不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Madonna della Misericordia

2011-01-04 18:27:28 | アート・文化

フィレンツェのChiesa di Ognissanti(オンニサンティ教会)の
身廊右壁の入り口から2つ目の礼拝堂はCappella Vespucciで
アメリゴ・ヴェスプッチを輩出したヴェスプッチ家の礼拝堂です。
オンニサンティ教会はボッティチェッリとも縁の深い教会ですが、
Domenico Ghirlandaio(ドメニコ・ギルランダイオ)とも縁があり
教会付属の旧食堂には
ギルランダイオの最後の晩餐も残っています。

ヴェスプッチ礼拝堂も
ギルランダイオが1472年ころに手がけた
フレスコ画で飾られています。
もともとヴェスプッチ家の礼拝堂は
教会の別の場所にあったといわれ、
後に教会の改築の際に
現在の場所に移動されたといわれています。
ギルランダイオのフレスコ画は
1878年に白漆喰の下から発見されたのですが
見つかったときには傷みが激しく、
現在もその損傷の痕が見受けられます。

Madonnadellamisericordia

まだ若いギルランダイオの作品であるフレスコ画は
2枚の作品で構成されています。
下のほうがPieta'(ピエタ)で、
見るからに命の尽きたイエス・キリストが
聖母マリアに抱えられ、
手前のMaria Maddalena(マグダラのマリア)に
両足を持ち上げられていますが
微妙な遠近法技術により
くしゃっとした貧相な印象を与えています。
キリストの左手を握っているのは、
12使徒の一人であるSan Giovanni Evangelista
(福音書記者ヨハネ)。
背後はキリストが十字架にかけられたゴルゴタの丘。

その上にあるのがMadonna della Misericordia
(哀れみのマリア)
大きく広げたマントの下に跪く人物群が描かれていますが、
ギルランダイオによる肖像画になっています。
ギルランダイオは自分の作品に、物語の登場人物のように
当時の著名人の肖像画を描き込むことでも
よく知られていますが、
おそらくこの作品が
その先駆けだったのではないかといわれています。

天使が支えるマントの下の人物像は
左手に男性、右手に女性とそれぞれ分けられています。
この人物たちについては諸説がありますが、
ヴェスプッチの礼拝堂だけに
すべてヴェスプッチ家の人々と考えると
それが正当であるかどうかは別として、親近感が沸きます。

左から。
一部フレスコが剥離しているため
体半分しか残っていない男性は
Anastagio(アナスタージオ)、アメリゴの曾祖父。
その脇でこちらを睨み付けているのが
Stagio(スタージオ)、アメリゴの父。
オレンジ色の立派な宗教服を着ているのが
ドゥオーモの参事会員で
アメリゴの叔父にあたるGiorgio(ジョルジョ)。
その奥にいる宗教者はGuido Antonio(グイド・アントニオ)で
同じくアメリゴの叔父でサン・マルコの修道士だった人。
こちらに背中を向ける赤い服の男性は
Amerigo Il Vecchio(老アメリゴ)でアメリゴの祖父。
聖母マリアに一番近いところにいる若者は
Antonio di Stagio(アントニオ・ディ・スタージオ)で、
大航海をしたアメリゴの兄弟。

女性陣は
聖母の脇に控え、
ほとんど聖母の腰に隠れそうなのがAgnoletta di Stagio
(アニョレッタ・ディ・スタージオ)でアメリゴの姉妹。
その手前でこちらに背中を向ける黒い服の女性は
Manna(マンナ)、アメリゴの祖母。
女性陣の中央、ばら色の服を纏う女性は
Lisabetta(リザベッタ)でStagioの妻、つまりアメリゴの母。
その奥の修道女は
Verdiana(ヴェルディアーナ)、アメリゴの叔母。
右端はAnastagioの妻で
アメリゴの曾祖母Caterina(カテリーナ)で
その奥に小さく描かれているのは
アメリゴの姉妹Caterina(カテリーナ)。

両脇の天使もヴェスプッチ家の人物だといわれています。
左側の天使がアメリカ大陸にたどり着いた
Amerigo Vespucci(アメリゴ・ヴェスプッチ)で
右側は兄弟のBernardo(ベルナルド)。

親近感が沸いたでしょ?