不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Tweet della giornata

2012-01-25 18:08:11 | Tweet Log



Susanna e i Vecchioni

2012-01-25 12:59:53 | アート・文化

紀元前6世紀のバビロニア地方に暮らしていた
美しく敬虔な人妻Susanna(スザンナ)。
裁判官に任命されたばかりで、
淫欲にまみれた二人の老人が
彼女の美しさに魅了されて、
しばらく彼女のあとをつけまわし
決まった時間に自宅の庭で
彼女一人で沐浴することを嗅ぎつけます。
ある日、スザンナは沐浴しているところを
二人の老人に急襲され、無理やり関係を迫られます。
しかし、貞節な人妻であるスザンナは
これをかたくなに拒んだため、
逆恨みした二人によって姦通罪の罪を着せられ
死刑を言い渡されます。
投石刑となったスザンナが民衆の前に引き出されると
少年ダニエル(Daniele)が前に出て
彼女の潔白を訴え、
老人二人を追及し、やがてかれらの虚偽を暴き
スザンナの無実を証明します。
これによってスザンナは名誉を取り戻して夫の元に返り、
二人の老人は処刑となり、
ダニエル自身もこのエピソードから民衆に慕われ、
預言者としての道を歩みだすことになります。

1420lotto2020susanna20e20i20vecchio
Lorenzo Lottoの同題作品(ウフィツィ美術館所蔵)

このスザンナの、
そして夫婦の貞節と信頼を描くエピソードは
中世の時代から
キリスト教でも好まれたテーマのひとつですが
16世紀-17世紀にもっとも好んで描かれたため
絵画作品としてその数が増えるのは17世紀以降。
もちろん貞節をテーマを前提にした
モラルの作品としての位置づけにはなりますが、
その多くは
依頼者の謹厳ぶりの裏の本音を満足させるために
女性の裸体を描くひとつの手段でもあったのです。

1610年に描かれたArtemisia Gentileschi
(アルテミシア・ジェンティレスキ)の
Susanna e i vecchioni(沐浴するスザンナと老人たち)は
ドイツのPommersfeldenにありますが、
現在ローマのヴェネツィア宮殿で開催中の
Roma al tempo di Caravaggio展に展示されています。

425pxsusanna_and_the_elders_1610_ar

まだ17歳だったアルテミシアが描いたこの作品には
当時では珍しく、
女流作家でありながら彼女のサインが残されています。
幼少のころから父(Orazio Gentileschi)の工房で
父からその技術を受け継いでいたアルテミシアの実力は
かなりのものだったといわれますが、
それでもこの作品は父が大半を手がけ
プロモーションのために
娘のサインをいれたとも言われてきました。
近年では彼女自身の作品であり、
父親とは異なる技術的アプローチが認められるとされています。
カラヴァッジョ派であった父の影響も残しつつ
当時ローマに新しく入ってきていた
Carracci(カラッチ)派の画法も取り入れています。
もちろん同じ工房で作業をし、指導をしていた
父オラツィオの助言や手助けもあったとはいえ、
彼女独自の作品として仕上がっています。

彼女の波乱万丈な人生のせいで
アルテミシア自身が受けたレイプを象徴しているのではないか、
描かれる黒髪の男性は「老人」というには若すぎて
相手のAgostino Tassi(アゴスティーノ・タッシ)ではないか
ともいわれていますが、
作品は1610年製作、
アルテミシアがアゴスティーノとの関係があったのは
1611年といわれるので時系列的に難しいところです。

通常このテーマが描かれる場合には
スザンナの近くに召使や、沐浴する浴槽や小川、
老人達が身を隠す木枝なども大きく描き込まれるのですが
アルテミシアのこの作品では主要登場人物3人が
ピラミッド型に描かれるだけです。
二人の老人は欄干にのしかかり、
下品な笑を浮かべて囁きあい、
スザンナは片足を水につけたまま
豊満な体を隠すこともせず、
しかし二人から逃れようと、
手を伸ばし苦悩の表情を浮かべています。
彼女の右足の後ろにサインが描き込まれていますが
17歳の彼女はまだ字が書けなかったため
やはり、父であるオラツィオが
代理で書き込んでいるのだといわれています。

Roma al tempo di Caravaggio
会場:Palazzo Venezia
    Via del Plebiscito 118 Roma
会期:2012年2月5日まで
開館時間: 10:00-19:00
休館日:月曜日
入場料:10,00ユーロ