不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

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2012-01-04 18:08:12 | Tweet Log



Il Pozzo di San Patrizio

2012-01-04 13:06:00 | アート・文化

中世の時代から
アイルランド北西にあるLough Derg島には
深い洞穴にまつわる伝説が言い伝えられています。
伝説によれば
その洞穴はキリストが
聖パトリツィオに指し示したものだと言われ、
当時なかなかキリストの教えを信じようとしなかった
アイルランドの人々に
地獄の存在を見せしめるために
利用されたとも言われています。
その穴の奥深くまで辿り着いたものは、
免罪され天国への道が開かれると言われていました。
このため、1457年に
カリスト3世(Callisto III)によって封鎖されるまで
洞穴は人気のある巡礼地のひとつでもありました。

オルヴィエートにあるサン・パトリツィオの井戸の名前も
アイルランドの伝説に由来していると言われています。
聖パトリツィオは
アイルランドで活動したキリスト教伝道者であり、
ケルト民族のカトリック改宗に尽力した重要人物です。
彼自身がキリストによって指し示されたという、
かの洞穴でのみ
別世界とのコンタクトがとれるとして
日々祈りを捧げていたと言われています。

オルヴィエートの井戸は
1527年にクレメンテ7世(Clemente VII)の命で着手され
教皇の死後3年経った1537年に完成しています。
手がけたのは、クレメンテ7世のお抱え建築家であった
アントニオ・ダ・サンガッロ(Antonio da Sangallo)。
1527年のローマ掠奪から逃れて
天然要塞の様を呈する、丘の上の城壁の街
オルヴィエート(Orvieto)に亡命した教皇は
その地が外界との接触を断っても
生き延びることのできる
本当の意味での要塞になりうるように
水源の確保を重要事項としたのです。
それを実現するべく
地下深くを流れる
サン・ゼノの水源(Fonte di San Zeno)から
丘の上の街に水を供給するために
建設された井戸です。

シンプルではありながら、
工学的な傑作ともいわれる建築物で
中央の円筒を囲んで
2つの螺旋階段が取り付けられています。
この2つの螺旋階段は
それぞれ上りと下りの一方通行になっていて
決して交わることがありません。
井戸の深さは53,15メートル、
ベースとなる円筒は直径13メートル。
螺旋階段はどちらも248段で構成され、
中央の円筒部分には
72の明かり取り窓が取り付けられています。

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因みに、実際歩いてみると、
非常に歩きにくいのですが、
階段の段差が低く、段幅が広く作られているのは
人間ではなく、
水を背負って運ぶラバの歩幅に合わせてあるからです。

オルヴィエートのサン・パトリツィオの井戸には
アイルランドのような伝説はありませんが、
確かに徐々に薄暗くなっていく階段を下りていくと
その向こうに
別の精神世界が開けるような気分にもなります。

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Il Pozzo di San Patrizio
Viale San Gallo (Orvieto)
開館時間: 11月-2月 9:00-17:00
        3月-4月、9月-10月 9:00-19:00
        6月-8月 9:00-20:00
休館日:年中無休
入場料: 5,00ユーロ