で田舎の小さな村。
この村が有名なのはもちろん
レオナルド・ダ・ヴィンチを輩出したから。
それ以外に何もなさそうな、
本当にのどかで、村人みんな顔見知りっぽい
私好みの村です。

その村のさらに先にAnchianoという集落があって
そこにレオナルドの生まれた家といわれる
質素な田舎屋敷があります。

実はここを訪れるのは初めてではなく
15年前に来ているのですが
まったく記憶にございませんでした。
というかかなり記憶違いをしていたことに気づいたのです。
15年前に訪れたときの写真を見ると
あぁ、なんとなく同じ場所なのですが、
相当脚色して記憶していたみたいです。

この丘の上の小さな集落で生まれ
この牧歌的で壮大なトスカーナの丘陵地帯を眺めながら
ボーっと幼少時代を過ごしたら
やっぱりいろんなことに思いを馳せる自由と時間があって
すごい天才に育つのかもしれない。

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実際にこうして見渡すと
レオナルドが完成させたSfumatura画法って
「この景色見たままじゃん!」ってことがわかります。
本当に遠くの山は青白く見えるし、
ガスがかかったような感じに映るのです。
これは誰が見てもそう見えるけれど、
それを絵画の画面上に
忠実に再現したのがレオナルドだったわけですね。

15年前には駐車場なんかあったのかどうかも覚えていないけど
今はきちんと駐車場も整備されて
そこから生家に向かうわずか200メートルくらいの道のりも
なんだか幸せな気分でいっぱいになる不思議な空間。
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畑に入ってはいけません。
といわれてもどこからが畑なのかもわからず。
ま、いいか。

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午後の日差しを受けた、こざっぱりしたレオナルドの生家。

実際には確証できるような文献は見つかってないけれど
多分ここでしょうって感じらしい。

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一応石碑もついている。
でもこの周辺今だってほとんど他に家なんかないのですよ。
なぜわざわざこんなところに家建てたんだろう、
こんなところで何してたんだろうと思っちゃう。

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きれいに手入れはされてますが、
公開されているのは2部屋だけ。
あとは放置されてます。

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昼休みもとらずに開けているなんて優秀です。
まぁこんな田舎まではるばる来て
昼休みだから3時間閉めますとかいわれると
怒りそうですけど、観光客。

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カマド跡にさりげなく取り付けられた郵便ポスト。
赤色が主張しすぎな感じですけど。
じゃぁ、ここから絵葉書送れるんだ!!
と思ったら大間違い。
レオナルドの生家では絵葉書も切手も売ってません。
ここから投函したい方は前もって準備すべし!
すごいな、誰のためにあるんだろうこの郵便ポスト・・・。

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午後の日差しが美しいコントラストを作ってます。
こういう光の加減を見ながら育ってたら
絵画的才能も芽生えそうです。

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濃い緑と、オリーブの銀色、
そして突き抜けるほどの青空にくっきりの白い雲。
自然が作り出す芸術作品。
心が洗われる!!
私はやっぱり田舎で暮らすのが性にあっていそうだな。

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駐車場までの帰り道、
シロツメクサを眺めながら
日本人はなぜレオナルド・ダ・ヴィンチが好きなのだろう
とふと考え込んでしまった。