不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

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2012-01-11 18:08:12 | Tweet Log



Predica dell'Anticristo di Signorelli

2012-01-11 13:05:51 | アート・文化

オルヴィエートのドゥオーモ、右翼にある礼拝堂は
Cappella NuovaもしくはCappella di San Brizioと呼ばれ、
一面のフレスコ画で飾られています。
当初このフレスコを手がけたのは
Beato Angelico(ベアト・アンジェルコ)でしたが、
天井の一部を描きかけのまま突如オルヴィエートを去り、
しばらく放置されていたものを
Luca Signorelli(ルカ・シニョレッリ)が引継ぎ完成させています。

この礼拝堂に入って左手壁面上部に描かれているのが
Predica dell’Anticristo「アンチキリストの説教」。
このテーマが大きく扱われることも珍しいのですが、
実際この作品は
主要モニュメントでアンチキリストのエピソードを描く
唯一のものとも言われています。

800pxluca_signorelli_cappella_di_sa

画面の右手前、台座に立って
群集に説教をしている男性がアンチキリスト。
キリストに姿かたちがよく似ていますが、
耳打ちする悪魔によって操られている「偽キリスト」です。
悪魔が説教の言葉を伝え、
彼の動きをマリオネットのように操り
民衆の心を魅了するのです。
偽キリストが纏う桃色のマントから覗く左手は
悪魔の腕と一体となって描かれています。
この偽キリストを囲んで既に民衆が集まり
彼の足元には貢物が積み上げられ始めていることから
彼の説教で心を奪われた人がいることも窺い知れます。
しかし、もちろんこうした民衆は
悪魔の囁きで暗示をかけられているわけですから
集まっている人々はどこか傲慢な雰囲気で描かれ
画面左には大量殺戮を行う男や、
老人から報酬を受け取る娼婦なども描かれ
偽キリストの説教によって
民衆の間でモラルの低下を
ひき起こしていることがわかります。
この群衆の中には
当時の実在人物も描かれているとされ、
ヴァザーリによれば、
左の群集の左端に立ち
赤い帽子を被った金髪髭の男は
Cesare Borgia(チェーザレ・ボルジア)、
同じ群集の右端にいる黄色い服を纏った禿の肥満男が
Enea Silvio Piccolomini
(エネア・シルヴィオ・ピッコローミニ)。

背景画面には右側に古典様式の建物が描かれ、
中央に奇跡のシーン、
左側に偽キリスト撃退のシーンが描かれます。
建物はエルサレムのソロモン王の神殿を描いたもので、
つまりは教会そのものの象徴となっています。
中央の建物を4つのプロナオスが囲み、
全体ではギリシャ十字をかたどっています。
2重の天蓋の一部が
画面の外にはみ出すような大きさで描かれています。
その神殿の前では偽キリストが
Elia(エリア)とEnoch(エノッチ)の処刑宣告を行っています。
中央では人々を信じさせるために
偽キリストが奇跡を行って見せたりもしています。
その右下では、キリスト教信者が
微力ながら抵抗の様子をみせ、
祈りをささげる姿が描かれています。
そして右端では
天空から現れるArcangelo Michele(大天使ミケーレ)が
偽キリストとその追従者たちを罰しています。

前面の最左側に黒い服を纏う
二人の男性が描かれていますが、
手前の長髪がシニョレッリ本人、
その奥がベアト・アンジェリコの肖像です。

この作品が描かれたころのフィレンツェでは
Savonarola(サヴォナローラ)が
神権政治による宗教改革を行おうとしており、
メディチ家寄りであり、
フィレンツェの民主政治が覆されるのを
よく思っていなかったシニョレッリは、
この作品を描くことで
サヴォナローラを偽キリストに
投影しているとも言われています。

Duomoe Cappella di San Brizio
Orvieto
開館時間:平日
        11月-2月 9:30-13:00,14:30-17:00
        3月・10月 9:30-18:00
        4月-9月 9:30-19:00
      :日・祝日
        11月-2月 14:30-17:30
        3月-6月・10月 13:00-17:30
        7月-9月 13:00-18:30
休館日:年中無休
入場料: 3,00ユーロ