夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『おじいちゃんの里帰り』

2014年01月01日 | 映画(あ行)
『おじいちゃんの里帰り』(原題:Almanya – Willkommen in Deutschland)
監督:ヤセミン・サムデレリ
出演:ヴェダット・エリンチン,ラファエル・コスーリス,ファーリ・オーゲン・ヤルディム他

あけましておめでとうございます。
今日からしばらくは、年末に観てUPできなかった作品をつづけて。

12月21日(土)、朝から会う予定だった友人との約束が
諸般の事情によって直前にキャンセルに。
急遽空いたスケジュールを埋めるのはやっぱり映画。
まずはこの日が初日の本作を観ようとテアトル梅田へ。

ドイツ生まれのトルコ系2世の女性、ヤセミン・サムデレリ監督。
妹とともに脚本を書き上げ、本作にて長編映画デビューを飾りました。

戦後、労働力が不足していたドイツは、各国から労働力を募る。
ドイツで働いて仕送りし、妻子に十分な暮らしを送らせてやりたい。
そう考えたフセイン・イルマズはトルコからドイツへと渡る。

あれから50年が経ち、妻のファトマとの間に生まれた子どもたち、
ヴェリ、モハメド、レイラ、アリはそれぞれ成長。
レイラの娘チャナンは大学生、アリの息子チェンクは6歳。
一家が集まれば3世代10人の大家族。

ある日、皆が集まる席で、フセインがトルコに家を買ったと発表する。
一家の慌てようなどフセインは何処吹く風。
全員でトルコへ行って家を改修するのだと言って聞かない。
渋々承諾する家族たちを引き連れ、遥か3000kmの里帰りへと出発するのだが……。

語り手はチャナンで、彼女は最近妊娠が判明したところ。
親にはまだ打ち明けられずに動揺しています。
前向きな恋人は、自分も家族になるのだからと同行を望みますが、
チャナンは気持ちの整理がつかず、冷たい態度を取ってしまいます。

一方、もうひとりの孫であるチェンクは、
自分がドイツ人なのかトルコ人なのかわかりません。
学校で先生が黒板に貼り出す地図にはイスタンブールまでしか記載されておらず
(おじいちゃんの出身地はアナトリア地方)、
サッカーをすればどちらのチームからも中途半端な奴だと言われ。

チェンクの父親アリにしても、トルコ料理が大の苦手。
むしろ生粋のドイツ人であるアリの妻のほうがトルコ料理に偏見がないくらい。
チェンクが「僕は何人なんだ」と聞けば、アリは「ドイツ人」だと即答します。
それがまたチェンクを悩ませることに。可愛いのなんのって。

一家が移住したさいの戸惑いや苦労がユーモアを交えて映し出され、
ほっこりニッコリ、笑わずにはいられません。
トルコの路上で親しくなった少年が一家に掛ける言葉は、
「笑って。神は笑わない人を嫌う」。

労働者を呼んだが、やって来たのは人間だった。
結びはマックス・フリッシュのこの言葉でした。

来場者の座席番号による抽選に当たり、プレゼントは大好物のドライいちじく。ラッキー。

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