不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Tavola Doria

2013-07-03 13:23:52 | アート・文化
莫大な費用と時間を要し
物議を醸して調査したわりに、見つからなかった
レオナルド・ダ・ヴィンチの「アンギアーリの闘い」。
フィレンツェ市長は諦めきれていないようなので、
なにかのきっかけにまた手を出すかもしれませんが。

そのアンギアーリの闘いが、
かつて実在していたことは
同時代の芸術家たちの残した記録や
残されたいくつかの複製作品から
伺い知ることができます。
最も状態がよく精密であるとされるのは
Rubensの残したもので
ルーブル美術館に所蔵されています。

これとは別に作者不明の
Tavola Doriaという作品も存在しています。
1503年から1505年頃に制作されたとされているもので、
レオナルド自身が描いたともされていますが、
現時点で確証はされていません。
アンギアーリの闘いの中央のシーンである
Lotta per lo Stendardoを描いたもので
85×115センチの小さな作品です。

この作品は1621年から
Famiglia Doria(ドーリア家)の所有でしたが
1939年にオークションにかけられ落札されました。
しかし、1940年にナポリで盗難にあってから
その所在がわからなくなっていました。
1983年から本格的にイタリア国家警察が捜索を始め
1995年9月に日本の東京富士美術館が
所有していることが判明。
そこに行き着くまでに、
イタリアを出た作品はスイスからドイツ、
1972年にはニューヨーク、
1990年に日本に渡っているようです。
東京富士美術館は1992年に
この作品を購入したそうですが、
当時の購入価格は公表されていません。
(ただし、最終的にジュネーヴからイタリアに
搬送された際の保険金額では
2000万ユーロ相当の価値とされていたようです。)
そして、美術館が購入した後も
日本で保管されたのではなく
専門家による調査も兼ねて
ジュネーヴで保管されていました。

2008年に文化財庁のCecchi次官が
ジュネーヴでこの作品を確認して以降、
東京富士美術館とイタリアとの間で
長く複雑な交渉が続けられ、
美術館側が今後の日伊の文化交流の促進のためにと
この作品をイタリア国家に寄贈することを表明し、
2012年6月にイタリアに戻ってきています。
この協定は25年間の期限付きですが、
既に作品の分析が進み、
現在も作者確定の調査が進められています。

2012年11月28日から2013年1月13日まで
ローマのクイリナーレ宮殿に展示されており、
その後簡単な修復と調査が行われ、
6月16日から11月3日までは
アンギアーリに展示されています。
アンギアーリへの常設を望む声も強くなっていますが、
2013年11月以降は
一応フィレンツェのウフィツィ美術館に
展示される予定となっています。

協定では4年毎に
日本とイタリアを行き来するようになるようで、
2014年6月以降は
4年間日本で保管&展示されることになります。

Tavola_doria